説得の力学と人間関係の悩み

2017年11月07日 06:00

説得という行為は、ある人の心に作用を及ぼして、その人の心の状態を自発的に変化させることです。

例えば、特に目的を持たずに電気量販店のパソコン売り場にやってきた人がいるとしましょう。店員さんが話しかけて、結果としてその人がA社のパソコンを買ったとしたら、その人の心の状態は「なんとなく眺める」から「A社のパソコンを購入する」という状態に変化した訳です。また、「B社のパソコンを買おう」と思ってやってきた人に対して、店員さんが説得して「A社のパソコンを購入する」という状態に変化することもあります。

このように、説得という行為は、ある人の心の状態を自発的に説得者の意図した方向に変化させることなのです。

もちろん、拳銃や刃物を突きつけて脅せば、結果としてA社のパソコンを買わせることもできるでしょう。しかし、これは無理やり買わせているのであって、相手の心の状態が自発的に変化した訳ではありません。

自発的に心の状態を変化させるわけですから、当然のことながら、変化させることが不可能なケースも多々あります。

例えば、親が株式投資に失敗して破産したため、絶対に投資商品は買わないと心に固く決めた人に投資信託や株式の購入を勧めても、相手の心を動かすことはできないでしょう。

昔、犬に噛まれて怖い経験をした人に「犬を飼いませんか」と説得するのと同じですから。
このように、説得不可能という状態は世の中には本当にたくさんあります。

世の中の営業マンやその上司たちが、「絶対に動かせない相手」に執拗にアプローチしているのを見ると、「さっさと諦めて別の相手にアプローチしないと莫大な機会損失になりますよ」と言いたくなることが、ままあります。

そして、ここが肝心なのですが、人間は本来保守的性質を持っているので、心の状態を変化させるためにはそれなりの力が必要です。小さな小石を転がすためにも相応の力を加える必要があるように。

先述のように、拳銃や刃物を突きつけて外部から力を加えたのでは説得になりません。
心の状態を動かす力は本人の「こうしたい」という気持ちから生まれるのです。
つまり、説得というものは、あくまで本人「こうしたい」と思うためのきっかけを作るだけであって、最終的に心の状態を変化させるのは本人自身にほかならないのです。

拙著「説得の戦略」は、相手本人に”気分良くスムーズに”決心をしてもらうための方法論を説いたものです。ですから、絶対に動かせない人は潔く諦めることをお勧めしています。
そういう意味では、「すべての人を納得させる…術」とか「100パーセント成功する会話術」というような類の本や講座は(言葉は悪いですが)間違いなくインチキでしょう。

一般論として、10人いればそのうちの5人が自分の意見に賛同してくれれば、かなりいい方ではないでしょうか?

50パーセントの確率を70パーセントくらいまで上げることができればとても有益なノウハウです。

人間関係も同じです。
相性のいい人が半分もいれば上出来!大抵の人は、自分にとって相性の悪い人の方が割合的に多いのが事実です。

だから人間関係の悩みが尽きなくて当たり前なのです。
自分だけが不幸だと思う必要は毛頭ありません。

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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