北方領土に経済価値なし+日露同盟は伊藤博文の夢

2016年12月15日 22:00
プーチン&岸田161215

プーチン大統領を出迎えた岸田外相(外務省サイトより)

北方領土問題を考える場合に大事なことは、四島に経済価値などないという事を忘れないことだ。むしろ、使い道のない僻地に膨大な公共投資などが必要になり。損失のほうが大きい。しいて価値ある使い道があるとすれば、原子力の廃棄物などの処理場であろう。

価値があるのはサハリンであって、下手に四島を返還してもらって永久にサハリンを取り戻す口実を失うのは賢明な取引ではない。

まして二島など根室市にとっては、公共事業で地元の業者が潤い、観光の種に少しはなるかもしれないが、国家的にはまったく意味がない。

ただ、日露関係の正常化が実現し、そのために、もうこのへんで領土問題は永遠に終わりにしようというのは、ありえない相談ではない。日露のあいだに領土問題がなくなったら東アジアの地政学は大きくかわる。

実は日露戦争のあと日露関係は非常に良くなった。伊藤博文が哈爾浜に出向いて、ロシアと話し合おうとしたとき暗殺されたが、その後も関係改善は進み、第一次世界大戦でも日本はロシアの側にたって参戦した。

しかし、ロシア革命でこの関係改善は無に帰した。

いま、中国の台頭と無法ぶりを目の当たりにして、領土問題を損切りにして日露同盟を成立させるというのも馬鹿げた選択肢でないのかもしれない。ただ、その場合には、二島というのは意味がなく、二島の見返りに経済協力など馬鹿げている。あるとすれば、三島だが。

日露の領土問題については、『領土問題は「世界史」で解ける』(宝島社)で詳しく書いたが以下はその一部だ。

ソ連の中立条約侵犯を四島を返してもらったら許せるのか?

私は、外交で大事なことは、将来の国益のためにどうすべきかであって、日本人の心の傷を癒やすなど自己満足の世界はどうでもよいことだと思います。

それではどう考えるべきですが、まず、北方四島にも北千島にも経済的な価値はほとんどないことを確認する必要があります。漁業はそこそこですが、防衛費や統治にかかる費用を考えれば微少なもので、将来ともに赤字でしょう。

積極的な使い道は、原子力関係も含めた廃棄物の処理場に使うことくらいしか思いつきません。ただ、樺太は資源豊富ですから、これを失ったことは残念なことです。いずれにせよ、経済的価値があるから取り戻したいというのは、少なくとも四島については国益として考えない方が良いと思います。

ただし、ローカルな利害からすれば、四島であれ、二島であれ、返還されれば公共事業の特需が出ます。その意味では北海道経済にとっては、短期的には大歓迎でしょう。とくに、根室地方にとっては、沖合に浮かぶ歯舞と色丹の返還は、手っ取り早く地元の建設業者を潤しますし、観光でも、根室港が基地になるでしょうから、しばらくはおいしい話です。地元で二島返還論にそこそこ人気があるのは、もっともな話なのです。しかし、領土問題を論じるのに、地元の一時的な特需への期待で判断するのは論外です。

それでは、外交的な正義と言うことでは、日ソ中立条約を侵犯して宣戦布告したのはソ連なのですから、それに報酬を与えることはなんとしても理不尽ですし、永遠に許すべきではありません。

その意味では、樺太も北千島も四島も同じことなのです。樺太も歯舞・色丹もロシアに取られるべきものでないことではみんな同じことです。その意味では、私は、この問題を「解決」するのが良いかどうか疑問だと思っています。

もちろん、サンフランシスコ講和条約で少なくとも樺太や北千島は放棄してますから、これを取り戻すためには、講和条約に署名した国と条約改定交渉をする必要がありますがそれは可能だと思います。むしろ、決着をつけずに、何世紀でも待っておれば、チャンスはいつか来る可能性はあるのですから、ロシアとは話がつかない方がいいのではないかと私は思っています。

以上のような意味で、経済的には樺太はそれなりの価値がありますが、ほかはどうでもいいし、たいした問題ではない。そして、先の戦争でのソ連の非道を許さないのなら、樺太すら譲ってはダメなのです。サンフランシスコ講和条約で放棄したと言っても、ロシア領になることを認めたわけでありません。

しかし、ロシアと友好関係を持つのは、中国の台頭に対処するためにも、必要以上にアメリカに頼らないためにも大きなメリットがあります。

そうであるとしたら、思い切って苦渋の選択をして現実的になるのもひとつの選択です。たとえば、面積で二等分というなら二島+国後+択捉の四分の一なのですが、択捉はロシアに、残りは日本にというのも、足して二で割る解決としては妥当です。あるいは、二島は返してもらって、国後と択捉を共同管理とする方法もあります。

それから、これは、ソ連崩壊後の混乱期にはとくに有効だったはずだったはずの方策で、私は当時から、ある年限以前から現地に住んでいるロシア人には、日本領になっても特別永住権を認めるという宣伝をやったらという提案をしていました。いまでもやればいいと思います。そういうゆさぶりも大事なことです。

領土問題は「世界史」で解ける
八幡 和郎
宝島社
2014-11-06

 

「領土」の世界史 (祥伝社新書)
八幡 和郎
祥伝社
2015-11-02
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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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