林鄭長官の北京訪問に合わせ米国が「香港人権法」発動 !?

2019年12月17日 06:01

米国に本社を置く反中紙「大紀元」は16日朝、「米“香港人権法”、親中メディア2社を名指して批判 所属記者を制裁へ」との見出しで、米国務長官に香港紙の「大公報」と「文匯報」に「所属する記者の米国入国ビザを厳しく審査するよう要求した」と報じた。主語が「同法9章」となっているので翻訳が少し変だが、事実なら、先月27日に成立したばかりの「香港人権法」が早々と発動されることになる。

Wikipedia中国版より

記事によれば、両紙は16年2月に合併し現在は「香港大公文匯伝媒集団」の兄弟紙になっている。また同集団の会長で「大公報」の社長兼会長の姜在忠氏は、かつて国営新華社通信の内モンゴル自治区支社の社長だったとされ、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が16年2月当時、姜会長は「国営新華社通信に在籍したままだ」と伝えたとのこと。つまりは在香港の中国国営紙ということか。

大紀元が報じている制裁対象の「大公報」の記事とは、8月に香港米総領事館政務担当ジュリー・イーデー氏が民主化活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏らと面会したことを写真入りで報じた際、「外国勢力が香港の抗議デモを煽扇動した証拠だ」と批判して「意図的に印象操作を行った」うえ、イーデー氏の「個人情報と子供の名前を公表した」こと、としている。

さらに大紀元が伝えるところによれば、9月6日午前に抗議デモを批判する親中派議員が刃物で刺された事件について、「大公報」のフェイスブックが前日5日の夜8時には同議員が刺されたことを既に報じていたとネットで話題になり、ハッキングされて掲載時間が変更された可能性があると同紙が説明したという。あるいは11月24日の区議会選挙で民主派が大勝したにも関わらず、「親中派は固く暴力を反対、得票率55%増」とのタイトルで同紙が選挙結果を報じた、ともいう。

早くも「香港人権法」が発動されるとなればそれこそ大ニュースだ。しかし他紙がどこも報じていないし、上述のような事案が制裁対象になるのかどうか、現時点ではまだ判断しかねるところがある。

そんな中、16日昼の香港英字紙サウスチャイナモーニングポストは、香港の林鄭長官が14日土曜日から北京を訪問したことを報じた。林鄭長官は、土曜中に香港・マカオを統括する韓正副首相(江沢民派とされる)と会い、16日午前には李克強首相と習近平主席に相次いで面会したとされる。習主席と林鄭長官との面談は11月4日以来のことだ。

新華社ニュースより引用

記事は習主席が、香港の状況は97年に英国から返還されて以来最も重大かつ複雑で、困難と圧力に直面しているとしつつ、「林鄭長官は“一国二制度”の原則を堅持し、法律に従って管理し献身的だった。困難な状況で多くの仕事をした。また、企業を支援し、人々の悩みを軽減し、社会の根深い紛争と問題を真剣に解決するための政策を展開し」たとし、中央政府は「これらの異常な時代における長官の勇気とコミットメントを完全に認める」と述べた、としている。

また記事は、これに対して林鄭長官が習主席の過去6か月間の香港の状況に関する「配慮と指導」、および危機への対処における彼女と彼女のチームへの「信頼と支持」に対し感謝を表明したとし、また習主席が先月上海で、「長官の政府が現在6ヵ月以上香港を荒廃させている社会不安を鎮圧しなければならないことを示唆していた」にも拘わらず、「長官を代えるとの憶測を打ち消し、彼女に全面的な支持を与えた」と報じている。

14日のVOAも、ロイター電として林鄭長官が同日に北京を訪問することを報じ、「地方選挙で大敗を喫したため、中央政府への最初の訪問での彼女の指導するチームの変更について憶測を呼んでいる」とした。だが、香港紙の記事を見る限りでは、習主席の反応は先月と同様に彼女とそのチームの仕事ぶりを認めているようだ。

林鄭長官は14日、フェイスブックで「市民と対話するという我々の誠意は変わっていない」「市民に真剣に耳を傾けるためのさまざまな形式の対話」を追求し続けるとし、内閣改造は「即時の仕事」ではなく、香港への法と秩序の回復に力を注ぐと述べた。香港紙も、習主席が面談の最後に「社会の様々な部門が団結し、香港の開発を前進させるために協力して軌道に乗せることを願っている」と述べたとする。

だが、地方選挙後しばらくは小康を保っていた抗議活動も、先週末には80万人規模のデモが比較的静かながら行われた。また林鄭長官が北京訪問中の16日未明には、デモ隊が警官にガラス瓶などを投げ、信号機が破壊されるなどし、警官が催涙ガスを使用、16名が逮捕された。これを知ってか知らずか、李克強首相は林鄭長官にデモ隊の一層の取り締まりを求めたとされる。

市政に直接影響しない区議会選挙とはいえ、8割以上の議席を獲得した民主派の5大要求に、まったく聞く耳を持たないかのように対話対話と念仏を唱えるばかりに林鄭氏に対し、香港市民の怒りはさらに高まっていることだろう。その香港市民に「香港人権法」の成立は強い後ろ盾になった。そこへ「同法初適用」との「大紀元」報道が事実となれば、抗議デモがますます激化、長期化するのは想像に難くない。

以前も書いたように、改めて勧める。林鄭長官は仮病を使ってでも職を辞せ!

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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