『ルポ児童相談所』を読んで考えたこと

井上 貴至

児童虐待のニュースが連日報道されています。朝日新聞社記者・大久保真紀氏の『ルポ児童相談所』(2018年、朝日新書)を読んで、対応策を考えてみました。

この本は、児童相談所の初期対応チームなどを密着取材するとともに、この分野で先進的な福岡市総合こどもセンターや高知県知事をインタビューしています。

まず、データですが、全国には210か所の児童相談所があり(2018年3月現在)、3,115人の児童福祉司が働き(2017年4月1日現在)、年間40,387件の一時保護(2016年)を行っています。

児童福祉司1人当たりの件数は70件~100件。ヨーロッパやアメリカでは概ね20件ですから、かなり忙しい状況です。

この本の中でも、児童福祉司の連日の遅くまでの残業や週末の対応の様子がリアルに描かれています。

だからこそ、

1)児童福祉司の数を増やす、専門性を高める

ことはもとより、

2)児童相談所、保育園、幼稚園、学校、教育委員会、保健所、民生委員、児童委員、病院、警察、社会福祉協議会、児童養護施設などで構成する要保護児童対策協議会(要対協)などでも、直接会って紙でやりとりするアナログなやりとりをしていますが、グループウェアなどを積極的に活用する。また、記録作成業務などでもICTを積極的に活用する。
(こういう話をすると、必ず個人情報の保護の話が出ていますが、愛媛県西予市の過疎地の診療所などではグループウェアを積極的に活用して効率化を進め黒字化を実現していますし、個人が書類を持ち出すこともリスクが高いと思います。)

3)親に対する支援や教育を充実させる

というような対応策が必要だと考えました。この問題については、特定の児童相談所や個人の責任にするのではなく、背景や構造から考えていくことが大切ではないでしょうか。

<井上貴至 プロフィール>


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2019年2月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。