無人化AIショップにバラ色の未来を描いてはいけない --- 昆 正和

2018年01月28日 06:00

NYに開店したAmazonGo(Wikipedia:編集部)

アマゾンの本社の一角に無人のショップがオープンした。Amazon Goストアと呼ぶらしい。

まず消費者は、アマゾンのサイトから無人ショップを利用するためのアプリをスマホにダウンロードする。あとはショップに行って入り口でスマホをかざし、好きな商品をピックアップし、店を出ればよいのである。店員もおらず、レジもないから支払手続きをせずに文字通りそのまま外に出るだけだ。

「これだと、ほとんど万引きと変わらないなあ。本人は店を出る時に後ろめたい気分になりはしないのかな?」などど私は思ったものだ。

もちろんこの自動システムには購入者と購入者が手にする商品をリアルタイムかつピンポイントで追跡するためのカメラとセンサーがさまざまな角度から設置されていて、それをAIが処理するのである。店内に何人もの客が複雑に入り乱れていても大丈夫。一度手にしたあと棚に戻した商品はアプリのショッピングカートから自動削除される。

ある消費者は「商品を買うのにわざわざ並ばなくても済む」と利便性を強調する。しかしアマゾン側からすれば、もっと現実的なメリットを期待してのことだろう。人件費の削減と犯罪(万引きや強盗)による商品の損失防止だ。

世界広しと言えども、こんな仕組みを実現したのはアマゾンぐらいのものだろうと思っっていたら、他の企業も参入に乗り出しているから驚きだ。例えばスウェーデンの企業は移動式の無人AIショップで食料品や薬を販売するシステムを開発し、中国で試験運用しているという。

もしこれから、世の中に、このような無人AIの店舗があちこちにできたとしたら、私たちの暮らしや行動にどんな影響が出てくるのだろう。この手の「無人化」に、必ずしも明るい未来があるとは限らないことは、だれもがうすうす感じていることではあると思う。

例えば、人員削減の優等生として企業社会にもてはやされる一方で、失業率が増加して慢性的な不景気が続くようになるのではないか。かつては企業の海外移転によって失業して困っていたのは製造業の従業員たちだったが、今後は小売りをはじめとする一般サービス業にもその影響が出るかもしれない。

困るのは職を失った店員さんたちだけではない。利用者の私たちだって困る。無人の店内で黙ってカウンターの前に座れば、即座にベルトコンベアーに乗って出てくる牛丼やカレーライス。あまり食欲そそられないよなあ。養鶏所の自動給餌装置の前に座っているみたいじゃないか。

また、商品の代金を支払うという手続きがまったくない、という危うさも気になる。現金にしてもクレジットやタッチ式の電子決済にしても、レジの前に並んで待っている間、店員さんと対話している間というのは、目についたものを次々にストレート買いしてしまうのを防ぐ働きがあるようにも思える。例えば筆者などは、書店で本を5、6冊衝動買いしそうになる時があるが、並んで待っている間に「本当にこれでよいか。こっちの本は後回しでもよいのではないか。今買わないとダメなのか?」などと自問自答して考えなおすことができる。

無人のショップにはそれがない。まさに「目についたものを次々に衝動買いしてくださいね」と奨励しているようにも見える。昨今は通販サイトで買いまくり、家の中が商品であふれかえっている人もいると聞く。そんな人たちは無人ショップの恰好のターゲットにもなり得るだろう。注意しないと月に何十万円も引き落とされている明細が届いて驚くことになるかもしれない。お金を使った感覚の残らない生活には、とくに庶民にとっては大きなリスクが伴う。

そして最後に、最も危険で現実的な脅威。それは災害が発生した時、そしてあなたのスマホに無人ショップ用アプリの機能を狙ったウイルスが侵入した時ではないだろうか。停電、地震、火災、暴動、テロなどが起これば、無人ショップは人がいないだけに恰好の攻撃対象になるだろう。シャッターを下ろしたぐらいではダメである。あっという間に全商品がやられてしまう。ウイルスなどは、想像もつかない形で私たちをリスクに曝す可能性があるように思われる。

こんなネガティブなことばかり考えていたら、バチが当たるよとあなたは言うかもしれない。が、無人化を目的としたAIについては、少し割り引いて未来を期待した方がよさそうだ。世の中、人が介在することで予想外のリスクが生じることもあるが、人がまったく介在しない社会というのは、それ以上に未知のリスクが潜伏しているように思うのである。

昆 正和(こんまさかず)BCP/BCM策定支援アドバイザー
東京都立大学(現首都大学東京)経済学部卒。9.11テロでBCPという危機管理手法が機能した事例に興味を持ち、以来BCPや事業継続マネジメントに関する調査・研究、策定指導・講演を行っている。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑