【映画評】アイ・ソー・ザ・ライト

2016年10月07日 06:00
I Saw the Light

1944年、アメリカのアラバマ州。カントリー歌手ハンク・ウィリアムスは、子持ちの女性オードリーと結婚し、幸せに暮らしていた。だがオードリー自身が歌手の夢を捨てきれなかったことで、家庭内に不穏な空気が流れ始める。息子が生まれたことで二人の人生は再び輝きを取り戻すものの、ハンクの人気が高まるにつれ、家族との溝はますます深まっていった。ハンクは寂しさを紛らわすために、他の女性やアルコールに逃げるように。レコード会社が求める理想のシンガー像や、夫、父親としての自分に迷いながら、歌に思いを込めるハンクだったが…。

夭折の天才シンガー、ハンク・ウィリアムスの半生を描く伝記映画「アイ・ソー・ザ・ライト」。有名なヒットソングはもちろん耳にしたことはあるが、29歳の若さで亡くなったこと、幼い頃から二分脊椎症という病気を患い、生涯、背中の痛みに苦しめられ、その痛みを緩和するために鎮痛剤を大量に使用していたことなどは、本作で初めて知った。映画は、伝説的なカントリー歌手を決して美化することなく、女好きでマザコン気味、だらしなくて寂しがり屋のくせにプライドだけは高いという、欠点だらけの人物像を赤裸々に描いている。だからこそ、彼の歌い上げる名曲のピュアな美しさが際立つのだ。伝記映画としても、音楽映画としても表層的な出来なのだが、その分、テンポよく見られるので、カントリー・ミュージックになじみのない観客も抵抗なく鑑賞できるだろう。

素晴らしいのは、主人公を演じるトム・ヒドルストンだ。見る前は、南部出身のカントリー歌手を英国生まれのヒドルストンが演じるの?と首をかしげたが、見てみると、これが実にハマッている。ルックスがウィリアムス本人に似ていることもあるが、何よりもヒドルストン自身が、猛特訓して吹き替えなしで自ら歌いあげた数々の名曲の歌唱がいい。タイトルの「I SAW THE LIGHT」は、ウィリアムスが移動中の車の中で息絶え、その事を知ったファンが彼の死を悼んで唱和したことで知られている。
【60点】
(原題「I SAW THE LIGHT」)
(アメリカ/マーク・エイブラハム監督/トム・ヒドルストン、エリザベス・オルセン、ブラッドリー・ウィットフォード、他)
(なりきり度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年10月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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