習慣というもの

BUSINESS INSIDER JAPANに「成功者、11の習慣」(19年6月9日)と題された記事があり、「感情をコントロールする」「読書が好き」「1人の時間を大切にする」等々と並んで「ルーティンにこだわる」ということが挙げられています。そこでは、『成功者は「決まったルーティンや儀式が毎日の始まりと終わりにある」と指摘』されています。

此のルーティンということで私の場合は、いつもマーケットから出発しています。寝る前に必ず欧米の金利・為替・株式・債券等々のマーケットはどうなっているかとチェックをし、起きて直ぐにそれらの相場がどうなったのかを確認します。その上でマーケットが大きく動いたとしたら、そこに如何なる事情・背景があり、一時的なものかどうかを探るわけです。之は、相場に生きる人間にとって必須だと思っています。

このようにして私は1974年に野村證券に入社して以来今日まで、過去45年に亘り上記の世界中のマーケットを見続けることを一つのルーティンにしてきました。之は、数多くの種々の金融業に身を置く者として相場がどういうふうに動いているのかに関し常に自分なりの主体的な判断を持たねばならない、との思いからやってきたのです。

但し、ルーティンと習慣とでは、少し違うような気がします。どちらかと言うと、ルーティンというのは良い悪いは別にして、やらねばならないとして毎日やるべきを機械的に熟(こな)す、といった類です。他方で習慣というのは、良い習慣と悪い習慣とがあると思います。

例えば、寝る前に酒を飲むとか、起きたら直ぐに煙草一服、といった習慣は健康上も余り良いとは言えず、悪い習慣に入りましょう。逆に良い習慣とは、例えば、常日頃から精神の糧になるような読書をし、その中で得た事柄を自分の今日の生活に如何に活かして行くかと考えること等であります。

あるいは、寝る前に自分の今日一日を振り返って見て反省する、というのも良い習慣の一つだと思います。人間としての生き方に問題はなかったか?とか、今日一日ベストを尽くしたか?…Have I done my best?、といった形で自らに問うて反省するのです。そしてまた、朝起きて活動を始めるに当たり、今日こそベストを尽くそう!…I’ll do my best!、といった具合に考えることはあっても良いように思います。こうした類を習慣にしている人は、人物も出来てくるものです。

『論語』の中にも「教えありて類(たぐい)なし」(衛霊公第十五の三十九)、あるいは「性(せい)、相(あい)近し。習えば、相遠し」(陽貨第十七の二)という孔子の言があります。前者は「人間には、教育による違いはあるが、生まれつきの違いはない」といった意味で、しっかりと学ぶことを怠らなければ、誰でも立派な人物になれるということです。また後者も似たような言葉で、「生まれた時は誰でも似たり寄ったりで、そんなに大きな差はない。その後の習慣や学習の違いによって、大きな差が出てくるのだ」といった意味になります。これ正に、孔子の言う通りだと私も思っています。

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