1% vs. 99%~トランプ現象とブレグジット~

北尾 吉孝

先週金曜日、私はYamada nagamasaさんの引用ツイート「トランプ本人よりも、トランプを支持してここまで持ち上げた民衆の方が不気味。彼らをここまで来させたのは何か、それこそが問題」をリツイートしました。ドナルド・トランプ氏が米国共和党の大統領候補指名を受けるという、世界中の多くの知識人にとってある意味意外なことが起きました。一体この背景は何かと考えてみるに、その根本に所謂「1%対99%」があるのではないかと私は思っています。

We are the 99%(我々は99%だ)――之は、「国民の1%ほどのウォール街にいるような大富豪たちが、残り99%の犠牲の上に、より裕福になっていくとして、2011年に経済格差是正を求めて起こったデモ」のスローガンです。此のムーブメントは同年、米国ウォール街より世界各地に飛び火しました。税金は税金で次々取られて行くにも拘らず、片方で財政が逼迫し十分な社会保障が受けられなくなって行く――「苛政は虎よりも猛し」とはよく言ったもので、中間層の破壊が深刻化し富裕層は増税に耐え兼ねて逃げ出して行く、といった具合であります。

上記観点よりは例えば、先月の受諾演説でトランプ氏は「世帯収入は、16年前の2000年以降、4000ドル以上も下がっています」とか、「私の対立候補は、わが国の中産階級を破壊してきたほぼすべての通商協定を支持してきました」とか、あるいは「記録的な入国者が数十年続いた結果、私たちの市民、とりわけアフリカ系アメリカ人とヒスパニック系アメリカ人は賃金の低下と失業率の上昇にさらされました」とか、と述べていたようです。

世の中を変えて欲しいという99%の側の切なる願いは09年1月、一つの大きなチェンジを齎してくれる象徴の如く当国史上初の黒人大統領としてバラク・オバマ氏に託されたわけですが、彼等の思いが満たされるようなっては行きませんでした。結果、白人の大資産家であるものの「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏であれば大きなチェンジが齎されるのでは!?、といった願いが生まれ格差拡大する現況に不満募らす99%の側が、大多数の知識人の見立てを大きく外す形で彼を本選に導いたのではないでしょうか。

此の1%対99%の結果という意味では、「ブレグジット(Brexit)…英国のEU離脱」についても同様に言えましょう。例えば、先々月28日の中央日報社説「英国のEU離脱の背後にある怒りの民心、韓国も例外ではない」にも、次の記述がありました――グローバル化の過程で落ちこぼれ疎外された低所得、低学歴、非熟練労働者階層の積もり積もった挫折感と怒りが、政治エリートが主導してきた既存の秩序をひっくり返す反乱を起こしたのだ。移民者に対する門戸の開放と国境なき自由貿易の恩恵が少数に集中したことで、ますます格差が広がっていることに対する怒りが自虐的な選択をさせたとも言える。

ブレグジットという歴史的決定の翌日、私はハリー杉山さんのツイート「歴史を動かしたのは65+のシニア世代。18-24才との差」をリツイートしました。「移民が俺達の仕事を奪う」「誰のための税金だ」と思う国民、あるいは「昔は良かったなぁ」と思う老人等が増えたが故で、之また1%対99%の一帰結と言えるのかもしれません。

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