絵本「えんとつ町のプペル」はなぜアマゾン1位になったのか

内藤 忍

170121Campfire2

キングコングの西野さんが書いた絵本「えんとつ町のプペル」がネット上で無料公開され、その結果アマゾンのランキングが1位になりました(写真は「えんとつ町のプペル」のクラウドファンディングのサイトから引用)。

私はお笑い芸人としての西野さんを良く知りませんし、作品も読んでいません。だから作品の評価や誰が書いたかといった絵本としての評価ではなく、書籍ビジネスとして本件を考えてみたいと思います。

ネット上では「炎上商法」とか「クリエーター殺し」といった否定的な意見も見られますが、果たしてそうでしょうか?

最初に無料あるいは安価に情報やコンテンツを提供して、さらに特別な機能やサービスを有料にするビジネスの方法はフリーミアム(Freemium)と呼ばれます。

サイトの記事の一部だけが無料で読めて、詳しく読みたい場合は有料というシステムは典型的なフリーミアムです。西野さんが導入した今回の仕組みも、無料にすることによって、広い顧客に対して認知や興味を高め、その結果として有料で販売している書籍の売上を伸ばすと言う意味で同じ手法と言えます。

これはスキャンダラスな情報で意図的にアクセスを増やそうとする炎上商法ではありません。また、無料化することで収入はむしろ増えることが期待できますからディスカウントによるクリエーター殺しという批判も当てはまりません。良く考えられたマーケティング手法と捉えるのが正しい見方だと思います。

この作品に関しては、以前も「えんとつ町のプペル展を入場無料で開催する」という目標を実現するためにクラウドファンディングでの資金集めを行ったこともあります。これも結果的には作品の認知度を高め、高い広告宣伝効果があったと想像します。

しかし、フリーミアムやクラウドファンディングといった新しい手法を使って巧みなマーケティングを実現できるのは、作者がお笑い芸人として知名度があったことと、作品自体に魅力が溢れていることが前提になります。いくらマーケティングが上手でも、作品自体に価値が無ければ、最終的に有料で購入してくれる人は多くならないからです。また、作者の知名度が無ければ、メディアで話題にされることもなく、フリーミアムにしても興味を持つ人は少なかったと言えます。

著者の知名度、作品のクオリティ、巧みなマーケティング。3つが重なり合って、ベストセラーにすることができた作品。誰でもマネができる方法ではありませんが、ビジネスのヒントがたくさん詰まった、学ぶべきことの極めて多い事例です。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年1月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。