マンデー解説:朝日新聞 嘉幡記者の軍事研究空論

2017年05月22日 10:30

5月15日の朝日新聞朝刊に嘉幡久敬記者の署名入りで「(MONDAY解説)学術会議は軍事研究を否定したけど 米軍資金浸透、揺れる大学」が掲載された。前半では研究者一人を取り上げて米軍資金を受け入れた経緯を説明し、嘉幡記者の主張は記事の最後にある。主張を要約すると次のとおりである。

防衛省の委託研究制度は研究が厳しく管理される問題があるとして、日本学術会議は「学問の自由」を損なう恐れがある同制度を批判する声明を出した。米軍の助成も同じ。大学の研究費は、これからは寄付やファンドによる自主財源に頼るべきだ。

嘉幡記者の主張の第一点について。「軍事研究に関する新声明案にぬか喜びする朝日新聞」ですでに説明したように、研究が厳しく管理されるのは防衛省の委託研究制度だけではない。国土交通省や農林水産省も同様であり、防衛省について「政府による研究への介入が著しく、学術の健全な発展という見地から問題が多い。」という日本学術会議の声明は、軍事研究反対派へのアリバイ作りに過ぎない。

第二点について。文部科学省は毎年「大学等における産学連携等実施状況について」を公表し、最新版は2015年度である。それによると、国立大学等への寄附金の総額は720億円である。嘉幡記者は「米国のハーバード大やスタンフォード大は年に約10億ドルの寄付収入があり、独自の大学運営で知られる。」として日本も目指すべきと主張する。しかし、国立大学等を全部合わせても米国有名大学一つの寄付収入よりも少ないのが現状である。

文部科学省の調査によれば、国立・公立・私立大学すべてを合わせて共同研究の実施件数は20,821件で受入総額46,719百万円、1件当たりでは224万円である。受託研究は7,145件、総額10,960百万円、1件当たりでは153万円と計算できる。記事で紹介された研究者は米軍から5年半で21万ドルの支援を受けたが、これは国内の共同研究・受託研究のレベルを超えている。

嘉幡記者は調査不足だ。他省の制度を調べることもないし、国内大学の寄付収入についての知識もない。わが国大学の寄付収入を10倍、100倍に増やす具体策が示せない限り、嘉幡記者の主張は空論である。

Time誌によればスタンフォードの2015年寄付総額は16億ドルである。しかし、Timeの記事は、全米総額403億ドルの29パーセントがわずか20大学に寄付されたという偏りも指摘している。わが国でも主要大学に偏る同様の問題があり、これについても嘉幡記者は考えたほうがよい。

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