ブックメーカーの倍率の「誤算」

2016年12月06日 11:30

オーストリア大統領選は4日、野党「緑の党」前党首のアレキサンダー・バン・デア・ベレン氏(72)が極右政党「自由党」の候補者ノルベルト・ホーファー氏(45)を破り大統領に選出され、8カ月以上の長期戦となった選挙戦に幕を閉じた。1年間で3度も投票会場に足を運ばなければならなかった国民も大変だったが、2人の候補者も家族を犠牲にしながらの奮闘だったはずだ。

▲大統領に当選したバン・デア・ベレン氏のプラカード(オーストリア「緑の党」の公式サイトから)

▲大統領に当選したバン・デア・ベレン氏のプラカード(オーストリア「緑の党」の公式サイトから)

オーストリア大統領選はリベラル派と民族派右派のイデオロギーの戦いと受け取る向きもあるが、バン・デア・ベレン氏を大統領に押し上げた最大の原動力は、「ホーファー氏を絶対に大統領にしたくないアンチ・ホーファー陣営の結束」があったからだ。厳密にいえば、「バン・デア・ベレン氏が勝利した」というより、「反ホーファー陣営が勝った」というべきだろう。オーストリア大統領選は、ホーファー対反ホーファーだったのだ。

ところで、ホーファー氏は欧州初の極右政党出身大統領という名誉を逃したが、同氏が獲得した得票率46・7%は不気味なほど高い。バン・デア・ベレン氏を支援したのは出身政党「緑の党」のほか、与党の2大政党、社会民主党と国民党、それに他の小野党だ。すなわち、自由党1党に対して他の全政党が戦ったのだ。にもかかわらず、出身政党の自由党の支援しか受けなかったホーファー氏が有権者のほぼ半分を獲得した。もちろん、自由党の歴史でも最高得票率だ。

オーストリアでは一応、2018年に総選挙が実施されるが、多くの党関係者は来年にも早期総選挙が実施されると予想している。その場合、大統領選で惜敗した自由党が総選挙で第1党に躍進するシナリオはもはや非現実的ではなくなってきた。
第1党に躍進したとしても、他の政党が大統領選と同様、反自由党で結束した場合、自由党主導政権の樹立は難しいが、政権奪取は夢ではなくなった。

オーストリア大統領選の報告を閉じる前に、一つ報告したい。大統領選を予測した欧州の主要ブックメーカーが今回、ことごとく間違ったのだ。3つの主要ブックメーカーは一様にホーファー氏の勝利を予想していた。

メディアの世論調査ではない。ブックメーカーの予測だ。後者は間違った予測を立てれば、賭け屋は膨大な経済損失を受ける。だから、ブックメーカーは間違ってはならない。それがいずれも間違ったのだ。

ブックメーカーの場合、どちらを支持するかはどうでもいい問題だ。正確な倍率(オッズ)こそ命だ。それが間違っていた。米大統領選の時も欧米主要ブックメーカーはクリントン女史が当選すると予測していた。倍率の誤算が続いている。

なぜ予想専門家のブックメーカーが倍率を間違うのか。ひょっとしたら、グロバリゼーションと社会の多様化によって、予測や予想事態が難しくなってきたのではないだろうか。それは一時的現象だろうか、それともブックメーカーの終焉を意味するのか。次の大きな政治的イベント、仏大統領選まで考えていきたいテーマだ。

<ブックメーカーの倍率>(12月1日午後段階)

―         バン・デア・ベレン   ホーファー
bet-at home    2・40         1・50
Mr Green       2・65         1・42
William Hill      2・50         1・50

William Hillの場合、バン・デア・ベレン氏の当選に100ユーロかけた人は、同氏が勝利した場合、250ユーロを得る。一方、ホーファー氏の当選に100ユーロかけた場合、同氏が勝ったとしても150ユーロしか入らない。すなわち、ホーファー氏の当選の確率が高いと予想しているのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年12月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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