なぜ、のび太はしずかちゃんと結婚できたのか?

杉山 崇

国民的な人気を誇る「ドラえもん」、子ども時代に漫画やアニメを楽しんだ方も多いのではないでしょうか?好き嫌いは分かれるかもしれませんが、世代を超えて親しまれています。年代に関係なく話題にできるのが素晴らしいですね。

たとえば私はアラフィフの大学教授です。30歳も離れた学生たちとは好きな音楽もTV番組もだいたい違います。しかし、ドラえもんは私も学生もよく知っているので、共通の話題にできます。そこで、心理学を学生に学んでもらう教材にドラえもんを使うことがあります。

なぜ、しずかちゃんを射止めたのは出来杉ではなかったのか?

その中で、のび太がなぜしずかちゃんと結婚できたのか、学生と心理学的に考えてみました。しずかちゃんはみんなのアイドルでモテモテです。出来杉君という強力なライバルもいます。その中で、なぜのび太がしずかちゃんのハートを射止めることができたのでしょうか?

漫画の中では、のび太くんの優しさと人柄に惹かれたとされています。これはこれで美しい話です。しかし心理学から見てみると、のび太の配偶者としての魅力がもっと浮かび上がってくるのです。

「共依存」と「女性の配偶者防衛本能」

のび太の配偶者としての魅力を表す心理学的なキーワードは2つ、「共依存」「女性の配偶者防衛本能」です。

「共依存」とは自分が助けてあげないといけない相手を持つことで、生きがいや自尊心を保つ現象です。助けを求めている人は実際的に助けてもらえることで相手に依存します。助ける側は自尊心の維持を相手の存在に依存します。お互いに依存しているということで共依存と呼ばれます。

いろいろできる人にとっては、相手の弱さやダメなところがこういう形で魅力になることがあるのです。大人になって多少しっかりしてきましたが、何かと抜けているのび太はしずかちゃんにとってはこういう魅力もあったのかもしれませんね。

「ぱっとしない」ことが逆に魅力に!?

そして、もう一つの「女性の配偶者防衛本能」とは、男性に「確実に自分から離れない」ことを求める本能です。女性は自分が産んだ子どもは確実に自分の子どもです。しかし、子どもは一人では育てられません。自分の遺伝子を次世代に残すには、自分と自分の子どもだけに集中してくれる男性が必要なのです。

優秀でイケメン、女性の目を惹く出来杉君とあまり他の女性の目を引かないのび太、どちらがより確実にしずかちゃんに集中してくれるでしょうか。出来杉君が不誠実というわけではありませんが、女性の目を惹くことはリスクでもあります。女性の配偶者防衛本能としては、時には「ぱっとしない」ことが魅力になることもあるのです。

2020年は気づいていない魅力を磨こう!!

今、若い人、特に男性の結婚願望の低下が話題になることがあります。その理由の一つとして経済力などがあげられますが、配偶者の魅力とは一般に考えられているよりも実は広いものなのです。あなたも、あなたが気づいていない異性への魅力を持っているかもしれません。

2019年はもうすぐ終わりますが、2020年はあなたの魅力をもっと開拓できるといいですね。幸せなカップルが、もっと増えますように!!

杉山 崇
神奈川大学人間科学部教授・心理相談センター所長、心理学者・心理マネジメント評論家
脳科学と融合した次世代型サイコセラピーの研究やTV・雑誌などマスメディアでの心理学解説で知られる。