経営の監視役さえ「国境を越える」時代 --- 岡本 裕明

2014年11月20日 10:59

世の中の発展は良いことばかりとは限りません。昔は許されていても今はダメ、という厳しい規制や管理も当然ついてきます。

それは会社でも日常生活でもそうでしょう。会社は入館カードがないと入れないし、残業時間は規制されています。インターネットの閲覧も規制がかかっていることが多いし、昔のように部下に軽口を言うと「パワハラ」と指摘されてしまいます。こんな世界は少なくと30年前にはありませんでした。


事務所はタバコの煙でむんむんし、ワイシャツは家に帰ればタバコに匂いが染みついています。マル秘情報はその秘匿度が高ければ高いほど「実は、お前だけに留めてもらいたいのだが…」ぐらいの感じだったと思います。

日常生活でも同じです。街中には監視カメラだらけで常にあなたは見られている状態。飲酒運転して捕まればその人の一生を左右するほどの事態になることもごく普通になりました。ゴミ捨てのルールも厳しくなり慣れていないといつ捨てて良いのか分からなくなります。規制や管理を通じて平穏できちんとしたライフが送れる一方、何か堅苦しさがあるのも事実であります。

最近では会社の経営も社内取締役だけに任せておけばワンマン経営や無謀な決議などが発生し時折事件としてマスコミを賑わします。循環取引で架空売り上げを計上し捕まった会社は数知れず、であります。オリンパスの事件などもその典型だったと思います。

これら社内の閉鎖された社風に窓を開け、風通しを良くしようというのが「社外取締役」であります。会社によってはもはや半々ぐらいの割合になっているところもあるようです。しかも社外取締役は往々にして巨大企業の経営者、あるいはそういう企業経営に携わった経験者が多く、また、規模の小さい会社では経営コンサル的な方が就任している場合も多いようです。

社外取締役の是非についてはいろいろ議論があるところだと思います。確かに決定内容について客観的な意見を求めることは出来ますが時として思うのははて、この社外取締役、自分の会社の経営だけでもかなり手一杯なのにどうやってほかの会社のことまで面倒までみるのだろう、という事でしょうか? 社外取締役を受け入れる会社としては「いや、○○さんの様に大企業の経営の最前線で活躍されている方からこういう意見を貰えるのは実にうれしい」となってしまうのでしょう。

実はこの社外取締役を更に大きくした国家の行動を外から監視する「国外取締役」という概念が生まれつつある事を指摘したいと思います。

世の中、G20や地球サミットなど国際会議花盛りで各国から「お前の国はこれがおかしいからこうした方がいい」と政策等に口を挟まれることが増えました。最近では極論すれば安倍首相は国内の幹部に会うよりも外国首脳との会合の頻度の方が多いとしても過言ではありません。

先日のオーストラリア、ブリスベンでのG20では,「G20全体のGDPを2018年までに少なくとも追加的に2%引き上げるという野心的な目標を設定。各国のコミットメントが完全に実施されれば、GDPを2.1%引き上げ。」更には「G20の行動は、ブリスベン行動計画及び各国の包括的な成長戦略に明示。次回会合で進捗を点検。」(日経)と分かったような分からないようなまとめでありますが、体よく言えば各国連携して頑張りましょう、言い方を変えれば各国の縛りに対して他国が口をはさむ余地ができたという事であります。

例えばこのG20の席で朴槿恵大統領は「自国の条件だけを考えた先進国の経済および通貨政策は、新興国に否定的波及効果(spill-over)を及ぼしており、これが再び先進国経済に悪影響を与える逆波及効果(spill-back)を持たらしかねない」と指摘(ハンギョレ新聞)し、日銀の政策に釘を刺しています。

「国外取締役」の強制力がどこまであるか、という事はまた別の論点でありますが、国家が好き勝手な政策で自国に有利なことばかりすることはだんだん難しくなっているともいえるのです。これは日本だけでなく、中国でもアメリカでも欧州各国でも同じであり、ここにもグローバリゼーションの影響が出ています。

かつて日本を含め、自国の政策に何が問題あるのか、という強い論調も見受けられました。いや、今でもあります。ところが国境の垣根が下がれば下がるほど自国の自由度が効かないとも言えそうです。特に新興国あたりからは日本は欧米と並び成熟国としての義務とリーダーシップを求められているがゆえにより規範となる行動が求められます。

北米にいるといわゆる人の上に立つ人はどうあるべきか、が議論の場でよく出てくるわけですが、少なくとも道徳的、理知的でウィンウィンの状況を作り、弱者救済がトレンドであるかと思います。

オバマ大統領が外交において厳しい評価を受け続けたその背景の一つは国内事情と共に各国との意見や足並みが揃わなかったことがありましょう。つまり、G7といったごく少数のリーダー国だけでまい進した時代にはその政策が良かろうが、悪かろうが、力づくだろうが構わなかったのですが、G20という世界のGDPの90%を占める巨大組織がもたらす各国間のバランス運営の難しさはある意味存在意識が薄くなった国連とも似たような状態になりつつあるのかもしれません。

企業の社外取締役は今しばらく日本でも受け入れが増えてくると思いますが、「国外取締役」は正義感を持ち、声を大にして受け入れたい状況にはならないのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年11月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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