安倍総理に託したい「中東の悲劇」へのメッセージ

2020年01月15日 06:00

1月11日のAFP通信によると、ウクライナ籍のの旅客機が墜落し乗客乗員176人が死亡したのは、イラン軍が「人的ミス」により誤って同機を撃墜したためであるとイラン政府が表明。

墜落したウクライナ航空機の残骸(IRNAサイトより編集引用)

犠牲者の多くがイランとカナダの二重国籍者だったことを受け、カナダのトルドー首相は「遺族には、気持ちの区切りや事故についての説明、透明性が必要だ」との談話を発表しました(参照:AFP通信)。

記事中には日本人乗客の記載こそありませんが、その有無にかかわらずお亡くなりになられた方々には心より哀悼の意を捧げます。
さぞかし苦まれ、残念であったことでしょう、そこには宗教や国境の区別はありません。

現在イランを中心とした中東情勢が緊迫した一途を見せるのは、アメリカ・トランプ大統領が表明したイランのガセム・ソレイマニ司令官殺害に端を発します。

一連の緊迫を懸念し、わが国からも安倍総理が中東訪問を改めて明らかにされました。
与野党の不毛な政争はこの際さておき、わが国の政治指導者としてどのようなメッセージを呼びかけるのか。

中東情勢について会見を行う安倍首相(1月9日、官邸サイトより)

こうして書き綴ったとしても届くかどうかはさておき、どうか、以下のような呼びかけを行なっていただけまいか。
一国民として、願い記しておきます。

1月8日にイラン上空で起こった悲劇に際し、命を失われた乗員乗客176名の命に対し、国境や宗教、すべての垣根を越えて哀悼の意を表明します。

なぜ、176名の命は奪われなければならなかったのか。そこには正当な理由や大義はありません。
その一方で、何が尊い命を奪い、遺されたご家族やご遺族に深い悲しみと苦しみを与えたのか。海を隔てた「遠き隣国」の一員として、申し上げたいと思います。

もともとは小さきものであったはずの不安は、ときに決して小さくない不信を生み、そしてやがては大きな悲劇を生み出します。
このたびの悲劇は、そうした背景によるものであったと私たちは理解しています。

ここで私たちは、命を落とされた176の御霊に対し、静かに悼みながら、おたずねしたい想いがあります。

かけがいのない奪われた命は、はたして復讐を望んでいらっしゃるだろうか。
不幸にも引き金となってしまった「何か」を、恨んでおいでだろうか。さらなる対立を願っておられるだろうか。

そのようなことは、決してないだろうと確信しています。

もしもたった一つ、彼らに願いがあるとしたならば。
「我々のためにさらなる争いを招くことは、決して望まない」。

どのような異なる言葉、あるいは価値観をもっていようとも、それが共通する願いであろうと思います。

わが国日本にとって「近き隣国」である中国には、このような古い言葉があります。

「過ちて改めざる、これを過ちという」。

このたびのイラン上空で起きた悲しき出来事は、決して「なかったこと」にすることは出来ません。
ただ、もしも遺された私たちが、一緒にできることがあるとしたら。おそらくそれは、たったひとつしかないと私たちは確信します。

それぞれが、互いの過ちを改めること。
そして「メメント・モリ」。何よりも亡くなられた命とご遺族やご関係者に対し、想いを致すこと。
それをお伝えするために、私は日本国を代表して、この地を訪れました。

今から150年前、わが国には「仇討ち」という風習がありました。報復は美徳とされていたのです。
しかし現在はありません、現在わが国の法では、かたく禁じられています。
憎しみの増幅は、決して根本的な解決にならない。そのことを、歴史を通じて学んできたからです。

わが国は、だれよりも法と秩序を重んじ、「自分さえよければいい、そのためには法も国境も関係ない」そのような考え方には毅然と異を唱えます。

最後に繰り返し申し上げますが、このたびお亡くなりになられた命の尊さに国境はありません。
乗員乗客176名の命に対し、そして残されたご遺族や関係者の皆様に対し、すべての垣根を越えて哀悼の意を表明します。

日本国内閣総理大臣 安倍晋三

なぜ、それぐらいの提言が与党からも野党からも出てこないのか。

なにが有権者の代表だ。国会議員は、私たち「日本国民」の代表じゃないのか。
柄にもなく、そのような深い悲しみと静かな怒りがこみ上げます。

少なくとも、安倍総理がわが国の代表として緊迫する彼の地を訪れるならば、それくらいの言葉は持たせてあげていただきたいのです。

こうした思いが総理や官邸に届くことは、恐らくないでしょう。
それでもこうして書き残して置くことで、わが国が発するべき「声明の最低ライン」ぐらいは設定できるかも知れない。
そう願い、今回ばかりは尾崎財団のスタッフとしてではなく、拙いながらも“1億2千万分の民意”として申し上げる次第です。

高橋 大輔 一般財団法人 尾崎行雄記念財団研究員。
政治の中心地・永田町1丁目1番地1号でわが国の政治の行方を憂いつつ、「憲政の父」と呼ばれる尾崎行雄はじめ憲政史で光り輝く議会人の再評価に明け暮れている。共編著に『人生の本舞台』(世論時報社)、尾崎財団発行『世界と議会』への寄稿多数。尾崎行雄記念財団公式サイト

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