88歳で再犯の恐れ ⁉︎ 薬物事犯で刑務所は税金の無駄使い

田中 紀子

昨日、現在国内最高齢と言われている88歳の男性の覚せい剤事件の初公判がありました。

国内最高齢の覚醒剤事件被告か…88歳無職の男 初公判で起訴内容認める 懲役2年求刑 金沢(FNN)

写真AC:編集部

こちらのニュースをご覧いただけばお分かり頂けると思いますが、検察側がまたしても「再犯の恐れ」とのことで、懲役2年を求刑したとのこと。いやいや、刑務所入れてどうするのさ?と、検察のもっと言えば逮捕した警察の対応から、全く持って気が知れません。

だって、このおじいさん前科25犯で11回懲役に行っているんですよ。
再犯の恐れって、刑務所入れてるから再犯してるんじゃないですか。
刑務所が全く再犯防止になっていないですよね。

そもそも薬物事犯に再犯が多いのは有名な話。再犯率は6割を超えています。

全薬物事犯検挙人数(厚生労働省)

なんでかと言えば、依存症という治療が必要な病気に対して、刑務所で対応しているからですよね。
刑務所は懲罰であって、治療機関ではないからです。

更に問題は、こうやって薬物事犯に対して、いちいち裁判やって刑務所に入れて、しかも効果がなく再犯繰り返すことに、どんだけ税金を使うんだ!ってことですよ。

仮に前科25犯懲役11回が全部覚せい剤事犯だったとしてですよ、単純に計算して、国選弁護士がついた回数25回×10万円として250万円。さらに11回の懲役が平均2年の刑期としたら計22年。刑務所の経費って、1年で一人およそ300万円と言われてますから、なんとそれだけで6600万円ですよ!

もちろんこの上、捜査費用だとか、留置費用だとかなんだかんだと国費が負担している訳ですよね。
このおじいさんの薬物事件だけで、税金1億円位かかってる訳じゃないですか!

もったいない!って思いませんか?
まさに税金の無駄遣い。

だったらですよ、覚せい剤事犯は非犯罪化して、刑務所じゃなく治療に繋げる!ってした方がどれだけ安上がりで効果が上がることか。

このおじいさんの場合、10代で覚せい剤を使い始めたようですから、10代の時に治療に繋がれて回復できていたなら、
刑事罰のためにかかった税金は必要ないわけですよね。しかも当然労働者となった訳ですから、納税も期待できたわけです。

例えば薬物の治療施設に生活保護で入ったとしたら、年間およそ120万円位で済む訳じゃないですか。
万が一ですよ、めっちゃくちゃ再発を繰り返してですよ、5回入寮したとしましょうよ。

1回の入寮が2年だったとして、10年の入寮期間それでも1200万円ですよ。
もちろん、他に医療費などもかかるでしょうけど、それでも刑務所に行くより、ずっとずっと安上がりですし、回復率だってあがります。

ものすごく単純に比較しただけですけど、薬物事犯を捕まえて、捜査し拘留し裁判を行い、実刑に処すって、ものすごい税金を使って、しかも6割以上が何の改善もないんですよ。バカバカしいと思いませんか?

国はなんだってこんな効果のないことにいまだしがみついているのでしょうか?
警察は薬物事犯みたいな被害者もいない病人に、手間暇かけてないで、世田谷の一家殺害事件や、八王子のスーパー殺人事件みたいな、凶悪犯に人員を割き全力投球して下さいよ。覚せい剤は、捕まえたら病院か施設にサクサク繋げたらいいじゃないですか。

88歳の前科25犯のおじいさんに再犯の恐れって、そりゃそうでしょうよ。
再犯しないようなサポートしてないんですから。
警察や検察は、そんな仕事むなしくなりません?
茶番はやめて、回復し続けられる環境に繋ぎましょうよ。

前科25犯、懲役11回、現在88歳のおじいさんに、いまだ堂々と「再犯の恐れ」という紋切り型の言葉で、またしてもがっちりと最高額の税金を使おうとする、策のない日本の司法には心からあきれます。

このおじいさんが薬物事犯最高齢を更新しないことを、心から願ってます。


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2019年1月27日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。