子宮頸がん検診をすれば、ワクチンは打たなくて良いのか?

2018年01月17日 08:00

 

都民ファースト都議の方が、基本的な「副反応」の定義も分からないまま、反ワクチン運動に絡め取られそうになっていので、以下の記事を書いたところ、多くの方から反響を頂きました。

都民ファーストが反ワクチン脳になりかけている件

その中で、中央区の青木かの区議から「検診を受ければワクチンなんて要らない!」という反論を頂きました。

ありがちな誤解なので、再反論をしたいと思います。

今回もまた正確さを期すために、ワクチンに詳しい内科医の久住英二医師に監修を頂き、その他複数の医師の方からもチェックを頂きました。

そもそも検診って?

子宮頸がん検診は、産婦人科に行くと受けられます。内診台で腟の奥にある子宮頚部の細胞を綿棒でこすり取ります。これによって、子宮頸がんあるいはその前段階である「異形成」を「早期発見」できます。

出典:国立がん研究センター https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/uterine_cancer.html

「早期発見」したら、その後に病変部分だけを切り取る手術(円錐切除術)等を行えるので、受けた方が良いことは間違いありません。

では、本当に地方議員さんの言うように、「ワクチンよりも検診を」なのでしょうか?

検診は「予防」できない

検診はたしかに「早期発見」できます。けれど、当然ながら「予防」はできません。

ちょっと想像してみてください。全てのガンがワクチンで予防できるようになった時に、「検診で早期発見すれば良い」とあなたは思いますか?

少なくとも僕は思いません。

「発見できたは良いけど、手遅れになったらどうしよう?

「発見できて手術で治るかもしれないけど、手術にリスクはあるよね」

と思います。

ガンにならないなら、ならないに越したことはないですからね。

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)も同様です。

発見して運良く早期発見で、手術で治る人もいますが、発見が手遅れになる可能性だってあります。

さきほど「もし全てのガンがワクチンで予防できるようになったら」と言いましたが、子宮頸がんだけは、ありがたいことにワクチンで予防できるようになっているのです。

検診の受診率は非常に低い

子宮頸がんの検診受診率は4割です。青木区議の選挙区の東京都中央区はたった 25 % です。

「検診で良い!」と言ってるなら、なぜ彼女は、地元の区民の検診の受診率を上げないのでしょうか?

それは人々を定期的に、しかも数十年に渡って検診を受け続けるように動機づけるのは、非常に難しいためです。

それに比べて、ワクチンは 3 回打てば、約 7 割の子宮頸がんを予防します。どちらが容易か、明らかです。

といっても、ワクチンは7割の予防率なので、後の 3 割のリスクに備える必要はあります。そのために、検診を「重ねて」受けていくことは、さらなるリスクの低減には意味があるでしょう。

つまり「ワクチンも、検診も必要」なのであって、「ワクチンより、検診を」ではないのです。

ワクチン接種率が上がることで検診も受けやすく

HPVワクチン先進国のオーストラリアを見てみましょう。

オーストラリアでは、2007 年 4 月より開始した HPV ワクチンプログラムの成功によって、当時 12~17 歳でワクチン接種を受けた女性の 3 回接種率が約 70 % と高率です。

それによって、子宮頸がん感染率も 3 回接種者の場合は 93 % も下がりました。

引用: 横浜HPVプロジェクトhttp://kanagawacc.jp/vaccine-wr/81/

そうなったことで、定期検診の頻度も、2年に1回から5年に1回に下げることができました。

http://www.cancerscreening.gov.au/internet/screening/publishing.nsf/Content/cervical-screening-1

検診の頻度が下がれば、検診を受ける人たちの負担も減り、より受けやすくなるわけです。

ワクチンを打つ人が増えていけば、より検診も受けやすくなる、という好循環を生み出せるのです。

なぜ今またHPVワクチンなのか?

青木区議は僕に問いました。「なぜ今またHPVワクチンなのか」と。

答えは明確です。人が死んでるからだ、と。

現在、毎年 2,900 人の女性達が子宮頸がんで亡くなっています。

20 代・30 代の女性のがん死亡率の1位は、この子宮頸がんです。

だからこそ、子宮頸がんはマザーキラーと呼ばれているのです。

そして危うく命は助かったとしても、「発見」する時期が遅れて毎年1万人の女性が子宮を摘出されています。子宮がないだけで、普通に暮らせると言うことではありません。リンパ浮腫という下半身がひどく浮腫むような病気も合併しますし、卵巣も一緒に摘出されれば若くして更年期を迎えます。もちろん子宮を摘出された女性はもう妊娠することはできなくなってしまいます。

しかし、このマザーキラーは、本当に幸いなことに、ワクチンで約7割が防げます。現在医薬品医療機器総合機構(PMDA)で審査中の新ワクチン「ガーダシル9」では、その確率は 9 割に上がります。https://www.gardasil9.com/

命を、助けられるのです。

一方で、科学的には決着が付いているにも関わらず、政治運動の結果、HPVワクチンの積極的な推奨は止まり、例えば、札幌市では 70 % までいった接種率は 1 % 以下にまで下がりました。

札幌市のHPVワクチン接種率 http://kanagawacc.jp/vaccine-jp/123/ より

そのツケを払うのは、今の 10 代の子どもたち、あるいはもっと小さな少女たち、そしてこれから生まれてくる子どもたちです。

引用: 横浜HPVプロジェクトhttp://kanagawacc.jp/vaccine-jp/130/

今のまま放っておいたら、今以上に人が死ぬのです。

一刻も早く、ワクチン接種の推奨の再開しなくてはいけないのに。

これが、間接的な「子ども殺し」でなくて、何なのでしょうか。

地方議員の方々が、統計情報にも原文にも専門家の方々にもあたらず、感情と感性だけで政策を決めようとしていることに、強い憤りを感じてなりません。

議員に望むこと

Evidence Based Policy Making(EBPM = 根拠に基づいた政策づくり)という言葉があります。各国では、エビデンスをしっかりと測定して、それに基づく政策づくりをしようという動きがあります。

日本では、この地方議員に見られる通り、Evidenceではなく、Emotion(感情)やEpisode(物語)をベースに政策を語る人が多々いることは、自民党の平将明議員も指摘するところです。


我々市民ができることは、熱い思いを持っているというだけでなく、しっかりとエビデンスを調べる、つまり謙虚に勉強する議員を支持していくことなのだと思います。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年1月15日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。

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駒崎 弘樹
認定NPO法人フローレンス代表理事

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