令和の皇室はこうあるべきだ

八幡 和郎

令和の「即位礼正殿の儀」に際してさまざまなマスコミから取材があったが、「世界日報」の電子版には、「特別対談 直筆御製に記された昭和天皇の大御心」という竹田恒泰氏と櫻井よしこ氏の対談などともに掲載されていたので、その内容を補完して掲載したいと思う。

日本を元気に 国民鼓舞を   評論家 八幡和郎氏聞く(Viewpoint)

首相官邸YouTubeより

まず、令和がどういう時代であるべきかといえば、平成という時代が昭和の蓄積をほとんど使い果たすという時代だったことを冷静に顧みないと行けないと思う。ないしろ、先進国の経済成長率は発展途上国より一般に低いのではあるが、平成の30年間でG20参加国で、GDP(国内総生産)が2倍にならなかったのは日本だけである。

ドルベースの成長率は年平均1.6%で、世界201位(香港など地域を一部含む)で208位の北朝鮮などと並んで世界最低水準だった。もっと低いのは内戦などがあったところだけだ。そうであれば、平成という時代への反省のもとに心機一転頑張らないといよいよ日本は三流国への道を位まっしぐらになってしまう。

宮内庁サイト

平成の時代に戦争がなかったので良かったという人もいるが、平成元年には、ベルリンの壁が崩壊し、ソ連の脅威がなくなったし、中国も改革開放に向かい、深刻な軍事的脅威のない時代になるかのように見えたのである。

しかし、30年たってみると、ロシアは復活し、中国は軍事大国になるし、北朝鮮は核武装するし、韓国は反日に傾斜し、ホルムズ海峡の波も高い。つまり、戦争の危険は極端に大きくなって平和の基盤が崩れてきたのが、平成という時代なのである。

日本の防衛体制の整備も安保法制による集団的自衛権の確立など進んではいるが、脅威の肥大化に追いついていない。

令和の皇室に望みたいこと

新しい令和はいい元号である。あんまり穏やかな年号は良くないと思っていたところ、アクティブな時代に相応しい明るく前向きな印象がある。令和の時代にいちばん重要なことは、日本が元気になることであろう。陛下におかれても、日本が元気になろうと国民を鼓舞していただきたいものだ。

宮内庁サイト

平成の御代にあっては両陛下は被災地のお見舞いや社会の目立たない不安を和らげられた。

言うまでもなく、それも続けていただきたいが、令和の時代にあっては、それに加えて、経済の最前線で頑張っている人、芸術でも世界の先端的な分野で活躍している人などを鼓舞することにも目を向けて欲しい。

少子化が大きな問題であるなかでは、例えば子供だくさんの一家を食事にお招きするとかされてもいいと思う。

日本の皇室の本当の価値はどこにあるか

皇室、王室というものにとって、変わらず継続することほど大事なことはない。君主制はその継続に正統性の源泉があるのである。

世界の王室ではイギリス王室が1066年のノルマンジー公ウィリアムの征服以来続いていて、2番目に古いとされている(デンマークは始まりと継続があいまいだがほぼ同じ)。わが国皇室は2700年近くかどうかはともかく、統一国家成立以来、独立を維持し、その中心におられたというのは群を抜いた価値を持っている(万世一系を否定する人や、ベストセラーになった『日本書紀』に似た名前の本のように「王朝断絶はあったようだが万世一系だ」という不思議な用語法を取る立場もあるが)。

そして、その万世一系を可能にしたのは、政治と距離を置き、度が過ぎた贅沢をしないということがあったわけだし、これからもどうあるべきだと思う。くれぐれも政治に利用されないようにしてもらいたい。

平成の時代と違うスタイルで良い

退位を表明されたお言葉の中で上皇陛下が申された象徴天皇としてのスタイルについて、今後も守るべき普遍的なものと捉える人もいるが、平成の陛下も昭和の陛下とは非常に違うスタイルを取られたのであるから、それにこだわられず、自分たちのスタイルをつくっていかれれば良いと思う。雅子妃の体調からしても同じスタイルには無理がある。

トランプ大統領夫妻来日時(米国大使館ツイッターより)

また、陛下と首相はもっと対話すべきだと思う。イギリスでは女王と首相は非常にしばしば話し、意見をぶつけ合っている。陛下と首相が、率直に議論をし、しかしその内容は絶対に口外しない。そして当然のことながら最終的判断は首相が行い責任を取るというのが立憲君主制の原則だと思う。

これまでは、十分に話合われず、逆に陛下のお考えなどと言うものが、漏れ伝わったりしたが、それはヨーロッパなどでは両方あり得ないことだ。

それから、ひとつの課題として、自国の防衛に当たる人々を激励し鼓舞することは、君主の一番重要な仕事だと思う。ヨーロッパの王室と軍隊との関係をよく見ておられる新陛下は、その重要性を誰よりよく理解されているはずだ。

即位礼正殿の儀で祝砲を披露した陸自第1特科隊(首相官邸YouTube)

陛下が靖国神社を参拝されるかどうかは、優れて政治的問題であるが、ただ、それ以前に、戦死者を単なる犠牲者でなく英霊として扱うことを戦後の皇室は避けてきたように思う。英霊の顕彰は君主の大事な務めであるし、それを避けてしまっては、誰が国を守るために命を賭けるであろうか。

憲法上の問題が、というなら、憲法は改正されるべきだ。逆にいうなら、憲法改正は必要ないというなら、逆に自衛隊や安保は合憲であるむねを全会一致で国会決議してほしい。

皇位継承については、私は女帝が絶対いけないとは考えていない。しかし、君主制というのはあくまで前例を踏襲しているから貴いのである。従来からの原則の維持が可能なら、勝手に変えてはいけないと思う。私は男系男子での工夫をまずすべきだと思う。そういう伝統を継承する努力もしないうで、いきなり女帝・女系容認などおかしい。

とくに、重要なのは皇族個々人の人気や評価ではなく、皇室の伝統なのだと言うことを確認したい。

八幡 和郎
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授