ぼったくり居酒屋を人事制度的にひもとく --- 城 繁幸

アゴラ

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、ぼったくり居酒屋なるものがネットで話題となりました。2人で利用したのになぜか5人分のお通しが請求されていたり、お通しに加えてチャージ料や週末料金が加算されていたりとツッコミどころ満載のレシート画像を見たという人も多いことでしょう。

とはいえこのボッタクリ居酒屋、一過性のネタで流してしまうには惜しいポイントがいくつも含まれています。というわけで、今回はぼったくり居酒屋を人事的な視点から読み解いてみたいと思います。


なかなか合理的なぼったくり居酒屋システム

まずぼったくり居酒屋というシステム自体ですが、なかなか上手いこと考えたなというのが第一印象ですね。昔ながらのぼったくりバーみたく何十万と請求するでもなく、酔っぱらっていれば気づかない可能性もある金額にとどめることで、実際これまで細々と(というか図太く)経営し続けてきたわけです。

実際、居酒屋で飲んだ後にいちいちオーダー金額と請求額をチェックしている人がどれだけいるでしょうか。少なくとも筆者はやったことないですね。もうちょっとマシな料理を出すとか、クレーム対応をきちんとしていれば、もしかすると炎上なんかしなかったかもしれません。
 
くわえて、一連の騒動からは、以下のようなぼったくり店の特徴が見てとれます。

・厳しいノルマ制がある

本部の運営会社が各店舗に目標売上を課すのは当たり前ですが、今回はそれが相当シビアなレベルで要求されているのが見て取れます。というのも、泥酔しているわけでもなく、普通にSNSに投稿する余裕のある客にまで“週末料金”や人数以上のお通しをつけるのは、店舗側に相当の焦りが感じられるからです。恐らくは一日の売り上げノルマが決まっていて、それを来店客で割って後付する目安としているはず。

・悪評を改装でリセットする

まとめ情報を見ると、同社の系列店では定期的に店名を変えている様子。悪評がある程度溜まった段階でリセットする意味合いがあるのでしょう。そう考えると、最初から流しの一見さん狙いで、そうした客層の見込める新宿や新橋と言ったターミナル駅近くに出店する方針は合理的と言えます。

・本部も事実上黙認

そして、そうした点を考慮すれば、運営会社もそうした事実を知っていたことはほぼ間違いないでしょう。一見さんの多い繁華街に出店し、定期的に店名をチェンジさせ、ルーチンとして厳しい売上ノルマを要求しておきながら「従業員教育がなってなかった」では済まされないでしょう。ついでにいうと食べログなどの組織的な提灯口コミ記事も、運営会社主導でやったとしか思えませんね。

ちなみに、筆者のお付き合いのある飲食店経営者に伺ったところ、最近(若いもんに金が無い&そもそも若者が少ない&草食化等で)キャバクラやクラブといった業態全般が地盤沈下傾向で、本来はそうした業態の中に巣くっていたぼったくり系のグループが普通の居酒屋業界に進出しているそうです。

今回のぼったくり店の運営会社である海野屋自体も2年前に設立されたものである点を考えると、そうしたグループが業態転換する際に作った会社であり、今回有名になったのでまたすぐに社名も店舗名も変えて営業するだろうとのこと。ぼったくり居酒屋とネットのいたちごっこはまだまだ続きそうですね。

以降、
人事制度プラン1:脱ぼったくりへのいばらの道
人事制度プラン2:ぼったくり道を極める悪魔の方程式
ぼったくり化する社会

※詳細はメルマガにて(ビジスパ夜間飛行BLOGOS


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2015年1月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。