高齢者の最低賃金引き下げは悪手か

城 繁幸

なんだか国民民主党の玉木代表が左翼の皆さんにバッシングされているようなので何を言ったのかと思えば「人生100年時代、高齢者が最低賃金以下でも働けるようにします」と言ったのがリビドーに触れたみたいですね。

【参考リンク】国民民主・玉木代表「高齢者が同意すれば最賃以下で働ける特例必要」で物議

どうも左翼のお友達たちは高齢者の最賃を下げると「最賃以下で労働市場に殺到する高齢者のせいでコンビニとか他のバイトも置き換えられ、日本が総貧乏になる」と連想しちゃってるようです。でも普通はそんなことにはならないはずです。理由は最賃以下の仕事と時給1200円とか1500円の仕事はまったく別の仕事だからです。

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たとえばいま東京都の最賃は985円ですけど、ある日突然、時給1200円でファミレスで働いてる人のところに店長が新人連れてやってきて「紹介しよう、最低賃金で採用した新人の山田くんだ。そしておまえは今日でクビだ」みたいなことになってましたっけ?全然なってないわけです。

東京都の最低賃金985円の仕事で働いてる人はどこかにいるのかもしれませんが、それぞれ別の仕事なんだから置き換わったりはしません。そしてそれぞれの時給は市場メカニズムで決まるわけです。

千歩譲ってそんなアグレッシブな店長がいたとしても、時給985円の山田くんはこう言うでしょう。

「ちょっと待て、だったら俺にも時給1200円払えよ。じゃなきゃ働かないぞ」

どうもリベラルの皆さんは「労働者は鎖につながれていかなる拒否権もない奴隷なのだ」って妄想してるらしいですけどそれって昔のソ連くらいしかありえませんから。お願いですから21世紀にもなってソ連基準で物事を判断するのはやめてください。

それでも「最低賃金は市場メカニズムに勝る」と考える人は、左翼のみなさん大好きな韓国の文政権が体を張って実証してみせてくれているので参考にしてくださいね。韓国の低賃金層はひどいことになっていますが、日本の左翼の皆さんが目を覚ますきっかけになれば彼らも本望でしょう。

【参考リンク】【社説】「所得主導成長」の誤り、文政権内に直言できる人はいないのか

一応フォローしておくと、ものすごい不況がきて若者と高齢者が仕事を直接奪い合うような状況なら、高齢者のせいで時給が下がることもあり得るかもしれません。上の例でいうと、時給1200円のパートが「じゃあ時給1100円に下げてもいいから働かせてください!ほかに仕事なんてないんです!」と食い下がらざるをえないような過酷な状況ですね。

でもだからといって「体力のない老人が普通より安い賃金で働くのは俺ら健康な労働者の足引っ張るかもしれんからダメだ!」っていうのはホントにリベラルなんですかね?筆者には単なる強者のエゴにしか見えませんけど。

年齢にかかわらずだれでも働きたい人は自分が納得した賃金で働けるようにして、その中で賃金の上がる人下がる人がいる社会と、年齢や能力を理由に特定の集団を排除して競争を抑える社会って、どっちが健全なんですかね。後者ってまんま全体主義に見えますjけど。

ちなみに高齢者の就労支援の一環として最賃を見直すという話は以前からいろいろな人が普通に議論していることです。突飛な話でもなんでもないです。

【参考リンク】最低賃金を撤廃すれば、「働きたい」高齢者の社会参加を可能にする

というわけで、結論から言うといつも通り「被害妄想をたくましくして最悪の事態を想像する」という下翼の本領発揮というわけです。下翼の未来予想リストに追加しておきますね!

・PKO法案成立で自衛隊はアジア侵略再開、第三次世界大戦へ
・輸入牛やオレンジで酪農やみかん農家壊滅
・郵政民営化で郵便ネットワーク崩壊、郵貯ぜんぶ米国に取られる
・三角合併解禁で日本企業は外資に買収され放題で日本人は奴隷に
・TPPで日本のカネも雇用も外資に取られ放題
・放射能で東京壊滅
・共謀罪で居酒屋で3人集まって政権批判しただけで逮捕
・高プロで過労死合法化
・水道民営化で水道代10倍に
・高齢者の最低賃金引き下げで労働市場に低賃金の高齢者殺到、日本全体が低賃金化  ←New!


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年8月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。