日韓関係のスタンスが変化した理由

韓国の尹炳世外相が来日し、岸田外相と前向きの会談、そして、22日の日韓それぞれの在外公館で開催された日韓国交正常化50周年記念式典には二転三転したのち、安倍首相、朴大統領がそれぞれの地で参加し、未来志向の関係を目指すという現時点では玉虫色の展開となりました。何がこうさせたのでしょうか?

一般的理由としては韓国経済の体力が弱っていることで嫌日姿勢を貫き通せなくなっていることは確かにあります。

が、実態としては私は諸外国からのクレームのボイスが大きくなったのだろうと思っています。

懸案の「明治日本の産業革命遺産」は28日からドイツで開催される世界遺産委員会で決定されます。ユネスコの諮問機関が5月に登録勧告をしたことを受け、韓国側から議長国のドイツをはじめ、非常に大きな圧力をあちらこちらにかけ、委員の国々を困らせました。このまま、もめ続ければ世界遺産委員会では最終投票でどちらかに投票しなくてはならず、YESーNOをはっきり出さねばならない状況になります。

ところが委員にとってこの判断は遺産としての適性度を判断するというより高度な政治的背景を考慮しなくてはいけないことに困惑しているのが実情でありました。つまり、「いい加減にせよ」というのが世界のボイスであります。

カナダ バーナビー市で慰安婦の像建立計画を日系グループが察知したあと、日系の巻き返しの動きは素早かった一方で複数がバラバラの動きを展開し、市役所を困惑させました。最終的に市長声明がでて、本件、コミュニティに差し戻しとなったのですが、その前日、私も市長との会談に臨んだ際、市長からアメリカ グレンデールの様にさせないカナダ式の解決方法は何か、と問われたのは本件をバーナビー市議会で白黒つけるのが正しいプロセスではないと考えたからです。

つまりたった9名の議会で本件が決議されれば票が割れ、議会そのものに親日、親韓派を作ることになります。それがバーナビー市にとって何のメリットも意味もなさない派閥化であって5期もやっている市長にとって最も面白くないことであります。だからこそ、市長判断の差し戻しとしたのです。

ニューヨークタイムズに奇妙な記事が出たことが話題になりました。朴大統領が慰安婦問題の最終決着は近いとされた件です。あの記事が出た後、日本側には困惑のムードが漂いました。「誰がどこでそんな交渉を進めているのだろうか?」と。

確かに何らかの議論はあった可能性はありますが、朴大統領の趣旨はそういう意味ではなかった可能性があります。朴大統領はオバマ大統領と会談する予定をMERSの問題を理由に会談延期しましたが、MERSはこじつけで朴大統領にとって形勢不利な事態が生じていたため、その巻き返しだったとみた方がナチュラルです。

オバマ大統領と会談すれば必ず出るであろう日本との関係改善の進ちょく状況。それに対してほとんど前向きの回答ができず、日本が悪い、慰安婦問題が解決できていないと主張する一方であれば問題解決能力を持たないとみなされ、会談そのものが負の結果をもたらすことになります。そこで最終決着が近いと表明することでアメリカへのアピールをすると同時に米韓関係改善を求めたとみるべきでしょう。だからこそ、アメリカの新聞のインタビューだったのです。

アメリカも日韓の関係についてどちらが正しいという判断はできません。どちらも大事な同盟国であり、慰安婦問題を理由にどちらかに肩を持つことは出来ないのです。つまり、世界中が韓国の慰安婦問題や歴史問題に固執するその姿勢に辟易としているのであります。

ある意味、朴大統領は今、ようやく自分の立場がどんどん不利になっていることに気がついたという事でしょう。だからこそ、韓国憲法裁判所の判決、および李明博前大統領から引き継いだ最重要課題である慰安婦について自ら前向きに取り組む方針に変えたのだろうとみています。

但し、韓国国民感情はそう簡単に変らないかもしれません。朴大統領が未来志向を主張しても国内の思想的背景、特に過激思想を持つグループのボイスはそう簡単に変わるものではないはずです。それは国が教育を通じて思想的刷込みをしてしまったツケでもあります。

政府間の関係、および、慰安婦問題は解決に大きく前進しそうな気配がみられますが、国民感情のわだかまりを取るにはもう少し時間がかかるでしょう。本件は早く解決し、国民の理解を変えていかないなりません。世界中で像を作る動きが潜在的にありますからモグラたたきの様になることだけは避けねばなりません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月23日付より