【霞が関の声③】官僚の人権軽視は民主党時代から受け継がれた文化

2019年10月23日 06:01

【編集部より】森ゆうこ氏の質問通告騒動を機に国会改革や霞が関の働き方改革の必要性が指摘されていますが、騒動の本質がマスコミで十分に報じられず、国民的な理解が進んでいません。アゴラ編集部では、霞が関で働く皆さんから匿名での投稿による意見を募集中です(募集告知はこちら)。

第3弾は経済官庁勤務の40代管理職のかたです。

写真AC

今は現場にいないので、昔の話になり恐縮です。

ただ、今回の騒動を聞いた時には、「さもありなん」と納得したものでした。

Wikipediaより:編集部

民主党時代(鳩山政権以前の野党時代)から、彼らの質問通告が遅いのは常習でしたし、土日対応はザラでした。

そもそも、官僚を既得権の守護者として、官僚を攻撃することで選挙民の支持を得て当選してきた経緯があるので、官僚の人権など眼中にないのでしょうし、その状態がベテランから若手の議員に官僚の人権など軽視する文化が、彼らの中に受け継がれていることが、根底にあるのだと思います。

Wikipediaより:編集部

代表的な人物として、昔は菅直人が有名でした。いわゆる「バッター表」で彼の名前を見た時には、ウィークデーなら明け方帰り、金曜なら、土日出勤を覚悟したものでした。逆に、彼の通告が遅いことはわかり切っていたので、答弁責任者になる上司などは、早々と家に帰ってFAX対応すると割り切っている人もいたぐらいです。でも、質問が入ってくる下っ端役人は、結局最初から最後まで待っていなければいけないので、悲惨そのものでした。

国会の日程闘争が遅れて、質問者が決まらず、結果、質問通告が遅れるという話もありますが、日程が事前に決まっている、通常国会の本会議の代表質問でさえ、今の野党の議員からの通告が昼間に出てくれば奇跡だと思うぐらいです。

逆を言うと、与党議員で、時間内に通告の無い議員がいると、「与党のくせに」なんて、言うぐらいでした。

それにただ待っているだけでなく、質問が入ってきたらきたで、どこの局課が答弁書を書くのか決める、割り振り揉めバトルがあります。結局どこも答弁なんて書きたくはないですから、お互いに押し付け合うのですが、今回の森ゆうこ氏が時間内に提出したという、「要旨」だけですと、どこが担当するのかはっきりしないので、この割り振り揉めで時間を費やすことにもなります。

まだ、担当府省がはっきり分かる内容ならいいのですが、どこの府省が担当するかわからない内容ですと、府省間での割り振りバトルになります。なので、各府省の国会連絡室の担当は議員に接触して、その中身を詳しく確認しようとするのですが、そこでも時間がかかることになり、結局割り振りが終わるのが、終電になるかならないかという時間になってしまいます。

また、時間がかかる要因として、「合議(あいぎ)」や「タマ出し」と言うものがあります。複数担当にまたがる場合には、主担当で書いた答弁を関連する局課でチェックしたり、答弁自体のパーツを関連する局課に依頼して書いてもらったりすることがよくあり、これも割り振り争いの中で決まります。

また合議と言っても、割り振り争いで決まる「正式合議」と、割り振り争いはしないが関係ありそうなところに見てもらって、その後の業務を円滑に進めるためのいわゆるアリバイづくりのための「実績合議」というものがあります。

特に金目の話になると、各府省とも、この実質合議で財務省にチェックを依頼するのが慣習化されているので、合議が無い答弁書は逆に少ないのではないでしょうか。

あと、時間がかかる要因としては、答弁書の印刷もあります。特に総理答弁ともなると、一つの質問に対して、30部以上の答弁を印刷することになります。

なので、配分時間の少ない少数野党の議員が総理答弁で、とても持ち時間で質問しきれないような何十問もの質問を通告してくると(総理答弁はニュースなどで放送される可能性が高いので、野党にとってはアピールの場です)、使われる見込みのない答弁書を大量に印刷することになり、紙資源、電力、時間、人件費の無駄そのものです。

国会対応の原因として、野党だけでなく、与党側の要因もあるかと思います。それは、政策に精通していない大臣の存在です。単に選挙の箔付のためだけの大臣なんて、野党の格好の攻撃材料ですし、支える側の官僚も一からレクチャーしなければいけないですから、答弁書だけでなく、理解を深めてもらうためのわかりやすい資料の作成など、ベテラン大臣と比較するとその労力は何倍にもなります。

結論的には、与党も野党もきちんと政策論争できる人材が国会で議論をしてくれれば、このような答弁書なんていならないと思います。国会議員としての資質の問題を、官僚に責任転嫁しているだけだと思います。国会が結局選挙のためのアピールの場としてしか見ていないところに、問題の根っこがあるような気がしています。

また、慣習化している国会答弁作業自体ももう少し合理化、例えばペーパレス化などの方法でする方法があるのではないかと思います。

野党も本気で政権を取るつもりがあるのであれば、政権をとった暁には自分の部下になる官僚に不当な勤務を押し付けるようなことをするのはマネジメントの問題として不適切だと思います。

このような問題は、一朝一夕に改善するものではありませんが、まずは、国会のバッター表を、衆議院、参議院のウェブサイトでリアルタイムで公開するところから始めてみるのもいいのではと思いました。また、質問通告書や、答弁書もすぐに公開すべきだと思います。事実としての情報を公にしてこそ、改善の道筋が見えてくると思います。

今や、すぐに情報発信されて拡散していく時代です。そのことを理解せず、議論をすり替えていくことこそ、時代の流れに取り残されて、ますます発展の道を閉ざしていくもののように感じられます。

経済官庁勤務 40代管理職

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