12月FOMC議事録、低インフレでも利上げ意欲を強調 --- 安田 佐和子

アゴラ

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12月16-17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、声明文がハト派寄りだった割にあらためて利上げスタンスを鮮明にさせました。要点は、以下の通り。

▽「忍耐強くなれる」の文言追加

・多くの参加者が2014年10月の量的緩和(QE)終了、その後の経済拡大を踏まえ文言修正を支持

・多くの参加者は、金融政策スタンスの正常化に対し「忍耐強くなれる(patient)」との文言を支持

・文言の追加は、経済指標動向を受けて政策対応する柔軟性を与える

・多くの参加者は「忍耐強くなれる」ため、向こう2回の会合で利上げする可能性が低いと認識

・文言の追加はマーケットの利上げ予想を2015年半ばに集約させるトの懸念、数人の参加者のみ表明

▽インフレ

・インフレはドル高と原油安で、しばらく目標値2%割れを推移

・委員会は、コアインフレが現状の水準でも正常化させる可能性を指摘

▽原油安

・原油の一段安で、海外経済がさらに減速するリスク

・原油安が継続すれば鋼業が減速し、原油/天然ガスセクターの設備投資が減少へ

・原油安は、ネットで米経済にポジティブ

▽海外経済

・数人の参加者は世界経済見通しを引き下げ、複数は海外中銀が一段の行動を取る可能性を指摘

・海外動向は米国の経済と雇用に下方リスクを与える、海外中銀の対応が十分でない場合はリスク拡大

・参加者は、海外経済見通しへの不安と欧州と日銀の政策対応への期待で金融市場のボラ上昇を指摘

*ただし、海外経済のマイナス効果は好調な米経済で相殺へ

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、”No Inflation? No Problem”と題したレポートで「2004年に利上げを開始した当時、コアPCEは1.6%で12月FOMC開催直前の水準とさして変わらない」と指摘。その上で「潜在成長率を上回る経済成長を続け失業率を押し下げる限り、足元でインフレが低水準でも目標値に近づくと確信できる」と説き、利上げが可能との見解を示唆した。利上げ開始後の”適切なFF金利水準”をめぐる市場との対話について数人の参加者が重要性を論じた点も、利上げ後のガイダンスを模索し始めたと考えられ、フェローリ氏は「火のないところに煙は立たず」とのコメントを寄せている。

——なお、JPモルガンが作成したFOMCタカハト表はこちら。

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今年は地区連銀投票メンバーはシカゴ連銀のエバンス総裁を筆頭に、アトランタ連銀のロックハート総裁の2名がハト派寄りです。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は中立。残るリッチモンド連銀のラッカー総裁のみタカ派で、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁およびダラス連銀のフィッシャー総裁と2人のタカ派が並んだ2014年と様相を異にします。構成の変化が利上げを見つめるFedの政策にどのような影響を与えるのか、楽しみですね。

(カバー写真:donielle/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年1月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。