アメリカの労働参加率に着目 ~ 経済雑感 --- 岡本 裕明

2014年08月02日 10:44

アメリカの雇用統計に合わせて書かせていただいている月に一度の「経済雑感」ですが、このところ、雇用統計に目立った変化は乏しい感じがいたします。雇用統計は市場関係者が最も注目する経済指標と言われ、事前予想と発表のギャップで市場は大きな反応をします。

7月度の雇用統計は事前予想の23万人増に対して20.9万人増と期待を下回り「失望」という言葉がまず見出しを飾るものの6月分の統計が28.8万人から29.8万人への上方修正で「チャラ」という誠に勝手なコメントが並んでいます。日経には「絶妙の雇用統計」とありますが、要はこじつけでしょう。


雇用統計に注目するもう一つの理由はアメリカの金利引き上げがいつ起きるか、それを占うもっとも重要な指標であるからです。イエレンFRB議長はハト派と言われ、特に雇用の改善については非常にセンシティブとされています。失業率が改善してもその雇用の状態が健全になっているのか、そこを鋭く追及しているわけです。ですのでEmployment Cost Indexという普段はあまり注目されていないものが突然脚光を浴び、それがアメリカの市場を揺るがしたりするのです。

アメリカの景気が想定以上に回復しているのは緩和している自動車ローンなど消費を刺激するものが多いことで一種の「ミニバブル」を形成しているように見えます。ただ、これを続けていると以前の教訓が生かされていないということになりますから正直、金利操作ではなく、規制でコントロールしないとまずい気がします。

ところで雇用統計の際に必ず出てくる労働参加率。つまりどれだけの人が仕事を探しているかともいえる指標ですが、これは国家のトレンドを見る上でも実に有益です。アメリカの労働参加率が下がり始めた(労働への意識が高まった)のは女性の社会進出が顕著となった70年代でありますが、最近は30数年ぶりの低さとなっています。その低さの原因がブーマー族の早期退職によるものとみられていましたが、最近の調査で55歳以上の労働参加率は最高水準にあるものの25-34歳のレンジで平均値より4%以上低いことが指摘されています。これは長い目で見たアメリカの労働市場に体質の変化を感じさせるものかもしれません。

さて、木曜日に300ドルも下げたダウに対して日本は打たれ強さをみせました。以前はアメリカが風邪を引けば日本は肺炎になるとも言われたのですが、最近はアジアの市場がいかに自立化し、アメリカのそれを異質化しつつあるかを見せつけているような気がします。

その中で今回注目したいのはシャープでしょうか? 同社は存続すら危ぶまれそのリストラ策も「大丈夫かね?」と疑われるほどでしたが、V字回復のような派手さはないものの着実に事業が復活しているようです。それはテレビのパネルをスマホ向け液晶用に切り替え、中国向けに爆発的な販売力を見せている点があります。この上半期は中国向けが前年比5倍まで売り上げが増えるということで技術が認められたということでしょう。私はそれより評価しているのはテレビからさっさとスマホ向けビジネスに切り替えた英断であります。ソニーのようにテレビで9期もうずうずしていたのと違い、死ぬか生きるかの瀬戸際に立たされ、迷う余裕はなかったというのが本音でしょうか?

一方、好調さを指摘される企業決算でいただけないのが銀行でしょう。これは酷い。酷いと言ってももちろん利益は上がっていますが、メガバンクが4-6月期で19%の最終益減というのはいただけません。理由は国内融資先に苦戦、数年前は大きな収益の柱だった国債の売買も落ち、ようやく海外への融資を伸ばし始めているという一歩も二歩も遅れている体質でしょうか? 銀行がコンサバなのはわかりますが、国債の売買で儲けていたあの時代はまさに銀行にとっての失われた時代だったと思います。海外事業で一歩先んじている東京三菱はまだ安定感がありますが、みずほの決算はいただけませんでした。

韓国の話題を一点振っておくとすればサムスンの4-6月の決算は厳しさを表しています。明らかにスマホからの収益がピークアウトし、市場占有率を上げることが難しくなっている中、同社が次の柱をどう立てるのかという点に注目が集まってきています。同社のスマホも確かに一時的には世界を制覇していますが、歴史は一社が長く市場を独占するということはなく、栄華を極めるのはせいぜい5年だとすれば同社が並み居る中国企業とどう対峙していくのか、注目となるのでしょう。個人的には同社はソニーのような体質が見て取れますので今後厳しくなるような気がいたします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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