カタルーニャの自動車会社は日産だけに?セアットが“撤退”示唆

2019年12月25日 06:00

日本では馴染みの薄いスペインの自動車メーカーとしてセアット(SEAT)という企業がある。セアットはフランコ独裁時代の1950年に国策で誕生した自動車メーカーだ。1982年にフォルクスワーゲンと業務提携してその傘下に入った。小型車がメインで、車種イビザ(IBIZA)は第5世代、33年続いている。成長が著しい企業となっている。

セアットCEOのルカ・デ・メオ氏(公式サイトより)

現在、セアットはカタルーニャのGDPの4%を担い、輸出では12%の貢献をしている。マルトレイル市にある現在の工場は1993年に34か月の歳月をかけ15億ユーロ(1770億円)を投じて完成させたものである。現在6800人の従業員を抱え、協力企業を含めると14500人がセアットに依存している。カタルーニャ経済にとって最も重要な企業のひとつである。(参照:okdiario.comnoticias.coches.com

最近のカタルーニャの独立への動きに対して、セアットの最高経営責任者ルカ・デ・メオは先月18日、カタルーニャの代表紙「ラ・バングアルディア(La Vanguardia)」とのインタビューの中で、カタルーニャ独立運動(プロセス)がこのまま継続するようであれば工場をカタルーニャからスペインの他の地方または他国に移転する意思があることを遂に表明したのである。彼がこのような考えを表明したのは今回が初めてであった。

彼の発言の発端となったのが、先月のカタルーニャでの独立の為の民間の政治組織「民主ツナミ」が主導してフランスとの国境を繋ぐ高速道路を封鎖してトラックなどが長蛇の列をつくらねばならなくなったという出来事や、10月の最高裁にてカタルーニャ独立を問う住民投票の実施を主導した当時のカタルーニャ州政府閣僚並びに政治組織会長らに対し実刑判決が下されたが、その判決への不服から同じく政治組織「共和国を守る会(CDR)」が誘導してカタルーニャで抗議デモから暴動化させるといった事件も起きたりしたことからであった。(参照:lavanguardia.com

セアットはフォルクスワーゲンの傘下にあるということでスペイン以外のEU圏でセアットの生産体制を受け入れられるプラント工場は十分にあると指摘した。そして彼は「これは不満とか忠告ではなく、恐れからによるものだ」と述べた。

「この恐れ」というのは前述の最高裁での判決を不満として民間の政治組織が主導したゼネストの影響を受けて一日半工場を閉鎖せねばならなくなったこと。また、仮にカタルーニャが独立するような事態になれば、単一市場の特権を利用できなくなってカタルーニャからの輸出に関税が適用されるという懸念などである。というのも、現在生産されている自動車の95%はEU圏向けの輸出だからである。

彼のこの発言の1週間前のニューエコノミー・フォーラムに出席した時にも「投資には長期的視野に立っての明確なビジョンと安定性が必要だ」と述べ、「現状の独立しようとして政治的安定性に欠けているカタルーニャが外国に与えるイメージは投資には貢献しない」とも指摘したのである。

一昨年10月の独立を問う住民投票が実施された際には、同月24日付けでルカ・デ・メオは全従業員に書簡を送り次のように言及した。「政治の安定と法の安全が守られ、しかもEUに留まり続けることができるということが我社と子会社の経済並びに労働面において現在の体制を保障するために欠かすことなく必要なものである。それは我社の顧客と株主においても同様である」と述べたのであった。(参照:elmundo.es

更に、前述したように10月は工場を一日半閉鎖して生産を中断せねばならなくなったことについて、それは一日に3500台が生産されていることと、24時間の生産体制にあることから午前勤務2900人、午後勤務2300人、夜勤1600人の構成を木曜は午後勤務と夜勤の2交代、金曜は3交代すべてを休業させるということになり「数千万ユーロ(数十億円)の売り上げに匹敵する損失に繋がるものだ」とも述べて、多大の損害を被ったことも表明したのであった。(参照:elperiodico.comnoticias.coches.com

ルカ・デ・メオがセアットの工場移転の可能性について明白にそれを示唆することができるのも親会社のフォルクスワーゲンがそれに「OK」を既に出しているからである。
(参照:vilapress.cat

カタルーニャにはセアット以外に自動車メーカーとして日産が進出している。しかし、現在の日産は伸び悩んでいる。そのような中で、セアットがカタルーニャから仮に出るような事態になるとカタルーニャの経済的及び社会的打撃は深刻なものとなりカタルーニャの経済危機をもたらすことは必至である。

プロセスそのものも問題であるが、州政府のキム・トッラ州知事を始め、逃亡しているプチェモン前州知事そして閣僚の中に企業経営に携わった経験のある政治家が誰ひとりいないということで、経済面から独立するというのが果たして意義あるものか理解できないようである。(参照:economiadigital.esmotorpasion.com

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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