管理遊技機という新たな利権構想

ども宇佐美です。
今回はパチンコの話です。結構きわどい話なので慎重に書きます。

さて現在パチンコ業界の一部と警察庁では「管理遊技機構想」というものが、水面下で進められています。これは過去に「ECO遊技機」などと呼ばれた新方式遊技機構想の看板の掛け替えなのですが、今回の「管理遊技機」という名称は、現在ホール単位で管理されている個別の遊技機の情報を、「不正防止」という名目で第三者のデータセンターで中央管理する方式に転換しよう、という文脈で用いられています。これまで、個別のパチンコ遊技機はホールコンピューターとのみ繋がっており外部との接続がなかったため、しばしばホール単位で不正事案が起きていたのですが、この中央管理方式に変われば「ホールを見張る第三者の認証が介在する」ため不正を撲滅できるというのが導入側の主張です。

ただ警察庁としては、ホールの不正はそもそもホールを中心に取り締まれば済む話ですし、個別の遊技機にホール外部との通信機能を持たせると逆に外部からの不正・ハッキングにもつながりかねないため、この新遊技機構想について否定的な見解を取ってきました。もっともな指摘です。しかし今年に入り警察庁の態度が変わり始め、2017年2月に警察庁保安課は「克服課題への対処が適切になされ、射幸性の管理に資する仕組が備われば、依存防止のための施策にも成り得るので要検討」と発言し、初めて条件付きながら管理遊技機構想に前向きな見解を示しました。

こうした警察庁の急な態度の変化の背景には、ギャンブル依存症対策のための風営法の規則改正を見越した一部パチンコメーカー、パチンコ設備メーカーの強烈な働きかけがあります。当然管理遊技機なるものはギャンブル依存症対策の文脈では罹患者側が誰も求めていないことでして、一言で言えば「パチンコ業界がギャンブル依存症対策のどさくさに紛れて新たな利権構造を作ろうとしている」というところです。
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こうした流れに関しては、敬天新聞に情報が集まっている状況でして、その内容は私が認識している話と基本的には整合しています。この管理遊技機という構想を思いついたのは元エース電研社長の武本孝俊氏で、開発費用を負担したSANKYOと共に長年この構想を実現して、それぞれ設備・ライセンス料で巨額の収入を得るべく取り組んできました。ただこの管理遊技機を導入するためにはどうしても風営法関連の規則改正が必要で、そこが壁になって長年前に進まず行き詰まっていました。そこに2015年からのパチンコの釘・パチスロのサブ基板の不正問題のドタバタの結果、2004年以来ようやく13年ぶりに規則改正が行われることがきまり、これをチャンスと今警察庁にこの構想を押し込んでいるという状況です。

他方で警察庁側においてはどのようなラインで検討が進められているかということについてですが、現在警察庁OBで内閣官房副長官の杉田和博氏がギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議幹事会を仕切っており、その中で上記のように「出玉情報等を容易に関しできる遊技機の開発・導入により射幸性を抑制すること」を指示しています。そしてこれを受けた山下史雄生活安全局長と、警察庁幹部のK氏が省内外の調整を図っているようです。具体的には、省内的には遊技機管理規則を管理遊技機向けに改正する一方、管理遊技機構想を実現するとなるとあらたに個別機器を管理する第三者機関を創設することになるわけですから、その組織にあてる警察庁OB人事などを検討していると思われます。まぁ一言で言えば「天下り」のアレンジですね。

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(http://www.goraku-sangyo.com/archive.php?eid=04473 より)

ただパチンコ業界が膨大な設備投資とシステム変更が必要となる管理遊技機の実現に向けて一丸となっているかというと、決してそういうわけでもなく、パチスロメーカーは新規の投資を全く必要としない根本的な不正対策として射幸性にかかる基準を簡易にモニタリングし表示する「役比モニタ」の導入を先行して開始しています。パチスロメーカーとしてはパチンコメーカー主導で進んできた管理遊技機の導入に協力する筋合いもないですし、またそもそも不正があれば今できる最大限の対策を迅速に実行するのは誠実な態度というものだと思います。

他方でパチンコメーカーはこの役比モニタの導入を渋っており、釘確認シートなどという小手先の手で不正対策を打ったポーズだけを取っています。これは元々(検定時)の釘の配置・角度を確認できるシートなのですが、こんなものを導入しても警察や遊技産業健全化推進機構が不正を確認するのにかなりの時間を要することに変わりはなく、本質的な問題の解決になっていません。何か問題があった時にメーカーがホールに責任を押し付けるための道具になるにすぎず、不正の撲滅には程遠いでしょう。パチンコメーカーとしては役比モニタを導入してしまうと、管理遊技機を導入する目的がなくなってしまうので、渋ってこのシートで時間を稼いでいるというところが現実なのでしょう。

私は管理遊技機の導入に別に反対するわけでもありませんが、「ギャンブル依存症対策」という名目でどさくさに紛れて一部のパチンコメーカーが利益誘導を図るのは不適切だと考えています。警察庁としても、ギャンブル依存症の当事者が求めていることは「パチンコ遊技機の不正撲滅とパチンコ・パチスロメーカーに対する信賞必罰」なのですから、業界と結託して天下り先を拡大するような動きは厳に慎むべきでしょう。むしろ釘問題、サブ基板不正問題の全容解明と必要に応じて検定取り消しことやるべきことでしょう。

パチンコメーカーに関してはまず素直に役比モニタの搭載を受け入れて不正対策を実行し、それでもどうしても管理遊技機を導入したいと言うならばギャンブル依存症の当事者団体の意見を取り入れた顧客管理機能などを搭載した上で、改めて導入を図るべきでしょう。言うまでもなく業界で勝手に作ったものを「ギャンブル依存症対策」の枠組みに強引に押し込むのは百害あって一利なしです。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。