「一変」は困難?韓国政府が「徴用特別法」を検討、と朝鮮日報

2019年07月06日 06:01

5日の朝鮮日報が「強制徴用:韓国与党内で『特別法』検討の動き、大統領府は否定的」との見出し記事を報じている。

記事は「韓国外交部は…過去史によって触発された韓日対立の火花が経済へ飛び火し、互いに強硬対応する様相を深めつつある中、外交的解決を試みることもできずにいる」、「対立の始まりとなった強制徴用被害者判決問題から解決しなければならないが、満足な対策を打ち出せていない」と批判した。

さらに、与党で「徴用判決があっても日本企業の賠償責任を一時的に免除」する強制徴用判決関連の特別法を制定する案も検討されたとし、しかし与党関係者は「特別法の議論があったが、大統領府(青瓦台)が否定的だった」としている。

勝訴を喜ぶ元徴用工らの原告団(KBSより:編集部)

漸く少し現実的な案が出て来た感じがする。日本のネットでは「立憲や共産や朝日や毎日のいうことの逆が正解」なる認識が広く浸透しているが、その伝でゆけば「韓国大統領府が否定的」なら「正解」だ。日本の報復で韓国崩壊を願う向きには不満かも知れぬが、これが解決の糸口になる可能性がある。

筆者は5月17日の「チョット無理筋ですが、韓国に「徴用工判決の解決方法」教えます」で、そもそも大法院が統治行為論でこの訴訟を門前払いすべきだったが、判決が出た以上は、韓国政府が「超法規的措置」「国家緊急権」の発動をするしか解決方法がないと書いた。名目は「特別法」でも何でも良い。

しかし、こと日本に対しては自爆も辞さない体の韓国大統領府のこと、果たして「特別法」の方向に進むかどうかは予断を許さない。

それはさて措き、上記記事を報じた朝鮮日報デジタル版の7月5日正午頃の見出し画面には、約40項目もの「輸出優遇除外」関係の記事が並んでいる。韓国の受けた衝撃の強さが知れる。

だが、記事を見る限り上述の「特別法的な解決策」の他に、韓国がその影響を緩和できそうな手立てはなさそうだ。中でも哀れを誘うのは「輸出優遇除外:4カ月で在庫切れなのに韓国政府は中長期計画で対抗」。実に的確な見出しで、さぞかし有能な編集者の作だろう。

企業人の多くにとっては周知のことだし、専門家でもない筆者でも知っているものに、俗に「一変(いちへん)」などと呼ばれる「承認事項一部変更承認申請」というのがある。製薬業界から出た言葉と思われる。例えば、医薬品を構成する成分の一つをAからBに変更するための承認申請などを指す。

それはA成分自体の、同等の性質を持つB成分への変更に限らず、同じ化学式のある成分のA社品からB社品への変更、製造設備や工場の変更などをも含む。ケースによっては、医薬品の治験段階からやり直すこともあるだろう。その工数や期間や費用を想像するだけでも大変そうだ。

半導体の「一変」も医薬品に劣らず厳格に違いない。「産業のコメ」といわれる半導体、スマホやPCやスパコンは言うに及ばず、自動車だってそれなしにはピクリともしない。仮に一つの半導体の不具合が原因で、自動車が暴走して事故が起き、何十万台もの車をリコールに繋がることだってあり得る。

とすれば、半導体一品番でのA素材からB素材への変更、あるいはある素材のA社品からB社品への変更のリスクは半導体メーカーにとって極めて大きい。数百円か高々数万円かの半導体一個のせいで、何十億、何百億の損害を出す可能性があり得る。

ゆえに半導体メーカーでは、製品設計から完成品に至る各工程で、物性や電気特性や耐久性等々のあらゆるテストをして素材を決定し、一度決めたら原則としてその品番の企画が終わるまで変えない。これは医薬品もそうだし、食品などの加工物でもレベルこそ違え、基本思想に変わりはない。

が、A社自身あるいはA社の原料供給先が倒産することもあろうし、A社が韓国の半導体メーカーC社には製品を売らない事態も起きよう。その場合、C社はB社の素材に変更し、先ず社内でA社品を使った場合と同じ性能が維持できるか、何種類も試作品を作り、手間と期間と費用をかけて評価する。

出来上がった何種類かの試作品を、C社はその顧客D社に「一変承認申請」をする。D社はC社からの試作品を一件一件手間と期間と費用を掛けて、A社の素材を使ったC社品と同等の性能かどうか評価する。サンプル代やD社での工数などコスト一切はC社負担だ。しかも3素材を使っている半導体の品番数は韓国全体なら三桁は下るまい。途方もない作業だ。

その結果、B社素材を使ったC社品で代替できればハッピー。だが、B社素材のC社品がNGだったらどうだろう。当然にD社はそういう事態に備えて、C社以外のA社素材を使ったE社品も検討するに違いない。E社とはもちろん韓国以外の例えば日本や台湾の企業だ。さらに場合によってはD社がその顧客に対して玉突き式に「一変申請」する場合もあるかも知れない。

実際の半導体関連業界は、ウェファーや金線や封止材などの素材の他、半導体の設計や受託生産や組み立てなど、ティアー(tier)といわれる工程の業種層が複雑なのだが、今後、韓国の半導体メーカー、サムソン電子やSKハイニクスなどに起きるであろう事態をざっくり想像すれば、おそらくこの様だ。

事実、4日の聯合ニュースは「サムスンとSKが取引先に書簡『支障出ないよう努力』=半導体納品で」との見出しで、サムソン電子が「ファウンドリー(受託生産)事業の主要取引先」である「米クアルコム、エヌビディア、IBM」などに「滞りなく製品を供給できるよう最善を尽くす。万一、問題が発生した場合は直ちにお知らせする」という内容の書簡を送った、とを報じた。

サムソン電子が、例えば日本製の対象3素材を日本以外のメーカーの素材に変更する場合、上述のような「一変承認申請」の一連の過程を経ることになろう。その期間が「4カ月」以内に終了するかどうか判らないから、クアルコムやエヌビディアは必ずサムソン以外のソースも模索するはずだ。

「中長期計画で対抗」するのも良い。が、「特別法的な解決策」を立て、そちらに「中長期計画」で投資する予定の一年分「1兆ウォン(約920億円)」を振り向けて、二重取りか三重取りか知らないし、何万人になるか知らないが、訴訟原告らへの支払いに充当すれば良いではないか。

韓国憲法には「条約と国際法規は国内法と同等の効力を有する」とある。何でもできる独裁文大統領が「大法院判決は尊重するが、韓国政府は日本との条約を優先し、特別法を以って政府として原告らに補償する」といえば、明日にでもこの問題は解決する。2005年にもその様にしたではないか。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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