「24時間テレビ」が偽善でないことを解説しよう

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写真は伊豆日日新聞。昭和63年(1988年)7月2日。

今回、24時間テレビに関する記事を数回にわたり投稿した。一定の反響を得たが、関心の高まりは啓蒙につながるのでよい機会と感じている。本稿では障害者支援をおこなっている者として、24時間テレビに関する疑問などについて私なりの見解で論じてみたい。

■参加者にギャラを支払うことはおかしい

「参加者にギャラを支払うことはおかしい」。そう主張されるあなたは障害者支援活動従事者か経験者だろうか。もし活動の経験がなければ、それは単なる「やっかみ」である。実態を理解しないうえでの的外れな指摘は大きなお世話である。

日テレに何かを主張したいのなら、同社の株でも購入して株主総会で動議を発動すればよいだろう。あなたの影響力が大きければ、会社を動かすことができるかも知れない。

さて、話を元に戻そう。障害者支援の活動をおこなうにあたって必要なものは「お金」である。お金を集めることで様々な活動に充当できるからである。

その視点に鑑みれば、1回の放送で億単位の募金を集めて、高い視聴率をとる24時間テレビの存在は貴重である。障害者支援という大儀があるから、スポンサーもつき易い。さらに番組終了後には、賛否を含めて話題になるから啓蒙や教育的効果も期待できる。

アメリカの「Labor Day Telethon」は、1966年以降、アメリカ合衆国の労働者の日(Labor Day Telethon)に併せて毎年開催されているチャリティ番組である。元々は米国筋ジストロフィー協会が活動を広く理解してもらうために、俳優ジェリー・ルイスが発起人総合司会として開催するようになった。

2011年に、ジェリー・ルイスが高齢により司会を退いているが、2010年までは労働者の日の前日夜~当日夜にかけての概ね20時間以上に亘りラスベガスで開催され、著名人がギャラなしのボランティアとして出演し、コンサートやショーをおこなっていた。

日本で「Labor Day Telethon」のようなイベントが開催できたであろうか。24時間テレビが開始された、1978年当時はまだ障害者差別が色濃く残っていた時代である。その時代に同様なチャリティーを企画しても、理解されることは困難だったと推測している。

それでも、ギャラについて論じたいなら、あなた自身がやってみればいい。高尚な理念を掲げて「Labor Day Telethon」のようなことをやりましょうと。果たして何名が賛同するだろうか。自分でできないなら安易な批判をすべきではない。

また、障害者支援活動を特別番組として長期にわたり放映しているのは日テレのみである。他局はなぜ二の足を踏むのか。それは膨大な手間とコストがかかるからだ。日テレは他局に先んじて行動に移している。この点だけでも賞賛に値すると考えている。

以上を鑑みれば、仮に参加者にギャラが発生していたとしても認許すべき範疇と考える。

■障害者への押し付け、お涙ちょうだい、見世物はおかしい

あなたの周りには障害者はいるだろうか。障害者の家族や両親と話したことはあるだろうか。確かに、番組の演出に関しては脚色したものが無いとはいえない。

しかし、24時間テレビに対して、障害者を見世物にしているという意見があるが、これこそが差別の元凶であることを知らなければいけない。

なぜならば、あの姿こそが障害者のありのままの姿だからである。

障害者や家族は世の中の偏見に苦しんでいる。偏見を無くすためには、一般的にも広く障害のことを知らしめなければいけない。そして啓蒙と理解が進むことを期待している。

私は家族と話したわけではないので推測の域を出ないものの、出演にあたっては、相当な葛藤があったことが予想される。汚いといわれるかも知れない、好奇の目で見られたらどうしよう。それでも、啓蒙が進むことを期待して、満を持して番組に出演するのだと思う。

障害者支援などの活動をしていれば分かることだが、障害者は、日々、好奇の目に晒されている。だから、押し付け、お涙ちょうだい、見世物などと評するのは、失礼極まりなく大きなお世話なのである。

昨年、ハフィントンポストに掲載されたダウン症の娘をもつ、キャロライン氏のメッセージに注目が集まった。「これが私の娘、ルイーズです。娘は生後4か月で、2本の腕、2本の足、2つの素晴らしいふっくらした頬、そして1つの余分な染色体があります」。

キャロライン氏は「ダウン症」の子を可哀想だと決めつけることで、多くのダウン症を持つ親が苦しんでいるのだと訴えた。

■私自身の活動について

「エラそうに、お前はどのような活動をしているのか!」とご批判をいただいたので若干ふれておきたい。私が支援している「アスカ王国」という障害者支援の団体がある。1981年の国際障害者年の記念事業として活動を開始した。

活動期間中は「健常者、障害者、指導者、来賓等の区別のない交流を図りボランティアスピリットを高めた国つくりをおこなう」ことを目的としている。そのため、活動の名称に王国を追記し「アスカ王国」としている。

これまでに全国50ヶ所以上で開催し、参加者総数は約2万人を数え、後援をいただいた国会議員や地方議員等は200名を超している。各地方行政からの支持もあり、最近は企業からのニーズも高まっている。活動のキャッチコピーは「愛と平和の国」である。

なお、私は表記について「障害者」を使用している。「障がい者」は使用しない。過去には、多くの障害者が権利を侵害されてきた歴史が存在する。それらの歴史や言葉を平仮名にすることで本質をわかり難くする危険性があるため「障害者」を使用している。

尾藤克之
コラムニスト

PS

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