(続)家族から家族法人へ:人類は共同体が子育てをする

2017年02月06日 06:00

家族 絆 写真AC

以前、「核家族から家族法人へ」題で、核家族は失敗したシステムだということ、大家族を現代社会で実現するには、財産権や意志決定に株式会社のような仕組みを持つ家族法人が必要だというブログを書きました。今回のブログ記事は、なぜ人類は子供を共同で育てなければならないのかということを、進化生物学の観点で考えて見ます。

チンパンジーは人間にもっとも近い種で、人間とDNAは1.2%しか違わないと言われています。ところが、チンパンジーの出産間隔は、人間より長い5年間です。これに対し、人間は2年に一度程度の間隔で出産が可能です。

実は、人類の出産間隔はかつて4年だったのが、氷河期が終わり農業が開始された1万年前あたりから2年に短縮されたことがわかっています。農業で定住が可能になり、男が狩りのために外に出る必要が小さくなったことで、夫婦が共同して子育てができるようになったためです。

人間の出産間隔は農業により短縮されたのですが、かつての4年の出産間隔でも、チンパンジーの5年と比べると短くなっています。これは少し、奇異に思えるのではないでしょうか。なぜなら、チンパンジーの赤ん坊は人間よりずっと速く成長するからです。

人間は他の霊長類と比べ巨大な脳を持つため、未熟児で生まれます。1歳に達するまで母乳以外の食物を摂るのも困難なほどなのに、チンパンジーは1歳の頃は虫を捕まえて食べるようなことはできます。自分ですぐに移動できるようにならないのは人類の赤ん坊だけです。

実は、チンパンジーだけでなくオランウータン、ニホンザルなどもほぼ独り立ちできる年齢まで母子だけで子育てが行われるようです。オランウータンの場合はもっと極端で群れから母子だけ離れて5年以上暮らすと言われています。

人類では夫婦が子育てに男が一定の、特に獲物を持ち帰ることに責任を持っていて、そのために一夫一婦制が子育て中は基本になっています。ゴリラやオットセイなどに見られるハーレムのような一人の男が大勢の女を所有するのは、農業が行われ富の集積が可能になってからです。

それだけではありません。人類は夫婦だけでなく、集団が子育てに協力します。チンパンジーの赤ん坊は生まれたてでも、母親にしがみつくことができ、母親は自由に行動することができます。これに対し、人間の赤ん坊はしがみつくことができない代わりに、一人で仰向けに寝ることができます。このような体勢をチンパンジーの赤ん坊は取ることができません。人間の赤ん坊は母親にしがみ続けなくても、母親以外の人に抱いて面倒をみてもらうことができるのです。

人類は、集団が子育てを行うことで未熟児で生まれ成長に時間がかかるにもかかわらず、出産間隔を短くすることに成功したのです。人類が、チンパンジーのように母親だけで子育てを行うのではなく、集団で子育てを行うようになったのは、いつ頃からはわかりません。しかし、出産間隔の短さは種同士の数の競争で有利なことは間違いなく、それが多くの霊長類がアフリカに留まっているのに対し、人類が世界中に広がった大きな理由になっているのではないかと推察されます。

もし、人類がチンパンジーあるいは他の霊長類のように独り立ちするまで、次の出産ができなければ、出産間隔は2年あるいは4年ではなく、10年以上になっていたと思われます。平均寿命を考えると、これでは人口が減少する、つまり長期的には滅亡する危険性があったでしょう。

人類の出産間隔がチンパンジーのように5年ではなく、4年になったことは、人口増加の面では長期的に非常に大きな影響を与えたでしょう。狩猟採集を中心としていた時代の人類は、集団が人口増加により一定の大きさを超えると、集団を分割する必要があります。分割された集団で一方の集団は押し出されるように他の地域に移動したのでしょう。このように人口増加で人類はアフリカを離れ世界中への分散して行ったと思われます。

ところで、チンパンジーを含め一般の霊長類がメスは死ぬまで妊娠可能であるのに対し、人類には閉経があります。これは人類の出産が大きな頭のため危険な難産であることから、未熟児で出産するだけでは足りず、年齢が高い女は出産のような危険を冒すのではなく、子育ての援助に回った方が種として効率的だったからだと思われます。閉経による出産数の減少は出産間隔を短くすることで補うことが可能になったのでしょう。

人類では子育ては夫婦だけではなく、集団内の他の女が負っていたと推定されます。男は狩りに集団ででかけるため、残った女は共同で子育てを行ったのでしょう。男は狩りに必要な集団での命令体系に従う傾向が強いのに、女はむしろ水平的な共同体を作ることに向いているのは現在でも見られます。

人類は進化の過程のどこかで、巨大な脳を持つために未熟児で生まれざる得ない問題を集団での子育てにより解決したのでしょう。その効果は恐らく脳のさらなる巨大化と人口増加率で他の種を圧倒するという結果になったはずです。

翻って、日本では核家族が一般化することで、出生率は下がり、少子高齢化の傾向とともに人口は減少に向かっています。核家族を止めて、家族法人のような大家族を復活する、社会福祉の充実で国全体で子育てを支えていく。方法は色々の考えられますが、このままでは人類の歴史から見れば瞬間的と言ってよいほどの短時間で日本社会は消え去ってしまいます。今、日本は、そしておそらく全世界の人類は進化の岐路にたっています。

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馬場 正博
経営コンサルティング会社 代表取締役、医療法人ジェネラルマネージャー

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