中国「イスラエルにハイテク分野で接近」米が警戒

白石 和幸

この2〜3年イスラエルに中国からの投資が顕著になっていることに米国が不安を表明していることが明るみになっている(参照:hebreos.net)。

中国がイスラエルに求めているのはハイテクノロジーの中国への導入である。

2017年3月21日、イスラエルのネタニヤフ首相と北京で会談した習近平国家主席(新華社サイトより:編集部)

例えば以下のような買収劇が最近中国企業よりイスラエル企業にあった。

  • ジェネリック農薬のAdama(旧社名Makhteshim Agan Industries)を中国の中国化工集団(ChemChina)が2011年に買収。
  • 食品大手のTnuvaを中国の光明乳業(Bright Food)が2014年に買収。
  • 化粧品メーカーAhavaを復星国際(Fosum)が2016年に買収。

更に中国企業によるイスラエル企業の買収にはレザーによる医療企業Alma Lasersや医療機器のLumenisがある(参照:bbc.com)。

イスラエルの企業への中国からの投資は2016年は160億ドル(1兆7600億円)にまで急増しているのである。この投資額の中心はイスラエルのハイテク企業の買収だったという。

2017年にネタニャフ首相が中国を訪問した時も250億ドル(2兆7500億円)にのぼる合意を交わした。その時点でイスラエルのハイテクノロジーを対象にした投資の3分の1が中国からの投資によるものだという。

また両国の進展ある関係からイスラエルを訪れる中国人観光客が増えて2015年から2017年は年間で10万人が訪問(参照:bbc.com)。

Silicon Dragon Israelを設立した創業者のひとりレベカ・ファニンは「イスラエルのテクノロジー企業は中国資本のお陰で急速に成長している。しかも巨大な中国市場へのアクセスそして協力が容易となっている」と述べている。

また、「中国人はイスラエルと、そのテクノロジーによる輸出力によって催眠に掛けられているようだ」と語ったのはイスラエルを本部にしている企業Samsung Nextの社長ロイ・ベンヨセフだ。

中国の中東における3つの狙いは、エネルギー資源の確保、中国のテクノロジー企業の接触範囲の拡大、新シルクロードへの投資が危険に晒されないことだという。

その意味で中国は中東ではイスラエル以外にイラン、サウジとも円滑な関係を保っている。例えば、イランが制裁で孤立化されると中国はその制裁を無視してロシア同様にイランが必要なものを提供できるようにして来た。サウジとは原油の輸入を日本に次ぐ規模で輸入している。このようにして、中国はこの3か国と相互に良好な関係を維持して中国の存在感を知ら示している。

中国はまたイスラエルとはテクノロジーの分野だけではなく、ハイファー港を2021年から中国の海運企業SIPGに25年間運営を一任するという合意に達しているというのである。しかも、SIPGの主要株主は中国政府である。

同港には米国の軍艦も定期的に停泊もしているが、一旦中国に運営が委ねられるようになると、米国は停泊する港を変更する意向を検討しているという。イスラエル政府はこの事態の解決に取り組んでいるという(参照:itongadol.com)。

このようにイスラエルと中国の関係が急速に進展していることから、米国が懸念しているのはイスラエルの高度なテクノロジーが中国軍の手にわたるのではないかという不安であるという。しかも、イスラエルの港も中国の影響下に入ってしまうとなると、ジオポリティカルの面でも米国は不利にされてしまう可能性がある。

そこから米国がイスラエルに要求しているのは、トランプ大統領が中国に対する姿勢を変化させたのと同様に、イスラエルも対中国に関して同様の歩調を取るように迫っている。