IEAは、減産合意が遵守されるなら、供給過剰は終わる、と予測

多くの人が注視しているIEAの12月月報が発表された。FTがさっそく要点を報じている。”IEA predicts oil glut will end if producers deliver deal” (Dec 13, 2016 , around 20:00 Tokyo time)と題した記事だ。サブタイトルは “If OPEC and non-member cut supply, market will move into deficit” となっている。

IEAのHPにあるHighlightsを読んでみたが、ここではFTの記事を紹介しておこう。

・世界でも指導的なエネルギー予測を行っている機関(IEA)によれば、OPECと非OPECが、最近決定した減産合意を実行するなら、6ヶ月以内に需要が供給を上回ることになろう。

・IEA曰く、OPECと非OPECが誓ったように合計180万BDの減産を実行したら、2017年の前半には60万BDの在庫が取り崩されることになろう。

・IEAは、火曜日(12月13日)に発表した月例報告で「成功すれば、2年間の困難な年を経て、生産国はようやく価格を固め、収入の安定化が図れる。失敗すれば、4年連続の在庫積み上げとなり、おそらく価格は再び下落するだろう」と指摘している。

・広く読まれているIEAのこの月報は、OPECが減産合意をしてから初めての重要な需給バランス見通しとなる。

・以前の月報では、供給過剰は少なくとも2017年後半まで継続し、4年連続で供給過剰となると予測していた。

・もしOPECが減産し、3,270万BD(なぜOPECが発表しているプレスリリースの中にあるAgreement記載の3,250万BDでないのか、不明)の生産目標を達成し、非OPECが55.8万BDの減産を行ったら、来年前半には60万BDの供給不足となる、とIEAは見ている。

・IEAは、どの程度遵守しそうかは予測していないが、発表とおりの減産が行われれば、という前提での評価だ、としている。

・多くのアナリストが、完全に遵守することはないだろう、と見ているが、OPECの盟主サウジは非OPECの合意発表後、在庫取崩の加速に真剣に取り組んでいることを示すため、もし必要なら合意した1,006万BD以下への減産も喜んでする(ファーリハ・エネルギー相)、と発言した。

・「減産が本当に遵守されるか、現在の価格上昇が継続するか、これからの数週間がきわめて重要だということははっきりしている」とIEAは付記している。

・IEAは需要予測も10万BDずつ上方修正し、2016年は前年比140万BD増、2017年は130万BD増となろうと発表した。主にアメリカと中国の需要増が理由。

・非OPECの供給量については、ロシアの減産を織り込み、2017年の増加を25.5万BD下方修正し、22万BDの増加となろう、としている。

・シェールについては、価格上昇が増産につながる可能性がある、としながらも、相当程度織り込み済なため「前回予測より若干増と見ている」としている。曰く、
「2年間の困難な時期を経て、米国のシェール事業のビジネスモデルはより強靭性をもっている」「にも拘らず、(サービス企業からの値上げ要求などが予測されるため)コスト増を見込まざるを得ず、事業を拡大し資本投資を増やした場合、プラスのキャッシュフロー(収入が支出を上回ること)を維持できるかどうか、慎重にみる必要がある」。

なるほど。
最後のシェールについてのIEA評価は興味深い。
新聞報道では掘削リグ数の回復が取りざたされているが、詳細にみるとテキサス州西部のパーミアン地域における増加が際立っていて、バッケンとかイーグルフォードではまださほど増えてはいないのだ。米EIAが今年9月から発表し始めたDUC(掘削済み、未仕上げ)坑井のレポートでも、増加しているのはパーミアン地域だけだ。

これは、地質状態が優良なパーミアンでこそシェールオイルの増産が期待できるが、米国全体としての大幅な増産にはもう少し時間がかかる、という意味ではなかろうか。

北ダコタ州バッケンのシェール王と呼ばれるハロルド・ハム(コンチネンタル・リソーシズのオーナー社長)は、一時トランプ政権のエネルギー相候補といわれていたが、政策チームの一員に就くようだ。本業がいまだ安心できる状態ではない、ということではなかろうか。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年12月13日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。