財務省の改ざんリークは、尖閣ビデオ漏洩と同じく捜査すべきでは?

2018年04月13日 18:30

衆議院インターネット中継より:編集部

毎日新聞は13日朝刊で、財務省の決裁文書改ざんを捜査していた大阪地検特捜部が、佐川前国税庁長官の立件見送りの方針を固めたと報じた。「決裁文書から売却の経緯などが削除されたが、文書の趣旨は変わっておらず、特捜部は、告発状が出されている虚偽公文書作成などの容疑で刑事責任を問うことは困難」(記事より)のだという。

私は法律のプロではないのでなんらかの形で佐川氏が立件されるのではないかと予想していたが、一方で、朝日新聞が3月9日付で第一報を出した直後から、刑事責任の立証が難しいとの見方も報じられていた。もちろん、だからといって佐川氏ら財務省職員による公文書改ざんは国民を欺いたことになり、絶対に許されるものではない。

捜査のプロ中のプロがいまさら立件困難と判断した不可解

しかし、法律論として切り分けた時、法曹エリート中のエリートである特捜部が、立件が難しいことを全く予期していなかったのか、このタイミングでの毎日へのリーク報道には非常に疑問が残る。朝日の報道があってから捜査をはじめたのであれば、そういう「ストーリー」は成立するが、森友学園の土地取引疑惑は弁護士らが昨年9月に告発し、検察側が受理している。当然、捜査は、昨年からのことだ。

しかも日経新聞が朝日報道から4日後に報じたところでは、特捜部は、「疑惑が表面化する前に大阪地検特捜部が書き換えを把握し、財務省職員に経緯の説明を複数回求めていた」とされる。捜査のプロ中のプロである特捜部が、改ざん自体の違法性への見通しを少なくとも1ヶ月以上も全く持っていなかったのか、時系列的には、ますます疑問が浮かぶ。

これが特捜部捜査の都合だけで終わる話ならよい。問題は、朝日新聞のアノ中身が全く開示されていない改ざんの証拠の出処が、特捜部ではないかと以前から疑われていることだ。この新たな疑惑を深めたのは先日のネット上の事件だ。周知の通り、先日、江田憲司衆議院議員がツイッターで「大阪地検の女性特捜部長のリークがどんどん出てくる」などと“暴露”して大炎上。江田氏はその後ツイートを削除し、「言葉足らずだった」と釈明したが、これが江田氏の迂闊な思いつきでなかったとしよう。文書改ざんの立件可能性が難しいことを予期できるだけの見識をもっているわけだから、なんのために特定の報道機関に改ざんの事実をわざわざ伝えたのだろうか。

リーク報道などというブラックボックスから発された非民主的な情報により、倒閣への世論が形成されることは当然わかっていただろう。もし本当に特捜部長が朝日にリークしたとなれば、最初から立件筋悪なのは分かっていて陰湿な工作をする気だったのではないか、と非難されても仕方あるまい。

毎度のごとく私が書くと誤解をして逆批判する左派連中などがいるが、当然、公文書改ざんは法的にグレーだったとしても民主主義国家の行政機関としてアウトだ。この問題の真相を解明し、もし安倍政権が、野党や朝日新聞が期待するような首謀者であったなら、潔く政治的責任をとるべきであることは言うまでもない。

しかし、同時に忘れてもらっては困るのは日本は法治国家である。公文書改ざんは公益性の絡む重大な問題である一方で、リークという不透明なプロセスによって、民主的手続きを経た政権を倒すというのは「反則技」にすぎない。立件が筋悪でも、公益性が例外的に高い案件であるならば、関係機関への通報や記者会見をして、堂々と公明正大な手順を踏むべきだ

尖閣ビデオ事件で告発した海保職員は捜査された

ここで思い出したいのが、2010年の尖閣諸島沖で起きた中国漁船の衝突映像が流出した事件だ。海保の巡視船に中国漁船が確信犯で衝突した事件で、その生々しい様子はビデオ録画されていたが、当時の民主党政権は日中関係の悪化を懸念して公開を躊躇した。しかし、海保職員なら誰でも閲覧できる状態だったため、国益・公益性から憤激した神戸市の第五管区勤務の職員がYouTubeにアップロード。瞬く間に全国民が尖閣沖で何がおきたのかを把握するに至った。

私自身はこの職員の行為は公益性が十分あったと思うが、しかし法的には、国家公務員法で定める守秘義務に違反したのは間違いない。問題発覚後、自ら組織に「犯行」を名乗り出た職員は、警視庁の捜査を受け、逮捕こそ見送られたが、書類送検された。結局、検察は起訴猶予処分にしたが、職員が自主退職したことや、国民感情に配慮したことなどを判断してのことだったろう。しかし、この海保職員に対する捜査を通じて、情報が漏洩したプロセス自体の解明が試みられたことに変わりはない。

ここで私が言いたいのは「それは、それ。これは、これ」だ。公益性を守るためだからといって、正道ではなく邪道でやってしまえば、法治国家の存立は危うくなる。特捜部長が、朝日新聞にリークしたのかどうかはわからないが、少なくとも、公にされていない財務省の文書が改ざんされたことを知りうる立場にあったのは、検察など公的機関に所属する者の誰かだ。私のような考え方に対し、形式論に過ぎるという批判がありそうだが、そもそも、守秘義務違反によるリーク報道という、疑義をもたれるような形式で世論を扇動し、実態解明よりも政局的な目的を遂げようとする手法が筋悪なのだ。

海保の職員は社会的制裁を受けた一方、検察関係者とみられる情報源の流出には何もお咎めがないのだろうか。本稿に「政権をかばうためにひどいことを言う」などと詰る輩がいたら、「貴殿は、法治国家の重要性を知らない、ただの情弱だ」と申し上げておこう。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑