脱原子力で電力会社は債務超過になる

2016年07月19日 11:30

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仮に、早急なる脱原子力という国民の選択がなされ、全ての原子力発電所が永久に稼働されなくなるとしたら、原子力発電事業をもつ電力会社は、事実上、債務超過になり、資金調達が著しく困難になる可能性があって、電気安定供給は危機に瀕しかねない。

資産というのは、利用価値があるからこそ、資産である。使用される可能性が確定的になくなった資産は、もはや資産ではなく、廃棄物の塊である。したがって、会計的には、簿価の全額を減損処理しなくてはならない。

さて、原子力発電所が確定的に稼働しないことになれば、会計的に資産ではなくなるので、全額を減損しなくてはならない。これだけでも、原子力発電所をもつ電力会社は債務超過になりかねない。

また、廃棄物にすぎなくなった物体は、会計的に除却されるだけではなく、物理的にも除却されなくてはならない。物理的除却には費用がかかるが、その費用は、除却損失として、事前に会計処理されなくてはならない。

より深刻な問題は、施設除却に要する費用が予想もつかないことである。何しろ、相手は、原子力発電所だから。その費用を保守的に見積もって事前計上すれば、それはもう、確実に、電力会社は債務超過となるであろう。

もちろん、そういう事態に対しては、当然のことながら、政策的に会計処理の特例等を導入するわけだが、だからといって、実質的に債務超過になることは避け得ない。

巨額な負債をもつ電力会社が実質的に債務超過になれば、それは非常事態だから、電気の安定供給を守るためには、大変な混乱と、莫大な社会的費用が発生するであろうことは、間違いない。少なくもと、金融的には、難問になることを避け得ない。金融界は困る。

最初から予想される混乱は、長期的視点に立って、未然に防止すべきだから、脱原子力というのは、会計処理のような細部の技術的な議論も含んだ緻密な長期戦略でなければならないということである。

脱原子力は、要は、国民の選択の問題だから、そう決まれば、それでいいのだが、脱原子力を達成するための現実的な手続きは、別問題である。どちらにしても、時間と費用がかかる。おそらくは、時間を短くするほうが、費用が余計にかかる。故に、最初に、合理的な費用の見積もりのもとに、合理的な時間軸の設定を行い、計画的に脱原子力を進めなくてはいけない。これは、当然至極のことだ。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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