統一地方選(東京)都民ファの不気味な復調と維新の健闘

2019年04月23日 06:00

統一地方選の後半戦は、音喜多くんが散華した北区長選に一般の注目が集まりがちだったが、ダブル選挙もささやかれ始めた中で、政治のプロは各党の「基礎体力」を知るため、区議選や市議選の結果に目を光らせている。

筆者もまだ分析の最中なのだが、明らかに感じた「異変」は都民ファーストの動きだ。投票日翌日となったきのう(4月22日)、大田区や江東区などが1日遅れで開票。区議選が行われた20区の結果が出揃ったところで、都ファの選挙結果を総評する記事が出た。

都民ファ、全員当選目標届かず=新人が苦戦-東京・市区議選(時事通信)

区議選では応援に入らなかった小池氏(Wikipedia)

「全員当選目標届かず」とあるから見出しのトーンはネガティブ基調だ。筆者は読者もご承知の通り「アンチ小池」ではあるから「それ見たことか」と言いたいところだが(笑)、選挙分析は冷静にしたい。

率直に言えば、全員当選を毎度のごとく達成するのは、公明党のように強烈かつ着実な組織力と綿密な候補者擁立を両立させない限り難しい。小池都政や都ファには追い風が再び吹きはじめた実感も全くないが、過去の選挙とも時系列で比較してみなければ、都ファの現時点の「地力」がどの程度か正確に評価できない。

振り返れば、2017年夏の都議選で都ファが大勝した後、小池知事は希望の党を結成。しかしその年の10月の衆院選は惨敗した。その翌月に行われた葛飾区議選では、都ファは5人の候補者を擁立して1人しか当選せず、凋落が決定的になったとされてきた。それから1年半近く経過し、都ファの地盤は沈み続けているのか、それとも下げ止まったのか、たとえ全員当選の目標が果たせずとも詳細を突き詰めねば実相は分かるまい。

記事にもあるように、今回、都ファは都内40市区議選中、17市区で公認候補を立て、1市で新人を推薦。計29人の候補を送り出した。その結果、現職は12人が全員当選。さらに元職1、新人11も当選。結局、29人のうち24人が当選する「倍増」となり、都ファ代表の荒木千陽都議は公式Facebookページで次のように「躍進」だと強調している。

受動喫煙防止条例や待機児童対策など、都民ファーストの会の公約に基づく取り組みが都民の皆様に届いた結果であると受け止めています。とりわけて、現職全員の当選は、これまでの取り組みの評価であり、数多くの新人の当選は、今後の都民ファーストの会への期待の表れであると確信しています。

都ファ“躍進”の実相

宣伝文句はさておき実相はどうなのか。増子博樹幹事長の地元、文京区では、公認を1人に絞ったのに落選(定数34)。宇佐美くんの天敵こと、伊藤ゆう政調会長代理のお膝元、目黒区では3人を擁立して2人落選(定数36)。ここは都政関係者の間でも「ひどい選挙をした」という評価が出始めているようだ。

他方、小池氏のお膝元、豊島区議選(定数36)では1人の新人が落選し、報道でも強調されている。ただ、7人擁立して6人(現職4人、新人2人)は当選。都議選当時のような熱気こそないものの、小池知事が今回、区議選の応援に入らなかったことを考えれば「及第点」ではあろう。

また、筆者の住む港区を見ると、現職男性と新人女性がともに当選。ある他党の区議によれば選挙前、新人女性候補は「泡沫」視されていたというが、結局2人とも当選した。

面白いのは大田区。新人女性がトップに肉薄。2500票が当選ラインのところでぶっち切りの1万票台を叩き出す大躍進だった。このあたりは昨年までの状況とは明らかに一変、局所的とはいえ都ファにとっては久々に“景気”のいい選挙区が出てきた。追い風が再び吹いたとはいえないが、底を打った感はある。反小池派の人にとっては警戒レベルをあげるところだ。

大田区議選で新人ながらトップに肉薄した奥本有里氏(左から2人目、森愛都議のブログより)

新しい選挙参謀?「用兵」がこれまでと雲泥の差

もちろん議席が「倍増」といっても各区、市議会で見れば1人〜数人の少数会派。区長が小池派の千代田・豊島区以外では、泡沫の野党会派でしかなく、多数派を送り出す自民党や公明党と比べて区政に与える影響力は小さいだろう。

しかし、当選者を出した自治体や議会のナマ情報が入ってくる利点は小さくない。各選挙区にいる都ファの都議と連携して、小池知事の意向を自治体サイドに内々に伝えたい時などには「エージェント」の役割も果たせる。

選挙戦略の話に戻れば、都ファの「用兵」が明らかに変わった。葛飾区議選の時は、時流を読まず、むやみに5人もの候補者を送り出して多くが撃沈した。さらに衆院選の時の希望の党を引き合いに出せば、東京9区で長年活動していた現職を隣の8区に配置転換してむざむざ落選させるなど、意味不明な戦い方をしていたが、今回の統一選の陣容は隙が少ない。

野球にたとえれば、むやみに本塁打を狙うのではなく、単打をコツコツ積み重ね、あわよくば二塁打くらいの確実性を重視したといったところか。選挙戦略の立て方が「負けない」戦い方に徹している。候補者の立て方だけでなく、組織の作り方も含め地上戦の戦い方を明らかに変えている。この戦略づくり、選挙を熟知した新しい参謀を雇ったのではないか。

維新も密かな躍進、自民は区ごとに明暗

さりげない躍進といえば、長らく東京で低迷していた維新も、23区では19人を擁立して14人が当選。このうち音喜多くんの戦いと並行した北区議選では、若干26歳の男性が初当選した。柳ヶ瀬都議によれば、都内の議席数は「非改選組を含めて8名から16名に倍増」したというから、都議選の当選者が柳ヶ瀬氏だけだった時を考えれば、密かな健闘と言える。大阪ダブル選の大勝利のニュースはあっても、一般都民の有権者の多くには「他人事」だろうから、このあたりも地上戦の戦い方を変えたはずだ。4年前(当時は維新の党)にいなかった選挙参謀の存在を感じないでもない。

ちなみに、自民党は川松都議の墨田区の区議選のように、13人中12人が当選したところもあれば、渋谷区では12人中3人が落選。北区に至っては区長選勝利の影に隠れて、16人のうち5人も区議選で落ちるなど、選挙区ごとで明暗が別れた。

ここにきて国政では、夏の参院選に衆院解散総選挙をぶつけたダブル選挙もささやかれ始めている。東京では、来年には都知事選も控える。大型選挙を占う上でも、最前線を担う地方議員、基礎自治体選挙の動向は引き続き注目したい。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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