ネットフリックスがもたらしたもの

ネットフリックスは視聴していなくても名前ぐらいは聞いたことがある人も多いでしょう。日本ではわずか300万世帯しか加入しておらず、世帯普及率が6%ぐらいで5割を超えるアメリカなど他国と比べて圧倒的に低いレベルです。日本ではもともとテレビは無料という発想が強く、わざわざ有料のテレビを見るのはハードルが高いとされています。YouTubeが普及するのも無料だからで、月々2000円程度の支出でもいや、ということでしょう。

Netflixのスクリーンイメージ(公式サイトより:編集部)

しかし、ネットフリックスが制作した作品は今年のアカデミー賞で24部門にもノミネートされ制作会社ではディズニーを抑え、トップを走ります。日本向けのマーケティングでは「嵐」のドキュメンタリーシリーズ「ARASHI’s Diary -Voyage-」を放映しています。20話以上になり、毎月配信ですからなるほど、ファンならネットフリックスに入りたくなります。上手な売り方です。

私もネットフリックスは3-4年前から加入しており、世界どこでも、パソコンでもテレビにつないで大画面ででも見られるというメリットは大きいと思います。言語も音声と字幕の選択オプションがあるため、すべての映画というわけではないのですが、ある程度は選択できるため、言葉がわからない人には便利です。正直申し上げて私は加入している価値は大いにあると思っています。

実は私は映画館には足がすっかり遠くなりました。行きたいのですが、忙しいうえにたまに時間ができても上映時間と合わないといったことはあります。また、映画館が1500-1900円程度の料金を取るわけですが、ネットフリックスなら同額程度で一カ月、見放題であります。確かに映画館で見る映画と家のソファに座ってみる映画は違うとは思います。しかし、今の世代の人はパソコンやタブレットでイヤホンをつけて画面を見るのが普通です。大画面、大音量でなくてはいけないというわけではないのです。(私は昔からAVが好きで音響システムとパワフルなスピーカー群があるので重低音が響く音の臨場感は映画館に近いものが再現でき、没入感は生まれます。)

ネットフリックスがもたらしたものとは何でしょうか?映画館の経営悪化を助長したことはあるでしょう。しかし、それだけではないかもしれません。アマゾンが買い物に行かなくても家に届けてもらえる仕組みを作り、グーグルやアップルがスマホを介して在宅勤務をはじめ、様々なサービスを家にいながら提供し、ウーバーイーツがレストランのフードを家で食べられるようにしました。ネットフリックスは画像の世界を家庭に持ち込んだという点で画期的なのであります。

日本ではGyaoなどが知られていますが、制作という面では弱く、今ではヤフーのサイトの中に埋もれてしまっている感すらあります。にこにこ動画やAbema TVもありますが、制作物は対談などはよいとしても全般的にYouTubeの域を出ない感じがします。ネットフリックスの恐ろしいところはとにかく資金のかけ方が違うために世界市場の制覇ができ、業界の地図そのものすら変えていくということかと思います。

上述の嵐のドキュメンタリーもジャニーズが今までの方針を変えて世界配信を許したのは韓国のKPOPが世界配信を背景に大きく伸びたことに指をくわえていたからだろうと考えています。ジャニーさんの後を継いで世界のジャニーズという視点に変わっていくのでしょう。そのインフラはやはりネットフリックスだったということかと思います。

ある意味、恐ろしいほどの勢いですが、家で一杯飲みながらネットフリックスの目次を見ているのは本当に楽しいんですよ。テレビなんてまるで見ることはなくなります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年1月19日の記事より転載させていただきました。