力強さに欠けるアメリカ経済

今日のブログネタを何にするか悩ましいところでありますが、安倍首相の議会演説がほぼ想定通りだったことを踏まえ、あまのじゃく的にアメリカ第1四半期GDPが年率換算たった0.2%まで落ち込んだ方を取り上げたいと思います。

確かに今年の冬も消費には向かい風の厳しい気候でありましたがアナリストの事前予想が1.0%であったこと、前期の10-12月が2.2%だったことを考えても必ずしも天気だけの理由でここまで減速することはないと考えています。私はこの1-2か月、アメリカ経済は短期的なピークを迎えた可能性があると意見させていただいています。


理由は原油安によってシェール関連事業をじわじわ真綿で首を絞めるような状況にさせたことが挙げられます。確かに優良なシェールガス田ならば原油相場が30ドル台でもやっていけるとされていますが、それは全体のごくわずかであります。もともとは原油が100ドル台にあり、それに刺激されて高コストのシェールも開発機会ができ、日本を含む投資マネーを呼び込み、関連ビジネスがにぎわったのがシナリオです。シェールの事業体は中小が多く資金的バックグラウンドが十分ではないところも多いでしょう。また、投資家が原油相場に嫌気がさして損切するケースもあるでしょう。何年後かに振り返って言われるのは「シェールバブル」という言葉のような気がします。

皮肉にも原油相場はじわじわと回復しています。今日のNYマーカンタイルで58ドル台半ばまで上昇しています。これも以前私も予想したように春ぐらいから回復するとしたシナリオの通りです。ここからの原油の上昇はアメリカ経済にとってはガソリン代の上昇につながり、個人消費にブレーキを掛ける作用となります。(もっとも私は100ドル台に戻るとは思っていませんし、急激な上昇を引き起こすとも思っていません。ゆっくり確実に上がっていくと考えています。)

次に米ドルの独歩高が本格的に悪者扱いされています。新興国の経済不振で金利低下の流れは止まらず、アメリカとのシーソーはよりバランスが悪くなっています。タイでは金利を二カ月連続で下げ、ついに1.50%になっています。韓国も下げたいところですが、外貨組み込みの融資から利下げしにくい背景があるようです。

カナダTDバンクの為替アナリストは短期的に対カナダドルで米ドルの弱含み(長期は米ドル強含みに変わりなし)にポジションを微妙に変化させてきています。円ドルも119円台から118円を伺う動きになってくると思われ、このゴールデンウィークは市場が薄い間を狙って乱高下する可能性もあると思います。

悪者扱いのドル高は声高に叫ぶとなぜか修正されるようになっていて神の手がアメリカに味方するようです。

本日終えたFOMCの会議もほぼ想定通り何も起きなかったと言えます。利上げ想起をさせる発言もなく、このまま、景気の動向をしばらく見ると理解した方がよさそうです。特に今回落ち込んだGDPが第2四半期でどう盛り返すかは7月にならないとわかりません。その結果が素晴らしく、U6を含む雇用各種指標、CPI、住宅指標、リテール、自動車販売、ISMなど経済指標も押しなべて順調、貿易も堅調で港湾労働者のストの影響も完全に消えたとすればアメリカの国内条件の一部は満たすことになります。

但し、もう一つの不安材料、ギリシャの行方が5月から6月にはある程度判明しますし、低迷するブラジル経済などの行方も気になります。それらを総括的にみた株式市場ではダウがやや、足踏み状態となっていますがこれも経済の先行きの読みにくさを表しているように感じます。

俯瞰すればこの春は他国動向をみながらアメリカの国内の経済回復の足取りを確認する作業が続くと考えています。ユーロ圏と中国の経済の動向も当然ながらその重要な注目点となることは確実です。

こう考えるとアメリカも世界の中のアメリカなのです。アメリカ至上主義(パクスアメリカーナ)はパクスロマーナ(ローマ中心主義)からきた言葉とされます。ローマ時代は良かったかもしれません。60年代のアメリカもよかったかもしれません。が、アメリカが推進した自由貿易、グローバル化がパクスの時代を終焉させたと言えそうです。それはパクスチャイニーズ(中華思想の時代)を作りにくくしているともいえるのかもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 4月30日付より