加計、森友学園や、自衛隊の日報隠蔽の問題で11日に行われた衆院予算委員会の集中審議が行われた。これについて、夕刊フジに「安倍政権 VS 野党、低レベル論戦に失望」という記事を書いた。
その内容は、産経グループの電子メディア「ZAKZAK」に転載されているが、ここでは、限られた字数では書き切れなかったことも含めて少し敷衍しておく。
水曜日の衆議院の集中審議には、正直言って、あまりにレベルの低い論戦に悲しい思いをしたのは、私だけではあるまい。野党議員の追及は柳瀬秘書官が会ったかどうかとか、財務省の末端の職員がどう言ったとか、本質から外れたものである。いずれも、もし、野党が疑っているような事実があったとしても、「それが何だ?」と言いたい。
一方、安倍晋三首相をはじめ、政府側の答弁も、尻尾をつかまれないことばかり考えていただけのことで、国民にもう森友・加計はいいのではと感じさせるにはほど遠く、むしろ、イメージ低下は免れないものだった。
このままでは、安倍内閣の支持率回復はなかなか難しいだろう。憲法改正どころではなくなるが、とはいえ、誰も「野党に代われ」とは言わない状態が続きそうだ。
当時首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官は「会った記憶はない」と最初からいっている。面会を完全否定していないのであるから、昨年から、多くの人は「会ったのだろう」と思っている。
だから、会ったということの可能性が高くなっても、別におおごとではない。最初から「会ったような記憶もあるが、ご挨拶に来られて、秘書として普通の形式的応対をしただけの場合は、子細に覚えてないのが普通だ」とでもいえばいいだけのことを、記憶にないと一言でかたづけたからというからややこしくなったのである。
もし、愛媛県のメモのラインで柳瀬氏が応対したからといってもなんの問題もない。一般的にどういうようにすれば、プロジェクトが採用される可能性が高いか語り、二つの制度のうち新しい制度のほうが勢いがあって良いかもしれないといってどこが問題なのか。首相案件というのも、なんとかしてやろうという強い意志が感じられるような話の中身でないのだから、野党や朝日新聞が期待しているような内容であり得にくいのではないか。
いずれにせよ、このあたり、太田充理財局長なら柳瀬氏よりは、もう少しましな答弁をしただろうと思う。
昭恵首相夫人付だった谷査恵子氏もそうだが、政治家の秘書は何も約束しないまま、少し気の利いたアドバイスをして、「頑張ってください」と言うものだ。また、「先生も承知して頑張って実現させてくださいといっておられます」くらいは、秘書のリップサービスとして本当でも嘘でもいうものだと思う。私もそういう場面にはなんども遭遇している。
野党側の「アッキード事件」という印象操作がいただけないのは、すでに「アッキードとロッキード:山本太郎の印象操作術」で書いた通りだ。「ロッキードは3億円、アッキードは8億円」などと吹聴しているが、ロッキード事件の賄賂額は3億円でも、全体は数千億円の案件だ。森友問題とは比べものにならない。
しかし、それにしても、安倍首相の答弁もお粗末だ。「愛媛県の文書なのでコメントは差し控える」「柳瀬氏の発言を元上司として信頼している」「国家戦略特区諮問会議で決定した」という繰り返しでは、国民も好感は持てない。
ここは、昭恵氏が自ら説明するとか、安倍首相が「私や妻が関わっていたら辞める」と言ったことが混乱を招いたことを、少なくとも支持者にはわびてはどうか。また、柳瀬氏なども、「同席したという人のお話もいろいろお聞きして、そのような方にお会いしたかもしたのではないかという気がしてきた。しかし、あのときの時点では….」と具体的にどう扱うことをうんぬんする段階でなかったのだから、一般的なアドバイスとリップサービス以上のことをするはずないことは、その後の経緯からも明らかだとでも言うべきだろう。
コアな野党支持者は何を言っても無駄だし、コアな首相支持者は逃げないだろう。ただ、真ん中の3分の1くらいは、正直に説明してわびてくれたら、「やっぱり安倍首相だ」となると思う。しかし、そういう人まで反対側に追いやるようなマネは止めた方がよい。
それから、一連の経緯で印象的なのは、普通の総理だったら政務の議員秘書がやるような陳情の処理や総理や夫人の個人的知り合いとの接触まで役所から来ている秘書たちがしていることだ。安倍晋三事務所は、よほど、この手の陳情案件を扱うのが苦手と言うことなのだろうか。