トランプ再選へ苦難?共和党内、最強の挑戦者は誰だ(特別寄稿)

2019年01月03日 06:01

今年は、2020年大統領選挙の予備選挙が実質的にスタートする。年内に候補者討論会などが開催されることになり、多くの候補者が自党の指名獲得を巡って争いを開始することが予想される。驚異的な公約達成率を誇るものの、支持率の低迷に悩まされているトランプ大統領にとって、予備選挙に名乗りを上げてくる党内からの挑戦者は頭痛の種の一つとなるに違いない。

Gage Skidmore / flickr:編集部

米国では共和党と民主党の二大政党によって行われる大統領選挙本選(第三極政党も存在するが)の前に、党内での候補者指名を勝ち取るための予備選挙が実施される。2016年大統領選挙では、トランプ大統領は共和党の指名を獲得したものの、共和党内を分断する激しい予備選挙が行われた経緯があり、直近2年間の政権運営において当時の政治的なコンフリクトを自党内に抱えた状況で厳しい党派争いに苦慮してきている。

通常の場合、予備選挙で現職大統領が苦戦すること、まして敗北することはない。

ただし、過去には1976年共和党予備選挙で現職のジェラルド・フォード大統領が保守派のロナルド・レーガン・カリフォルニア州知事からの挑戦を受けて大接戦を演じており、本選の副大統領候補者を保守派に配慮する形で選ばざるを得ない形に追い込まれたことがある。また、1992年現職のブッシュ大統領も保守派のパトリック・ブキャナンから挑戦を受けて代議員投票数では圧勝したものの、予備選挙初期の各州の投票率ではブキャナンに20~30%の得票を許している。予備選挙は実は決して楽観視できるようなものではない。

トランプ大統領の場合、自らが保守派からの支持される形で政権を運営してきたことから、保守派から挑戦を受けた穏当な主流派であるフォードやブッシュとは政治的な立場が異なることになる。つまり、仮にトランプ大統領に挑戦する候補者がいるなら、それは主流派に属する人物となるだろう。

ロムニー(左)、ケーシック(Wikipediaより)

トランプ大統領への挑戦者として既に名前が挙がっている代表的な人物は、ジョン・ケーシック前オハイオ州知事とミット・ロムニー元大統領候補者(現上院議員)であろう。

特にケーシックは一貫してトランプ大統領を批判してきており、2020年大統領選挙本選で重要なラストベルトに地盤を有していることから、現段階においては最も有力な対抗馬と言える。2016年の予備選挙でも敗色濃厚の情勢でありながら、最後までトランプ指名に抵抗する動きを見せていた。ロムニーも党内人気がそれほど高くない人物であるが、大統領選挙を一度は戦った人物でもあり、全米レベルの選挙で戦い慣れをしていることは間違いない。

トランプ大統領にとって苦しい展開になるのは、トランプ政権の閣僚を務めて辞任した人物や更に保守寄りの候補者が予備選挙に出てくる状況に陥ることだろう。リベラルなメディアがホワイトハウスの内情について従来から批判的に報道してきているが、元内部者があからさまにトランプ大統領を批判する展開することは、それらの批判を裏付けることになるからだ。

ヘイリー(Wikipedia)

元閣僚として出馬した場合、トランプ大統領を倒せる可能性がある筆頭格はニッキー・ヘイリー元国連大使である。女性、マイノリティー、たたき上げ、州知事、国際経験、ルックスなど、申し分ない候補者である。おそらく大統領選挙本選も民主党候補者に楽勝で勝てる共和党の秘蔵っ子であり、国連大使の辞任発表会見ではトランプ大統領がヘイリーを異常なまでに持ち上げて気を使っていたのが印象的だった。

その他、可能性は極めて低いものの、軍人として尊敬されており2016年には大統領候補として名前が挙がったことがあるマティスが出馬した場合も苦戦を免れ得ない。

また、党内保守派勢力からの挑戦も十分にあり得る。その急先鋒は、ランド・ポール上院議員やマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ)だろう。ポールは生粋のリバタリアンとして、ルビオはネオコンの代表格として挑戦することになる。

ポール(左)、ルビオ(Wikipedia)

特にルビオはフロリダ州の上院議員に共和党からリック・スコット元州知事が中間選挙で選出されたことで、2020年大統領選挙を逃せば大統領への挑戦権をスコットに奪われることになるので必死だろう。さらに、トランプ大統領はスティーブ・バノン元首席戦略官と個人的に良好な関係を保っているように見えるが、仮にバノンがトランプ批判で出馬した場合も極めて興味深い状況となることは間違いない。

以上のように、トランプ大統領は潜在的な競争相手を党内に大量に抱えている状況となっている。2018年末になってトランプ大統領が国境の壁予算確保を強調して政府閉鎖を引き起こしたのも、シリア・アフガンからの撤退に反発する党内保守派からの支持を再獲得するためのデモンストレーションであると看做すべきである。党内からの挑戦がほぼ確定的な主流派のケーシック及びロムニーに対抗するためには保守派からの支持が必要不可欠だからだ。

トランプ大統領は一時的に保守化することで予備選挙を勝ち抜くと思うが、主流派挑戦者の躍進や本選挙対策の観点から、予備選挙後には穏当なものにシフトしていくことになることが予測される。トランプ再選に向けて保守派のペンス副大統領が続投するか否かがトランプ政権の政権戦略を見極める一つのキーポイントになるだろう。

2019年もトランプ劇場から目を離すことはできない。そのドラマチックな展開に世界中が刮目していくことになる。

日本人の知らないトランプ再選のシナリオ―奇妙な権力基盤を読み解く

渡瀬 裕哉
産学社
2018-10-10
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渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員

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