太陽光発電は原発の代わりになるの?

けさの日経新聞に、またこんな記事が出ています。

金融会社のオリックスがエネルギー事業を拡大している。太陽光発電の発電能力は3年後に原子力発電所1基分に相当する90万キロワットとなり、国内最大級の太陽光発電事業者になる。

よい子のみなさんは、この記事のまちがいがわかりますか? たぶん中学生ぐらいならわかると思いますが、90万キロワットというのは最大出力ですから、太陽が出ていない夜や雨の日には発電できません。太陽光発電の稼働率は、12%ぐらいといわれています。

このように出力×時間であらわされるエネルギーをキロワット時といいます。1年のうち12%ということは約1050時間ですから、90万キロワットの太陽光発電の出せるエネルギーは、最大出力がずっと続くと仮定しても

 90万キロワット×1050時間=9億4500万キロワット時

です。これに対して原発は、運転が始まればずっと動かすことができます。定期検査で止める時間を引いても稼働率は約70%、つまり6130時間ですから、同じ計算をすると

 90万キロワット×6130時間=55億1700万キロワット時

です。つまり同じ最大出力でも、太陽光発電の出せるエネルギーは原発の2割もないので、「原子力発電所1基分に相当する」という日経の記事は誤報です。しかも雨はいつ降るかわからないので、太陽光発電にはバックアップの発電所が必要です。この発電所は晴れた日には使わないので、全体としての稼働率はさらに悪くなります。

日経新聞の記者は「太陽光発電所がふえたら原発も火力もいらなくなる」と思っているのかも知れませんが、川口マーン恵美さんが書いているように、再生可能エネルギーをふやしたドイツでは、バックアップのために石炭火力を17基も増やすことになり、大気汚染が心配されています。

だから太陽光発電所は原発の代わりにはならないし、それをふやすとドイツみたいに電気代は2倍になり、空気を汚す石炭火力発電所が増えるのです。反原発の朝日新聞はともかく、日経新聞は経済紙なんだから、キロワットとキロワット時の区別ぐらいしてほしいものです。