首相の毎晩の私的会食は公表不要

2020年03月05日 06:00

メディアは誘われても自粛を

共産党の赤旗新聞が首相の会食回数を数えたら「2月は25日までで11回」です。新聞の「首相動静」欄に毎朝、載っていますから簡単な作業です。コロナ対策で「国民にいろいろ自粛を求めているのに、宴席とは」と野党がかみつけば、首相は「様々な人と意見交換をしている。宴会ではない」と。

国会では、もっとまともな議論をしてもらいたい。首相の「動静」を知るカギは、公式の会儀、会合、打ち合わせではなく、非公式の打ち合わせにこそあります。知られたくない機密もあり、それは公表されません。「会食」については、公式でも私的なものでも公表されます。

2019年5月にはTOKIOとの会食をツイッターにアップした安倍首相(ツイッターより)

なぜ私的な会食まで公表するのか、不思議に思ってきました。誰と会ったか知らせたいからなのでしょう。加計学園獣医学部が今治市に新設され、国会で追及されたのは17年でしたか。その直前の1,2年前から、「首相動静」欄に学園理事長の加計孝太郎氏との会食、ゴルフが何度も載りました。

ほとんど無名の加計孝太郎氏でしたから、「いったい誰なの。どんな学園なの」と疑問に思った人は多いはずです。想像したのは「首相と頻繁に会食するほど、相当に親しい人なのだ」と。官僚ら関係者に首相の意向を忖度させるために、首相との関係を新聞で知らしめたかったのでしょう。

首相に近い財界人との会食もよく載ります。首相にとっては「有力な財界人との絆が太い」と思わせることができる。名前が載る財界人とっては「首相との関係が深い」ことを世間に知られることは名誉なことである。「ゴルフに誘われるほど首相に近い」と思われるのも損ではありません。

ほとんど無名の経済人との会食は、出身大学の仲間、友達関係の人で、彼らにとっては箔つけになる。そんなことのために、短い行数とはいえ、紙幅が割かれることはいかがなものか。

ご丁寧なことに会食したレストラン、料理屋の名前まで掲載されます。店の宣伝になりますから、選挙の時に少しは役立つ。名前を聞いて来店者も増えるのでしょう。これだけ集めて、ネットで「首相が訪れたグルメ店」といった記事もあります。

首相が接待する場合は、官房報償費(機密費)という税金が使われていると思います。首相の特権でもあるにしても、「様々な人との意見交換」という名目があれば、とやかくはいえない。

問題があるとすれば、新聞、テレビのトップ、担当記者らとの会食です。有力な情報を流す、親近感を持たせることを通じて、メディアを囲い込むのが狙いでしょうか。明らかに回数が増えています。呼ばれる側も、政権との関係を誇示することは損なことではないと、思っている。

以前は政権よりの新聞、テレビのトップとの会食が主だったのが、会食相手の社・局も増え、さらに編集局長、政治部長、編集委員クラスまで対象を広げています。政局の重要な節目、重要政策発な発表の前後と重なるの気になるところです。トップが首相と会食していれば、担当記者が上司の立場を忖度するようになるのは、目に見えています。

トランプ米大統領は自分に批判的なマスコミを敵視し、身内同然のメディアを重用しています。これではいけません。日本がまともな民主主義国を目指すなら、メディア側もトップとの距離感を適正に保つべきです。

とにかく、私的な会食については、公表すべきではない、2、3行とはいえ、記事にもすべきではない思います。官邸側が公表したとしても、メディア側に取捨選択する権利があります。

コロナ対策について、首相が記者会見した際、内閣記者会の幹事社が事前に用意した質問内容を首相側に示し、首相側も事前に答えを書いていました。これでは記者会見とはいえません。なれ合いを続けていると、こうなってしまうのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年3月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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