【映画評】ダウンサイズ

2018年03月05日 11:30
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近未来。爆発的な人口増加で食料・資源不足が深刻になり、人間を縮小することで問題を解決する人類縮小技術が実用化された。片田舎に住む平凡な男ポールは、身長を13cmにすれば資産は82倍、レジャーランドと呼ばれる特別エリアで豪邸に住めると知って、妻オードリーと共に夫婦で小さくなることを選択する。さまざまな準備を経て、晴れて14分の1のサイズになったポールだったが、そこで思いもよらない事実を知らされる…。

人類縮小計画に参加した男が直面する思いがけないドラマを描く「ダウンサイズ」。人間を小さくすることで、食糧・資源不足や住宅問題、経済格差などの問題を解決するというのは、突拍子もないようでいて妙に説得力がある。さらに人を縮小するにあたり、全身の毛を剃ったり、歯などの金属の詰め物を取り除いたりの手順も細かくて、これまたリアル。小さくなってからの暮らしもまた詳細に描かれていて面白い。身長13cmになったポールは、予想外の事態によって孤独に暮らすことになるが、そこで出会うのは、怪しげな隣人や、過激なベトナム人女性活動家(現在は清掃員)らだ。彼らとの出会いが、ポールを思いもよらない運命へと導いていく。

アレクサンダー・ペイン監督は、「サイドウェイ」や「ネブラスカ」などで、市井の人々のささやかだがかけがえのない幸福を丁寧に描いてきた。本作もまた、人生とは、幸福とは、という問題を提示している点は共通している。だが人類縮小計画というユニークな設定がいかされているのは前半で、後半は縮小の問題ではなく、貧困や政治・経済、環境問題へとどんどん話が広がっていき、ついには終末論へと飛躍していくので、どうにも違和感を感じてしまう。これ、何のお話でしたっけ??という疑問がわいてくるではないか。マット・デイモンは好演だが彼が演じる主人公に魅力が乏しいのも残念。いっそ、2つの別々の映画に分けた方が良かったのでは?とさえ思う。そんな不満を払拭するのは、英語が不自由ながら強い意志を持ったベトナム人女性活動家役のホン・チャウの魅力だ。彼女の名コメディエンヌぶりを発見できたのは、本作の最大の収穫だった。
【65点】
(原題「DOWNSIZING」)
(アメリカ/アレクサンダー・ペイン監督/マット・デイモン、クリストフ・ヴァルツ、ホン・チャウ、他)
(詰め込みすぎ度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年3月4日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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