【映画評】太陽のめざめ

2016年09月01日 05:50

16歳の少年マロニーは、窃盗と無免許運転でつかまり、育児放棄が疑われる母親と共に、裁判所に呼び出される。判事のフローランスや周囲に反抗的な態度をとるマロニーだったが、薬物依存で男癖の悪い母親をかばおうとしたことから、判事の温情で、少年院送りではなく、より自由に過ごせる更生施設に行くことになる。フローランスは、マロニーと似た境遇から更生したヤンをマロニーの教育係につける。判事や指導員、ヤンの根気強い指導で少しずつ変わっていくマロニーだったが、相変わらず問題ばかり起こす日々をくり返す。そんな時、指導員の娘テスに出会い不器用な恋に落ちる…。

家庭に問題があり心に傷を負った少年が周囲の励ましで変化していく姿を追ったヒューマンドラマ「太陽のめざめ」。主人公マロニーは、6歳の時、判事の目の前で母親から育児放棄された過去がある。成長して荒れた生活を送り、何度も問題を起こす非行少年だが、自分を捨てた母親をかばうなど、根っこの部分は悪人ではない。彼に必要なのは、落ち着いた環境と教育、とことん信じて愛してくれる人間の存在なのだとわかる。それでも彼は、何度チャンスを与えてもらってもそれをふいにし、周囲の期待を裏切ってしまうのだ。

自分をコントロールできず、やり場のない怒りをぶつけるマロニー。そんな主人公を演じる新人のロッド・パラドが素晴らしい。鋭い刃物のような目つき、それでいて肩を丸めて涙を流すナイーブな面も。せっかく自分を愛してくれる恋人テスに出会っても、上手く愛情を伝えることができないマロニーが不憫になる。物語は、非行少年を根気よく見守る大人という、ある意味、都合のいい構図なのだが、時に優しく、時に厳しく接する判事を演じるのが大女優のカトリーヌ・ドヌーヴであることで、この映画のレベルが上がっている。

大人への敵意や不信感もあるが、誰かの子どもであることの意味を知っているマロニーが、教育係のヤンやフローレンス判事にみせるふとした優しさに、それまで受けた感謝の思いが見えた。ラストには、決して楽ではない未来をしっかり生きてほしいとの希望が込められている。
【60点】
(原題「STANDING TALL/LA TETE HAUTE」)
(フランス/エマニュエル・ベルコ監督/カトリーヌ・ドヌーヴ、ロッド・パラド、ブノワ・マジメル、他)
(成長物語度:★★★★☆)


編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年8月30日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookより編集部引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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