極右政党が“大躍進”できない理由

2017年05月09日 11:30

欧州で極右政党の躍進が報じられて久しいが、政権を掌握したり、大統領を輩出するといったセンセーショナルな成果はこれまでない。フランス大統領選でも極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン氏(48)がひょっとしたら大統領に選出されるのではないか、と囁かれたが、39歳の無党派エマニュエル・マクロン前経済相の前に敗北を喫し、その夢は消え去ったばかりだ。

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「国民戦線」党首のマリーヌ・ルペン氏(ウィキぺディアから)

少し振り返ってみる。オーストリア大統領選(昨年12月4日)で極右政党「自由党」のノルベルト・ホーファー氏(46)が第1回投票で第1位となり、欧州を驚かしたが、決選投票では反ホーファー網が結成され、結局は対抗候補者、「緑の党」前党首のバン・デア・ベレン氏(73)が当選した。今年3月15日に実施されたオランダ総選挙では、ヘルト・ウィルダース党首(53)が率いるオランダの極右政党「自由党」は議席こそ増やしたが、政権を奪うという当初の目標は果たせなかった。そして今回のフランス大統領選で「国民戦線」のルペン氏の敗北だ。極右政党は議席や政治力を拡大させてきたが、依然、欧州政界を揺り動かすほどの大成果を挙げることはできずにきた。

昨年11月の米大統領選でトランプ氏(現米大統領)がクリントン氏を破り当選した直後、欧州でもトランプ旋風が吹き荒れるだろうといった予想が流れた。すなわち、トランプ氏のサプライズな勝利は欧州の極右政党にインパクトを与え、大躍進するだろうという予測だった。

しかし、上述したように、欧州ではこれまでトランプ効果はあまり見られない。米国の政治と欧州の政治とを単純に並列してみること自体無謀な試みかもしれないが、ここでは「なぜ欧州の極右政党は大きなサプライズを果たせないのか」を考えてみた。

欧州ではナチス・ドイツを目撃し、多くの犠牲を出してきただけに、「極右」といえば、ネオ・ナチ政党といったイメージがどうしても付きまとい、それを払拭することが容易ではない歴史的な事情がある。具体的には、選挙戦では必ず反極右キャンペーンが展開され、メディアの攻撃にさらされる。しかし、それだけではない。

「スイス国民党」(SVP)のロジャー・ケッペル議員はドイツの討論番組の中で、「欧州ではトランプ効果は中道右派政党の右派化として現れている。極右政党は選挙の度に得票率を増やす一方、既成政党は後退し続けてきた。そこで欧州の中道右派は極右政党の難民政策を取り入れてきたわけだ」と述べている。

例を挙げてみる。オーストリア社会民主党と連立政権を構築する中道右派政党「国民党」は極右政党「自由党」の難民政策を久しく批判してきたが、ここにきて国境の監視強化、難民受け入れ制限などを言い出してきた。クルツ外相(国民党)は「自由党」の難民政策以上に厳格な政策を言い出し、強制送還の実行などを表明している。与党「社会民主党」ですら自由党の難民政策を正面切って批判しなくなってきているほどだ。

オランダの総選挙(下院)では、マルク・ ルッテ首相が率いる「自由民主国民党」(VVD)が躍進したが、ルッテ首相は選挙戦でヘールト・ウィルダース党首の極右政党「自由党」の反移民政策を凌ぐ過激な政策を主張し、オランダ社会に統合できない移民は「出ていけ」という意見広告を新聞に掲載し、話題を呼んだ。

ケッペル議員は、「ドイツのメルケル首相(「キリスト教民主同盟」党首)の政策も右派化してきた。メルケル首相は今年9月の連邦議会選挙を控え、主張を中道右派から右派化に微調整してきている」と分析する。

同議員によれば、既成の中道派政党の右派化こそ極右政党の大躍進にブレーキをかける理由となってきたわけだ。オーストリアの極右政党「自由党」のハインツ=クリスティアン・シュトラーヒェ党首(47)は、「連立政権はわれわれが久しく主張してきた政策を盗み取って、あたかも自党の政策のように主張している」と述べている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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