異常国家メキシコ:現大統領の就任1年目だけで34,579人が殺害

2020年02月04日 06:00

アムロ大統領(Wikipedia)

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)が2018年12月1日に大統領に就任してから昨年11月30日までの1年間にメキシコで殺害された人の数は34,579人であった。一日に94人が殺害されていた計算になる。「異常国家」としか言いようがない。

アムロは大統領に就任した時点で早速「ラ・パックス・ナルカ(La Pax Narca)と称して麻薬組織カルテルとの和解を模索する姿勢を示し、その為に必要とあらば犯罪者の恩赦も行う用意があるとした。ところが、その成果はなく、逆に犯罪は増加した。1997年からの犯罪統計で、アムロの政権1年目がこれまで最高の記録をマークした。(参照:elmundo.es

メキシコでは現在50以上のカルテルが存在し、また彼らが地域ごとに犯罪組織を傘下に収めている。カルテル同士の縄張り争いが犯罪の多発化を促している。現在、カルテルによる犯罪が最も顕著な州は5つある。グアナフアト、ハリスコ、バハ・カリフォルニア、メキシコ自治区、チウアウアの5つである。この5つの自治州で殺害された人の数はメキシコ全体の42%を占めるとされている。その次にミチョアカン、ゲレロ、ベラクスル、メキシコシティー、ソノラとなっている。(参照:elmundo.es

また最近増えているのが女性が殺害されるケースである。アムロの就任1年間で967人の女性が殺害された。誘拐はその1年前に比較して33%増加して捜査件数が1801件となった。捜査件数は増えても犯人の逮捕にまで結びつかないのが往々にしてある。カルテルなど犯罪組織が警察と癒着していて警察の方で取り調べが十分で証拠も不十分なまま保留となる場合が多くある。ということで捜査件数は多くても犯人の逮捕にまで至っていない場合が大半である。

性犯罪も急増して被害の訴えは47000件、その中でも性的暴行が昨年比53%の増加となっている。(参照:elmundo.es

次に殺害の多発している自治州を個々に見て行くと、ここ数年で犯罪が急増しているのがグアナフアト州である。同州は石油パイプラインの設置件数が多く、そこから石油を抽出して密売して違法に利益を稼いでいた地元カルテルのサンタ・ロサ・デ・リマに対抗して全国規模で発展しているカルテル・ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)が割り込んで来て双方の縄張り争いから殺害事件が多発するようになっている。昨年1月から11月までに同州で殺害された人は3211人で、その内の銃による殺害は2685人となっている。一昨年比7%の増加だ。

カルテルの活動が最も活発な10州(sinembargo.mxより引用)

石油のパイプラインからの抽出を防止するために政府は石油の輸送をパイプラインからタンクローリー車に変えた。稼ぎになるビジネスを奪われたカルテルは誘拐や恐喝からお金をむしり取る手段に移行した。その結果、誘拐件数は一昨年の6件から昨年は32件に増加した。

2番目に殺害事件が多かったのがハリスコ州である。2465人が殺害され、その内の銃による殺害は1368人。女性は2018年が27人殺害されたのに対し昨年は46人という結果となった。同州ではロス・セタスとCJNGの戦いが熾烈になっている。

バハ・カリフォルニア州では2657人が殺害され、その内の銃による殺害は1955人。一昨年比7%減少した。殺害された女性は24人。恐喝件数が一昨年の129件から昨年は199件に増加。

メキシコ自治区は2603人が殺害され、1770人が銃による殺害。一昨年比9%の増加。誘拐は一昨年が170件に対し昨年は214件となった。女性の殺害も6%増加し、恐喝は73%の増加。4つのカルテルと9つの犯罪組織が暗躍している。その中でもカルテルラ・ファミリア・ミチョアカンが勢力を張っていたが、CJNGが急成長して勢力を拡大している。(参照:sinembargo.mx

メキシコが現在のように犯罪大国になったのは麻薬消費の最大市場である米国を隣に控えているという地理的条件がそれを許した。もともとメキシコはコロンビアで生産されたコカインの中継地として発展した。

しかし、メキシコでカルテルが成長する支えになったのが政治家による汚職である。カルテルはそれをうまく利用した。政治家への献金、その代わりにカルテルの活動を容易にさせてもらう。それに安月給で不満を抱えている警察も抱き込んだ。

1989年に大統領に就任したカルロス・サリナスの政権時から政界に腐敗が蔓延るようになった。その後、エルネスト・セディーリョ、ビセンテ・フォックス、フェリペ・カルデロン、エンリケ・ペーニャ・ニエトと続くまでメキシコの大統領は何らかの形でカルテルと関係をもっていた。勿論、どの大統領もそれを否定するのは当然だ。

その結果、これまで45人の州知事がカルテルと癒着していたのが明らかにされている。彼らの一部は既に公判で判決が下り、また別の一部は公判を控えている。(参照:sinembargo.mx

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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