地方創生レビュー第2回 シティプロモーションのその前に

2015年07月24日 16:41

地方創生が本格化する中、「シティプロモーション」への関心がさらに高まっている。
「シティプロモーション」なる言葉を聞いたことがあるだろうか。シティ(市)をプロモーション(宣伝)するという意味で、簡単に言えば、都道府県や市町村を企業や人々に売り込むということである。ここ数年、自治体では「シティープロモーション戦略」「シティープロモーション計画」などを策定して進めているところも見られるようになった。地方創生が進む中、こうした動きは一層進行が進むことが予想される。


その目的は自治体を認知してもらうこと、自治体を知って来訪につなげてもらうこと、自治体のファンになり定住してもらうこと、地域の特産品を知ってもらい買ってもらうことなどが目的である。

シティプロモーション戦略を数多くの自治体が策定している。中でも、川崎市の「シティプロモーション戦略プラン」は非常によくできている。

・市民の愛着と誇りを測る指標としての「シビックプライド指標」
・市民の市外への推奨度を測る指標としての「ネットプロモートスコア」
によって数値を測定しているのが特徴だ。

シビックプライド指標とは、市民の愛着や誇りについての指標で、「市に愛着をもっているか」「今後も川崎市に住み続けたいか」などの複数の設問の数値を集計したものだ。ネットプロモートスコアとは、「あなたは川崎市に住むことを友人、知人に勧めたいですか」「あなたは川崎市に買い物・遊びなどで訪れることを友人・知人に勧めたいですか」という設問に対する比率を見るもの。
このような活動は単なる「市のセールス」に留まらない、市民が地域に参画したり、活動を通じて誇りを感じたり、幸福になることが結果として市のイメージを上げ、「ああいう町に住みたいなあ」と思わせることにつながるという。

地方創生において各自治体も「まちのブランド化」を進めているが、私は少し懐疑的に見ている。
「良く見せる」広告プロモーションを戦略的に大々的に展開し、そこに効果があり、ある人の心を揺さぶり、行動を促せたとしても、現地の評判や情報を収集する段階で、「真実の姿」と「広告での姿」にギャップを感じて失望する可能性がある。また、いくら素晴らしいシティプロモーションをしていても、「いじめ自殺」「学校がいじめを隠ぺい」といった衝撃的なニュースや不祥事であっけなく名声やイメージは崩れてしまうこともある。「良く見せる」「盛る」度合が大きければ大きいほどSNS上で炎上するなど、逆にリスクとなる可能性がある。

こうした中、必要になってくるのはまちを多面的に知ることである。我々は意外に自分が住んでいるまちのことを知らない。告白しよう、専門家である私だってそうだ。
地域でワークショップを開催すると、「うちはこれがない」「・・・が多い」「・・・が少ない」「・・・が足りない」という意見が出てくる。しかし、その根拠はあいまいである。数値で検証してみると住民の認識が間違っていることが非常に多かったりする。

人間の認識は限界がある。1つの印象的な出来事や経験が認知に影響を与えるし、たまたま経験したことである一定の理解イメージを持ってしまうし、そもそも自分の知っている範囲でしか見ていないし、知りたくないことは無意識的に見ていない、避けている。自分の意見と思っている考え方であっても、育った環境が片付くる価値観に基づくものであったり、周りで知識がある人や地域で発言する人、信頼できる友達の意見、メディアでの識者の意見からの「受け売り」であることも多い(こういう私もそうだ)。

だからこそ、まずは自分のまちを知る。何かにひたむきに、こだわりやプライドをもって生きている人はどこかにいる。そういう人は思い、情熱、情熱を注ぐ理由(わけ)やこだわりを持っている。語られない人生の軌跡がある。人が情熱をささげていることがあれば、愛、悩み、失望、苦悩、歓喜、感動、感謝、夢、その裏には深いドラマがある。住民が個性的な人と出会い、知り、自分が何かに気づき、新たな自分を発見できるような、そんな取り組みを企画することを自治体には期待したい。

東海大学の河井孝仁教授が言う「地域参画総量」、つまり住民が地域のことを自分事としてとらえ、地域を良くしようと取り組む量が増えることが大事というのがシティプロモーションの本質だ。

今後、地方創生が本格化する。プロモーションはあくまで、手段である。どのようなまちを作りたいのか、将来的にどのようなまちになりたいのか、目指すのか。

・住民の対話を直接・ネットなどを使用して積極的に行う話し合いを深めるまち
・徹底的なICTを使って役場に行かなくても済む効率重視のまち
・女性議員数が60%を超えるウーマンシティ
・住民がみなが優しく、ほっとできるまち「セラピータウン」
などなど、

自分たちのまちの未来をデザインするためにも、まずはまちを知ってみる。当たり前と思っていた事の中に、僕らが見いだせなかった意外さが眠っているかもしれない。

まちを知れば、その先のプロモーションもみなが納得する形で進められる。

西村健
日本公共利益研究所

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日本公共利益研究所代表・主任研究員

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