「札仙広福」に対する学会における評価

2019年03月03日 16:00

椋木 太一さんが「札仙広福」について記事を書かれているが、この都市群に対する経済地理学会における評価を紹介する。昨年の同学会大会のシンポジウムテーマが『「ポスト支店経済期」における地方中枢都市の中心性の変化』であり、その時の議論の内容もふまえて本稿を書く。

ちなみに、Wikipediaでの札仙広福の項目はよくまとめられているので、興味のある方は参照して頂きたい。また私が以前「アゴラ」に投稿した記事(東京への人口集中は進む)でも「札仙広福」に触れている。もう5年前の記事なので、今より認識が甘いと自分でも思うものではあるが。

「札仙広福」という概念は、日本の主要産業が工業から商業中心に移る1970年代後半から使われ出したものである。それまで大都市といえば工業が盛んな都市だったものが、支店が多く集まる都市に変化してきたことで、この言葉が使われ始めた。

福岡市・ヤフオクドーム周辺(写真AC:編集部)

しかし、この4都市が並列だったことはない。最初から福岡が頭1つ抜けた状態だった。東京に本社を置く企業が、大阪、名古屋の次にどこに支店を置くかと考えた場合、福岡になるからである。それは福岡市自体に魅力があるからではなく、九州の人口が他地方に比べて多いからという、単純な理由からだ。東北・北海道は人口が少ない上に東京の本社機能が強大なため、まとめて東京で管轄しよう、ということになる。

大手新聞社の「本社」を見ればわかりやすい。東京、大阪、名古屋、福岡が「本社」で札幌は「支社」になる。東京スポーツ系列も東京スポーツ、大阪スポーツ、中京スポーツ、九州スポーツという4紙体制で、広島では「九州スポーツ」が売られている。

もちろん九州に支店を置く場合、それが門司・小倉なのか福岡なのか熊本なのかという選択肢はある。例えば大手新聞社の「西部本社」がどこにあるのかを見るのも面白い。その中で結果として福岡を選ぶ企業が多くなったのだが、その理由は福岡市が努力したというよりは、単に立地条件で九州全域をカバーするのには福岡市が便利だったから、ということだと私は考える。

ではなぜ現在この4都市の中では福岡1人勝ち状態になったのか、ということを分析する。

もともと仙台と広島の拠点性は弱かった。東北は東京との近接性から東京に吸われるし、中四国も広島への依存度が低い。岡山は関西を向いているし、四国も松山が何とか広島を向いてないこともないという程度で全体としては関西を向いている。山口も西側は完全に九州寄りで、東側も岩国は広島寄りだが周南あたりになると怪しくなってくる。

札幌はどうなのかといえば、人材の供給源となる北海道全体の人口が減っていて、将来性という意味では厳しいと言わざるを得ない。4都市の中では人口だけ見るとずっと1位だったが、後背地の人口まで含めると下位になってしまう所が、札幌の弱さである。

福岡の場合、人材の供給源となる九州の人口はまだまだ多い。ここが効いている間に東京に依存しない経済構造を構築できれば、自立することは可能だと考える。

世間では福岡が素晴らしいという、多少過剰にも見える話が多いが、もともとの地理的条件が考慮されないと、間違った分析になる。

「住みやすい」とか「移住者が多い」などの意見も多いが、札幌のIT企業が元気だった時には、札幌でも同じことが言われていて、特に福岡だけの特徴ではないのだ。福岡が特に優位なのは、空港が市街地に近いこと位である。

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前田 陽次郎
博士(経済学) 長崎市在住、地域構造研究者

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