消費増税から敵前逃亡か安倍政権 --- 中村 仁

2016年03月17日 18:00

財政再建案とセットで民意を問え

やはりね。安倍政権は、夏の国政選挙を前に消費増税をまた先送りする構えです。「選挙で先送りの是非を問う」と、言い出しかねません。自公政権には追い風になっても、将来のツケを回される若い世代には逆風となります。政治家としての責任感があるのなら、先延ばしするほど、負担が重くなる財政再建案(歳出削減)とセットで民意を問う必要があります。

「2017年4月に消費税10%を実施できるよう、経済的条件を整える」と、首相は約束してきました。その経済的条件が満たされないということは、アベノミクスは効果をあげていないということです。「リーマンショックや大震災のような重大な事態」が起きていないのですから、アベノミクスは失敗に相当します。正直にそれを認め、次の手を打つというのが政治責任です。

金融政策の偏重にも警告

消費増税先送りのお膳立てに使おうとしている「国際金融経済分析会合」の初会合が開かれました。米国のスティグリッツ教授は増税先送りを主張しながら、一方で「日銀が導入したマイナス金利政策は悪い副作用をもたらす可能性がある」と、指摘しました。アベノミクスが効果をもたらしているとすれば、主に黒田総裁の異次元金融緩和、マイナス金利政策の結果です。それを否定されてしまったのですね。

黒田総裁は「消費者物価が目標の2%に達するまでマイナス金利を続ける」と断言しております。日銀総裁には冷静な表現力、後に弁明する羽目に追い込まれないような周到な表現力が求められます。過激なエコノミスト並みの不用意な発言はどうしたものでしょうか。焦っているのです。

甘い選択を争点にしてはならない

2014年解散の時と同じよう、増税先送りを争点にするのでしょうか。予定通り実施というつらい選択を争点にするなら、民意を問う意味もあります。反対する人が少ないであろう甘い選択を争点にしてはいけません。有権者を欺いていけません。せめて、後世代にツケをまわす財政再建計画(歳出削減)とセットにして始めて、争点になりうるのです。

棒高飛びにたとえるならば、安倍政権は自分でバーを高く設定し、飛ぶぞ飛ぶぞいってきました。ハードルを飛ぶ直前になって、楽々超えられる高さに下げて、有権者を釣ろうとする行為は政治への不信感を募らせますね。

増税を先送りするなら、財政再建計画とセットにすべきだと、「金融経済分析会合」で、だれかが大きな声を上げなければなりません。問題は、増税時期をいつまで先送りするのかを安倍政権が明示するのは至難だし、明示したところでだれも信じないだろうという点です。

財政出動は危機を深めるだけ

先送りの場合でも、「再増税できる経済環境を早期に整える」とか、なんとか言うでしょう。そうでもしないと無責任との批判を受けるからです。そこで「そのためには財政出動が不可避だ」とかいって、財政をどんどん悪化させてしまう可能性があります。世界経済の状況は悪化しても、当分、好転することはないから、国債を増発して財政出動する道を選ぶのは賢明でありません。

結局、相当な長期間、日本経済は消費税8%でやりくりせざるを得ないかもしれません。「一強」の安倍政権が断念したことを、後の政権が挑戦しますかね。相当な長期間が半永久的になるかもしれません。政治が逃げ腰になり、危機を深めます。

低成長とデフレ的状況を前提に

消費税8%を前提に経済設計をすることのほうが現実的かもしれません。現実的ではあっても、マイナス金利など金融政策に、これ以上、負担をかけてはいけません。日銀はすでに先進国で最悪の体質に陥っています。そのことを黒田総裁も認めようとしません。本当の危機は、安倍首相も黒田総裁も表舞台から去った後にやってくるのではないですか。

結局、世界経済は歴史的な低成長期に入り、先進国ほどデフレ的状況から逃れられません。そのことを前提に経済設計をしていかないと、財政も金融も危機を深めるだけでしょう。それは敗北主義だとして葬り去り、無理な制度設計に走るほど危機を深めてしまうのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年3月17日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた中村氏に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

 

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