【映画評】TAP THE LAST SHOW

2017年06月20日 06:00

提供:東映株式会社

天才タップダンサーと呼ばれた渡真二郎は、舞台での事故でダンサーの命である足を痛め引退を余儀なくされる。それから30年。振付師となった今では、酒におぼれ、自暴自棄の荒んだ生活を送っていた。そんな渡のもとに旧知の劇場支配人・毛利が訪れる。半世紀の歴史を誇る老舗劇場「THE TOPS」の看板を降ろすので、その最後を飾るショウの演出を渡に依頼しに来たのだ。気乗りしない渡だったが、とりあえず参加したオーディションで、MAKOTOという名の青年と出会う。パワフルで情熱的な彼のタップダンスのリズムに、渡の止まっていた時間が再び動きはじめる…。

かつての名ダンサーが才能あふれる若手ダンサーたちとの出会いで情熱を取り戻していく姿を描く「TAP THE LAST SHOW」。「相棒」シリーズの杉下右京役で知られる俳優・水谷豊が、約40年前から構想を抱き続けてきたという物語を、自ら初監督、主演して映画化した人間ドラマだ。ショウビジネス界を舞台に、栄光と挫折を味わったかつてのトップスターが、若い世代の才能と出会い、再び生きる気力を取り戻すというストーリーは、国内外を問わず何度も描かれた手垢がついた物語。だが本作の場合、そのシンプルかつ定番のストーリーが逆に効果的だ。なぜなら、この映画の目的は、主人公が演出し有終の美を飾る、ラスト24分に及ぶ本物のタップ・ダンス・ショウを描ききることだから。

提供;東映株式会社

演じている役者は、正真正銘の本物のダンサーたちで、タップダンスの舞台経験がある彼らだからこそ、ラストの迫力のショウが、劇映画とドキュメンタリーの境をあいまいにしながら、本物として活きてくる。ダンスシーンが連続24分というのは破格の長さなのだが、タップダンスの映画なのだからさほど違和感は感じない。特に、劇場経営に、雑用に、支配人や渡の身辺に配慮してきた、事務員兼受付嬢が、華麗なる姿をみせてくれる場面には引きこまれた。あえて不満な点を言えば、天才ダンサーのMAKOTOは、心優しい普通の青年で、すべてを投げ出してもタップにのめり込む狂気がいまひとつ伝わらないことだろうか。ともあれ、監督・水谷豊の本気を感じさせる1本に仕上がっている。
【60点】
(原題「TAP THE LAST SHOW」)
(日本/水谷豊監督/水谷豊、北乃きい、清水夏生、他)
(エンタテインメント度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年6月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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