朝日新聞の安倍倒閣の宿願が近づき、憲法改正も電波改革も黄信号

2018年03月14日 06:00

首相官邸サイトより

朝日新聞の報道で火がついた財務省の決裁文書改ざん疑惑は、同省が認めたことで決着がついた。これにより、安倍政権は2012年12月の発足以来、最大のピンチに陥った。直近の政治日程では、佐川氏の証人喚問、麻生財務相の引責辞任が予期されるが、よほどの起死回生となる展開がない限り、安倍首相は、9月の総裁選を乗り切るだけの政治的な残存体力は使い尽くしたように思える。

朝日新聞による“起死回生のカウンターパンチ”

十数年に渡る「安倍 VS 朝日」の因縁のバトルという視点からすれば、安倍首相が昨年5月に憲法改正を目指す方針を打ち出した時点では、9条を死守したい朝日新聞はたしかに“KO寸前”に追い込まれていた。しかし、特報部や社会部系の記者たちが諦めなかった。1年余りに渡る「モリカケ」キャンペーンによる壮絶かつ執拗な追及を続けた結果、検察関係者からのリークとみられる財務省の疑惑情報をゲットするラッキーな展開となり、まさに最終ラウンドでの起死回生の逆転カウンターパンチを食らわせることに成功した。

先日の私の記事『財務省が「有罪」なら、朝日新聞の挙証責任は一層重い』は、朝日新聞が検察(or財務省)関係者との“共謀”による証拠提示不足の「怪文書未満」ともいえるスクープ報道で、安倍政権倒閣への筋道をつくることの弊害を説いたところだが、アゴラで10万近いPV、ヤフーニュースでは40万PVを超える反響があった。賛否がくっきり別れることは想定通りだったが、「親安倍VS反アベ」で二極化するいまのネット言論空間においては、私の言説は「安倍マンセー」に見えるらしい。

念のため確認しておくと、私が批判しているのは、不当な世論操作への道を開く朝日新聞の報道「手法」だ。朝日新聞が証拠を部分的にでも提示する努力をしない限り、その問題点は、たとえ最後の1人になってでも私は言い続けるが、朝日新聞が政権の不祥事を暴き、G7の一員とは思えない危うい公文書管理の実態を暴くきっかけを作った「結果」は、尊重している。情報の出し方や、リーク元との癒着などの弊害はともかく見事な大スクープだ。2018年の新聞協会賞は早くもこれで決まりと言っても過言ではないだろう。

首相の油断を初めて感じたGINZA SIXでの発言

GINZA SIXの開業式で挨拶する安倍首相(官邸サイトより)

そして、これも前回の記事に対する不当な中傷や誤解を解くためにも言っておくが、一番悪いのは、宿敵の朝日新聞に突っ込まれるような事態と、痛ましい職員の犠牲者まで出す結果を招いた官邸首脳部、および佐川氏らの財務省サイドだ。そもそも、危機の萌芽は、森友学園問題が表面化した昨年2月の時点であったわけで、後ろ暗いことがなかったのであれば、すべて開示しておくべきだった。

ところが、首相や官邸首脳部は、野党に政権担当能力が皆無な「一強」状態が続いたことで、奢りや緩みがあった。最初に私が首相の油断を覚えたのは昨年4月の報道だった。GINZA SIXの開業セレモニーに来賓で訪れた首相は、当時、話題になり始めた「忖度」の言葉をこんな風に取り上げた。

あいさつ原稿に沿って施設で扱う大阪や京都などの各地の物産を紹介していたが、山口県の物産が触れられていないことに気づいた首相。「原稿には残念ながら山口県の物産が書いていない。よく忖度してほしい」と語り、会場の笑いを誘った。(出典:日本経済新聞2017年4月18日朝刊『首相、地元物産「忖度」を 山口県産品の宣伝求める』

言うまでもないが「忖度」は首相にとってネガティブワードだ。機転を効かせたつもりだろうが、野党や朝日新聞などの反安倍の人たちを無駄に挑発したのは軽率だったともいえる。

なぜ私が危うさを感じたのかといえば、首相の心境に微妙な変化を垣間見たからだ。二次政権発足から2年間は、2009年の野党転落の反省から政権運営は慎重運転に徹していた。実際、最初の2年近くは、不祥事による閣僚交代はなく、同一閣僚内閣としての戦後最長記録をつくりだした。

また、「美しい国」の標語にみられる一次政権時代のように、いかにも右派的なキャラから脱皮。それまでのイメージにはなかった経済政策を全面的に掲げるなど、「自分がやりたいことより、国民が望むことに冷静に徹した」ことで支持層の幅を広げ、失業率低減などの一定の成果を出したことが、最大の復活要因だった。

電波改革への前のめり発言にも感じた油断

野党が戦後最弱の状態にも助けられ、昨年はふってわいたモリカケ問題も致命傷は見つけられなかった。しかし、再び安倍首相に「油断」を感じたのは、電波改革を巡る発言だ。通常国会では、所信表明演説で史上初めて電波改革を盛り込んだことに驚かされたが、よせばいいのに、新経連の新年会などでことあるごとに「電波においても思い切った改革が必要だ」などとも再三強調した(NHKニュースより)。

いま俎上にあがっている電波の改革問題は、2020年に始まる5G時代や、IoTや自動運動などで電波需要の激増が予想されることへの対策の必要性が大きい。既存免許を持つテレビ局には電波の帯域整理などの手間暇をかける影響くらいで、むしろビジネスチャンスがある話だが、一部の右派評論家らの記事のせいで「電波オークションをやれば新規参入を促し、偏向報道のテレビ局を追い出せる」といった誤解が広まっている。

首相も誤解しているのか、あるいは支持層が誤解しているのを利用したのか、モリカケでテレビ局に追及されたことによるけん制のつもりだったのか。首相は、所信表明演説のあとも「放送の改革」を声高に叫び、既存免許業者であるテレビ各局、あるいは各局と資本関係にある大手新聞各社を、無駄に警戒させてしまったようにも感じていた。

このまま朝日新聞の勝利、安倍首相の敗戦になるのか

二次政権が発足した頃の首相なら、もっと緊張感をもって慎重にコトを進めたであろう(発足まもない政権にできる問題でもないが、比喩として)。IoT等のSociety5.0時代に備えた電波改革の必要性を丁寧に周知し、マスコミ側の理解を得ようと務めたのではないか。しかし年明けから「放送の改革」を声高に叫ぶ首相は、デリカシーがあきらかに足りなかった。

憲法改正も、電波改革も政治主導、官邸主導でないと霞が関を動かせない。しかし決裁文書改ざん問題で倒閣に現実味が増したことで、一度は視界がひらけていたはずの難題は、急速に不透明感が増している。護憲平和路線を死守し、テレ朝との株持ち合いをする朝日新聞にとって、安倍政権打倒の悲願は目前になってきたが、安倍首相はこのまま「逆転KO負け」を喫してしまうのだろうか。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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