人質事件、これから日本が考えるべきこと --- 岡本 裕明

2015年02月01日 18:02

とても嫌なニュースで週末の朝を迎えた方も多いでしょう。イスラム国の人質事件は最悪の結果となった可能性が出てきました。政府や関係者は一丸となって本件解決に立ち向かってきたわけですが、空しいものとなってしまったのでしょうか?

事件の解説は暗記するほど聞かれていると思いますので私は切り口を少し変えて今回の経験を踏まえて日本が国際社会でどう生きていくのかということを考えてみたいと思います。


日本は戦後、一貫してアメリカに守られてきました。このおかげで経済的繁栄を享受したことに異論はないと思います。しかし、今、安倍首相は成熟し戦後70年経つ日本社会のおいて二つの命題を掲げました。一つは憲法改正、一つは自衛権であります。

現在の日本国憲法はGHQが原案を作成したものであり、日本側に十分な検討、検証、推敲の余地はありませんでした。いわば戦後の平常時ではない状況下において作られたものであります。憲法ですから精神的概論ばかりではなく日本の行くべき大きなベクトルを設定しています。

次に自衛についても

1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

でありその解釈の仕方は時代と共に変っていますが当然ながら解釈の一定の限界は存在するのであります。

そんな中、世の中の争いの在り方は大きく変わってきました。いわゆるかつての常識的な戦争とは陸海空軍の武力による衝突であり、多大なる犠牲と損失を巻き込む力と力の戦いでありました。

ところがこの戦い方はこの10数年で大きく変貌したと言ってよいでしょう。911に代表されるテロ事件はその後、無数の自爆テロ事件を含め地球儀ベースで数多く起きました。今年に入ってフランスで起きたテロ事件は今回の日本の人質事件の影となりニュースではもはやあまり見かけなくなっています。

あるいは年末かけてソニー配給の映画をめぐり北朝鮮とアメリカの間で激しいサイバーテロとその報復がありました。

もちろん、テロそのものは最近始まったわけではなく、昔からあったのですが、テロリズムという言葉自体が新しく、また、戦い方が時代の変化と共に変わってきた点は注目すべきでしょう。例えば戦時中、日本が開発中だった731部隊の細菌による攻撃研究はアメリカがその研究成果を持って行ってしまったとされています。(その交換に石井隊長は捕まっていません。)これが使用されればとてつもない細菌テロですし、オウムの地下鉄サリン事件もテロであります。

これは世の中の争いの定義が変ってきたと言ってもよいのです。つまり極論すれば憲法9条は一世代前の戦争のやり方に呼応するものであり、新しい戦い方にフィットしているか全く未知なのであります。

安倍首相はこの人質事件がひと段落したところで大きなハードルを越えなくてはいけないことになります。それはテロと戦う(「戦いに支援」でも広義では同じでしょう)と宣言した意味をもう一度考えることから始まるでしょう。英米の呼びかけに乗じたところもあるし、テロを撲滅させるのは世界の共通の課題であることは確かです。しかし、戦闘能力を持ち、多大なる経験があり、諜報に長け、資本や人材を通じて世界の末端まで影響力を持つ国と同等のことができると思われる覚悟は必要だという事です。「戦う」とはメンタルな部分よりもフィジカルな部分でとらえるのがナチュラルです。日本が憲法上どれだけ制約があろうが他国やテロを仕掛ける側にそんなことは分かってもらえません。「戦う」とはそれぐらいの強い意味があります。

安倍政権は上述の二つの課題、憲法改正と自衛権について国内の調整を中心に野望実現のためにここまで努力してきました。私はここからの安倍首相の動きに注目したいと思います。テロに本気で戦う気があるのか、扇動だけして今回の事件で萎んでしまうのか、これは安倍晋三の政治生命にかかわる判断になるかもしれません。

私は今回の事件は日本人にも日本国にも痛ましいことになりましたが国際社会においてどれだけ我々の常識が通じないのか、交渉が難しいのか、日本外交の弱さを露呈したと思っています。ここは強い宰相として立ち上がり、深い反省と共に今までの何倍も強くなる姿勢を見せてもらいたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年2月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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