アメリカ人の心理的抵抗が影響するキューバとの国交正常化 --- 岡本 裕明

2014年12月20日 16:11

アメリカがキューバとの国交正常化を模索しているようです。バチカンの法王らがその介入を1年半に渡り行い、ようやくそれを発表するに至る、というものであります。

アメリカは1961年のキューバ革命により、その関係が切れています。キューバ革命そのものは1950年代に同国の革命を通じて軍事政権樹立を試みるもののなかなかうまくいきませんでした。が、1959年に革命派が協調し、軍事政権が樹立したものであります。その際、アメリカとの関係は維持したかったキューバでありますが、アメリカ側が共産主義に傾くキューバはお断り、としたためにソ連と結託したのが筋書であり、キューバ軍事政権が最初から共産主義ではなかったようです。


さて、1年半の交渉期間があったとはいえ、オバマ大統領がなぜ、このタイミングで国交正常化を発表したのか、よく考えてみれば二つのタイミングが考えられます。一つはロシアが石油価格の下落によりルーブル安、株式安に見舞われ、経済的ダメージが大きく、間隙をぬうという意味ではベストのタイミングだったこと。もう一つは年が明ければ議会は選挙結果を反映し、両院とも共和党に支配される為、その前にアナウンスしたほうが都合が良かったことが考えられます。

ただ、共和党はこれに対し厳しく反発しており、大使館も大使の派遣も認めないと強硬な態度を示しているため、一筋縄ではいかないとみています。

それとオバマ大統領の外交政策はことごとく失敗しており、これ以上、外交にタッチすることは再び汚点を残すことにならないか、という心配すらあります。例えば今回のサウジアラビアが石油減産を行わないと発表したことでシェールのアメリカとサウジの力の見せ合いとなっていますが、その背景の一つはアメリカのイラン政策にあるのではないかとされています。つまり、オバマ大統領がイランの大統領となったロハニ氏に接近したことがサウジの怒りを買った可能性があります。

外交は一つを立てれば一つがたたず、という微妙な関係の中でいかにうまく関係国との調整を行うかが重要となります。その点、オバマ大統領の外交政策はやや無防備なところがないとは言えません。今回のキューバとの国交正常化についても外交どころか国内の調整すらできていない状態で発表を先行させてしまうのもどうなのか、という気がしております。

確かにキューバはカストロ「議長」が高齢化で病に伏している状況の中で同国の経済の状況も考え合わせれば両国にとってメリットは大きい部分もあります。ただ、50年以上も特殊な状況に置かれていた同国がある日突然、50年後のアメリカ的な影響を一気に受ければ同国の統制は取れなくなります。分かりやすく例えるならタイムマシンで50年先に飛ぶだけでなく、違う体制の世界に行くのです。それこそ、江戸時代末期から1920年代のアメリカに飛ぶぐらいの勢いです。

物質は供給できても人は急には変れないし、社会システムや教育も時間をかける必要があります。そうしなければ必ず急成長に伴うギャップが生じてしまいます。過去、アジアでそのような国々はたくさんありました。中国でも成長を意図的に鈍化させるのはそのギャップが埋まらないからであります。

よって国交正常化は結構なことでありますが、入り口のドアはゆっくり開けるべきでしょう。

もう一つ、アメリカの隣人、キューバとの国交正常化が行われるなら日本が北朝鮮と国交正常化をするというそれこそびっくりするような動きがあってもおかしくはない、という事です。しかし、それを政府が発表すれば国民感情は微妙でしょう。まさに同じことがアメリカとキューバという事ではないでしょうか?

本件はあまり踊らず、ゆっくりと進めるべきではないかと考えています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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